2019年7月12日(金)~7月15日(月・祝)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2019写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選、コンテスト入賞者などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。
7月14日(土)に行われた滋賀県 長浜市/高島市のトークショーでは、滋賀県長浜市長 藤井勇治氏、滋賀県高島市長 福井正明氏、東京カメラ部10選 別所隆弘氏にご登壇いただき、「写真で残していく『文化』、写真でつくっていく『まち』」というテーマでお話しいただきました。
藤井「滋賀県長浜市の市長の藤井勇治と申します。今日は東京カメラ部さんの大変素晴らしい企画で我が長浜市とお隣の高島市をPRする機会をいただき感謝いたします。私は長浜市に生まれ長浜市に育ちました。途中、35年間東京で暮らしておりました。ですから東京の魅力も感じ取っているのですが、生まれ故郷に戻り、美しい自然、素朴な人間味、文化芸術など東京以上のものもあるなと気付きました。そんな魅力を本日はPRしたく思っております。よろしくお願いいたします」
福井「皆様、こんにちは。滋賀県高島市からやって来ました市長の福井でございます。本日は東京カメラ部さんにPRの機会を与えていただけたことに感謝いたします。短い時間ですがよろしくお願いいたします」
東京カメラ部運営 塚崎(司会)「まず両市のご紹介をお願いしたいと思っています。両市がどこにあるか分からなかったり、訪れたことがない方でも、写真を見れば、ピンと来るはずです。まず長浜市からお願いします」
藤井「滋賀県と言えばやはり琵琶湖。琵琶湖は400万年前にできた世界有数の古い湖です。その琵琶湖の北に隣接するのが長浜市。豊臣秀吉公が最初に作った長浜城で、その城下町です。元々は今浜と呼ばれていましたが、信長公が秀吉公を評価して今浜の土地を与えることになった時、秀吉公は『今浜』の『今』を、『信長公』の『長』に変えて『長浜』としたのです。これを機に秀吉公は信長公に忠誠を誓い、次々と天下統一の戦いに勝利していきます。ですから、長浜の人々は長浜城を『出世城』と呼んでいます」
藤井「人口は約12万人、大きさは滋賀県の約1/6で琵琶湖と同じくらいの面積を有します。その中に、国・県が指定した文化財が450以上あり、ここまで文化財がひしめくのは長浜市の特徴で、歴史と文化の香りは日本一だとPRさせていただいています。豪華絢爛な山車の上で少年が歌舞伎を演じるという伝統の『長浜曳山まつり』はユネスコ無形文化遺産に登録されております。世界が認めた文化財が長浜にはあるのが誇りでございます。また、奈良時代や平安時代の観音様も130体ほどあり、『祈りの文化』も大切にしております。近年は東京・上野にサテライト施設『びわ湖長浜KANNONHOUSE』を開設し、長浜市の観音様を常に1体展示しておりますので、そこで長浜を感じていただき、実際に足を運んでいただけると嬉しいと思っております」
塚崎「これが長浜で撮れる写真の一部です。これを見ていただくと、知っている場所もあるのではないでしょうか」
塚崎「続いて高島市の簡単な紹介をお願いします」
福井「琵琶湖は400万年前に地殻変動で誕生したと言われています。琵琶湖の水は京都や大阪の京阪神の飲料水や工業用水として供給しており、琵琶湖の水量の1/3は高島市の河川からのものであり、そういう意味で悠久の時間を琵琶湖とともに歩んできたと言えます」
福井「長浜市が北部であれば北西部が高島市。ですから、位置関係的に琵琶湖から立ち上る朝日を高島では撮影できます」
福井「ここは棚田百選のうちのひとつに選ばれています」
福井「こちらは桜百選。このような百選が14も高島市内で選ばれています」
福井「こちらはグランピング施設です。高島市は面積がとても広いため、自然環境や観光スポットが点在しており、移動が大変です。それらを線として繋いでいくのが課題でしたので、琵琶湖のほとりにグランピング施設を設け、宿泊をしていただきながら自然を楽しんでいただく環境作りを推進しています」
塚崎「髙島屋の創業家の高島市なんですよね。これを知っておくと、高島市も覚えやすいですよね」
塚崎「ここからは写真に繋がる部分をご紹介していきます。長浜市はまず『祈りの文化』についてご紹介いただけますでしょうか」
藤井「長浜市内には130体もの観音様があり、それぞれ町内を守られているのが最近になって発見されました。古いものは奈良時代ですから1000年以上の歴史があります。観音様そのものもですが、祈りの文化を1000年継承していることに誇りを持っています。毎朝、清められたお水とお花をお供えし、それを夜になると下げるということを続けています」
塚崎「観音様に傷みがあるのはなぜですか?」
藤井「戦国時代は戦いの舞台になったので、戦争が終わるまで観音様を守るために川底や畑に埋めたりしたためで、それが現れています。それだけ大切にされていたということです」
塚崎「顔が傷んでいたりすることに、ものすごいドラマを感じますね」
塚崎「それを東京で見ることができる場所があるそうです」
藤井「京成上野駅を出てすぐの場所に『びわ湖長浜KANNONHOUSE』がございます。小さな一角ですが1日平均100人前後の人がいらっしゃっています。観音様の前で涙をするような人もいると聞いています。『びわ湖長浜KANNONHOUSE』ではローテーションをしており、年間に4体くらいの観音様が順番で登場いただいております。ぜひ長浜にもお越しいただき、観音様の里を巡っていただきたいです」
別所「写真でなかなか伝えられないのが辛いのですが、目の前にするとオーラを感じて感動します」
塚崎「そして有名な鶏足寺です」
藤井「参道の並木道です。鶏足寺は某リサーチ会社が3年前に全国の紅葉ベスト1に選んでくださりまして、大変な賑わうスポットになりました。現在は紅葉シーズンに8万人くらいがお越しになっています」
別所「これは『報道ステーション』のロケの時に撮影し、使用許可をいただいたものです。伝説の1日というくらい真っ赤な紅葉を見ることが出来た日ですね」
塚崎「短期間のうちに8万もの人がいらっしゃると維持も大変じゃないですか」
藤井「マスコミの方には取り上げてくださって感謝しておりますし、この名所を地域の名所にも結びつけたいと考えています。大変ありがたいことに、地域の集落の皆様が相当お手入れをしてくださっています。まさにボランティアの精神です」
別所「数年前から協力金を入れられるボックスが設置されています。このお金が次のシーズンに繋がりますので、ぜひご協力いただければと思います」
藤井「琵琶湖の北側に隣接する余呉湖という湖があります。別名『鏡湖』と呼ばれておりまして、非常に美しい湖が滋賀県にはふたつあるんです。余呉湖の美しい写真が拡散されたお陰で脚光を浴びておりまして、撮影をしていただいた別所さん、そして撮影にお越しいただいた方々に感謝しております」
藤井「長浜北びわ湖大花火大会は、長浜の夏を彩る風物詩で毎年開催しております。街中の向こうにある琵琶湖を美しい花火が彩りまして、長浜市民だけでなく全国のお客様が楽しみにしています。年間で700万人の観光客に来ていただいていており、観光には力を入れていますが、その最大のイベントが長浜北びわ湖大花火大会です」
別所「これは石道寺という鶏足寺の手前にある寺です。市の役所の方に案内していただいて写真を撮ったのですが、ここまでアジサイがキレイだとは思っていませんでした。このような場所が次々と発見されていくと思います」
塚崎「続いて高島市に移ります。何と言っても、このメタセコイア並木ですよね」
福井「4、5年前から非常に注目していただいていまして、『ウォーカープラス』では神宮外苑の桜並木を抑えて全国1位になりました」
福井「全長2.5km程のメタセコイア並木が続いています。植樹をしてから40年余りでこの大きさになっています。並木の両サイドは果樹農園でした。栗園が一番多く、昭和50年代の大きな台風の影響で防風のためのポプラ並木が全て倒れてしまい、栗の木も7割くらいはダメになってしまいました。その後、生産者の方から、もっと丈夫な防風林を植えようということでメタセコイアを植樹して現在に至ると。ここ数年で注目を集め、撮影した写真がSNSで共有され人気が広がるという現象が起きています」
別所「僕が初めて撮影をした時はまだ誰もいませんでしたね」
塚崎「これは私が撮った写真で恐縮ですが、並木はずっと大切にされてきていましたが、観光客が押し寄せるようになってから、さらに活動が変化してきます。駐車場が見えると思いますが、ここは本来電線が通っていたんですよね?」
福井「メタセコイアは落葉の広葉樹なので、新緑、紅葉、冬の枯れ立ちなど、季節によって様々な魅力があります。しかし、電柱が横切っていて、どうしても写真に写り込んでしまうのです。ですから、これを撤去させていただきました。関西電力の管轄で、電柱にはNTTの電話回線も走っていました。1本あたり幾らかかると思いますか? 1本あたり、1100万円から1200万円です。このような費用も全て市の経費で、視界を遮る場所にあった3本を撤去しました。そういう配慮は市として対応させていただいております」
塚崎「そばにカフェも出来ましたね」
福井「ゆったり過ごしていただけるような喫茶・軽食が楽しんでいただける施設を今年の4月に開設しました。多くの方は散策をしていただくのですが、休憩できる場所も必要だろうということで整備をさせていただきました」
福井「紅葉の季節が人気ですが、個人的には冬景色が本当にきれいだと思っています。こういう風に枝に雪が乗っている風景を撮るのが難しいんですよね」
別所「はい。こちらの道路に雪が残っている写真と残っていない写真。どちらも僕が撮っています。本当は雪景色の写真としては道路に雪が残っていてほしいのですが、すぐにきれいに除雪がされてしまう(笑)ので、雪景色は撮りにくいです。ただ、もちろんこれは安全のためには良いことですし、大雪でも行きやすい場所ということでもあります。」
福井「これは私が大のお気に入りで。最初拝見した時は何が写されているのかすぐにイメージが湧かなかったのですが、メタセコイアの冬景色をドローンで上空から撮影したと気付いた時、生命と言いますか、人間の毛細血管のようで、厳しい冬の中、春を迎えるために一所懸命に枝をこうやって伸ばしているのだろうなという感想を持ちました」
別所「『ナショナル・ジオグラフィック』で世界2位を獲った時の写真ですが、編集長が全く同じことをおっしゃっていて驚きました」
塚崎「枝が伸びるので剪定が大変なんですよね」
別所「人から聞いたんですが、毎年200万円くらいかかるらしいですね」
福井「最初の1枚は剪定したばかりの頃なんですね。枝がもっと降りてくると、観光バスなどが通れなくなってしまいます。費用は大変かかりますが、幸い大阪のフルタ製菓株式会社がスポンサーとなってくださっています。『セコイヤチョコレート』というお菓子が3年前に発売40周年を迎えました。それを見て、メタセコイアとコラボ商品をお願いする運びとなり、その商品の売り上げの一部を市に寄付していただくことで、メタセコイア並木の維持に役立たせていただいております」
塚崎「そして有名なのが白鬚神社ですね」
別所「撮影に困ったら白鬚神社に行きます」
福井「特に海外から多くの人がいらっしゃいますね。いつの間にかパワースポットと呼ばれています。山の方に本殿がございますが、鳥居が撮りたいということで道路を横断するのです。ご覧の通り横断歩道はなく、道路の上下線が渋滞してしまうので、今道路の改良の検討に入っています。道路の下にトンネルを掘ってしまおうかという計画も出ていて、いらっしゃる方の安全を第一に守りたいという思いで解決策を話し合っております」
塚崎「おにゅう峠は雲海も出る人気スポットですね」
別所「訪れるのは本来は大変な場所で、鹿などが出てくるような奥地なのに、いつでも行けるようになっていることが素晴らしいです」
塚崎「最後に、市長おふたりに締めのお言葉をいただきます」
藤井「行政としては長浜市と高島市に分かれていますが、市民の暮らしは一体です。長浜市の文化的な部分と高島市の美しい風景などが連携することで、なお魅力が増すと思いますので、今後もお越しいただけると嬉しく思っております」
福井「長浜市とは広域で事業をともに行なっておりますし、両市にそれぞれ魅力があります。全国には1700以上の市町村がありますが、どこにも歴史や文化があり、人の営みがありますので、感性豊かにそれぞれの地域を訪れていただければ良い写真が撮れるのかなと思います」
別所「長浜市と高島市は写真を撮りに最も足を運んでいる場所です。長浜市は行くたびに新たなスポットを発見していて、必ず毎年流行のスポットが生まれてきますし、オリンパスとも協業するなど写真先進都市だと思っています。一方の高島市はメタセコイア並木やおにゅう峠などを維持するために観光目線を持っている自治体で、これはなかなかすごいことだと思っています。これが滋賀県の北の二大巨頭として存在しているのは滋賀県出身者として嬉しいことですね」
福井「先ほど、メタセコイア並木の誕生の経緯をお話ししました通り、各スポットはそれぞれ今に至る経緯があります。現状を維持するために地域の皆さんがボランティア精神で取り組んでいらっしゃいます。そんなことも覚えておいていただければ、訪れた時にもっと広い作品ができるかなと思います」
藤井「我々の故郷には素晴らしい資源があり、それがSNSで爆発的に広がるということを実感しておりますので、ぜひ写真による観光振興に力を入れていきたいと思っています」
塚崎「今日はどうもありがとうございました」