2016年6月23日(木)~26日(日)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2016写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。
6月26日(日)に行われたH.I.S.&フランス観光開発機構のトークショーでは、東京カメラ部10選 井上浩輝氏、八木千賀子氏、H.I.S. 田島裕司氏、フランス観光開発機構 金田レイラ氏にご出演いただき、フランスの魅力についてお話しいただきました。
H.I.S.田島「東京カメラ部10選の八木千賀子さんと井上浩輝さんに、5月にフランスのリヨン、マルセイユ、パリ、その間に点在するフランスの美しい村々を旅していただきました。日本人観光客のほとんどがパリとモン・サン=ミシェルにしか行かないということがあり、フランスには都市部にも田舎にも素敵な場所があることを知っていただきたいと思っています。また昨年発生した残念な事件以降、ネガティブなイメージが先行してしまい、その後のパリがどうなっているのかが伝えられていない現状があります。お二人の写真を通じて、フランスの魅力を紹介していければと思います。そしてフランスに精通している、フランス観光開発機構の金田レイラさんもお迎えして進行します」
H.I.S.田島「お二人の旅の始まりはマルセイユで幕を開けました。フランスの形は六角形で、世界で最も美しい六角形とも言われています。そこでお二人が切り取った写真がこちら」
井上「こちらは恋人の写真です。マルセイユでは特にカップルが多くて、さすが南仏、情熱的な街だと思いました。マルセイユは治安が若干不安なのかな?と思っていましたが、21時過ぎていても夜は明るいので、普通の注意をしていれば楽しく遊んで回れるのかなと思います」
八木「この写真はマルセイユのノートルダム大聖堂です。丘の上にあり、登るとマルセイユの街を一望できるんです。すごくきれいな街でした」
H.I.S.田島「マルセイユから小一時間行ったところにCassis(カシ)という場所があります。非常に綺麗なカラフルな漁村です。そこでお二人に切り取っていただいた写真がこちら」
井上「カシは『パリを見てカシを見なければフランスにきた意味などない』という格言があるほど芸術家たちに愛された街でもあります。海の色がエメラルドグリーン、群青色、藍色と表情を見せる、非常に綺麗なところでした」
H.I.S.田島「お二人にはカランククルーズに参加していただきました。こちらの写真は船の上から撮ったんですよね?」
八木「はい。カランククルーズが出航したところです。灯台を横目に見ながら進んでいくのですが、海と空の色がとてもきれいで素敵なところでした」
H.I.S.田島「このカランクというのはなんのことでしょうか?」
金田「カランクとはマルセイユとカシスの間にある入り江のことで、周辺が自然保護区に指定されています。カランククルーズでは石灰岩を切り立てた断崖が地中海に突き出ている様や、エメラルドグリーンの透明度が高い海を眺めることができます」
H.I.S.田島「続いてお二人にはリヨンに向かっていただきます。その途中で二箇所『フランスの最も美しい村』に立ち寄ります」
金田「フランスには中世の街並みが色濃く残る村がたくさんあります。しかし若い労働者が都市部へ出てしまい、村が過疎化する現象が30年前から起こっているのですが、それを逆手に取って観光素材として活かす取り組みが行われています」
H.I.S.田島「認定されるのは厳しい審査基準があり、それを維持してお客様をお迎えするために村の人たちは日々頑張っています。最初に行ったのはムスティエ=サント=マリーという人口700人ほどの村。井上さん、こちらの写真は?」
井上「この村には入り口にヴェルドン渓谷という渓谷があります。写真を撮っていたら村の人に『上まで登ってみなよ』と言われ、登ってきました。上から見ても物凄くきれいな村ですね。遠くに湖も見えました」
金田「個人的なおすすめは、地中海では海と山を見てもらいたいと思っています。岩山が連なっていて、『フランスのグランドキャニオン』という異名を持つヴェルドン渓谷は、ムスティエ=サント=マリーから東にずっと続いています」
H.I.S.田島「そしてこの村にはもう一つ有名なものがあるんですよね」
八木「ムスティエ焼きという白い陶器があり、マリー・アントワネットも愛したと言われています。細かいデザインでとても素敵です。街の中にたくさん見ることができました」
H.I.S.田島「続いて向かったのも『フランスの最も美しい村』の一つ、ゴルド」
八木「ゴルドは天空の城とも呼ばれていて、天空の城ラピュタのモデルにもなったと言われています。ずっと見たいと思っていたので、この景色を見られて本当によかったです」
井上「崖の上に家が並んでいて、屋根はオレンジ色に統一されている。そして緑があって、柑橘系の色がきれいだなぁと思いました。今回どうしてもここに行きたかったんです。この時はまだ時期ではなかったのですが、写真家の間では大変有名なラベンダーの撮影地もあるんです」
H.I.S.田島「続いてリヨンに訪れました。美食の街とも言われる人口50万人ほどのフランス第3の街です。パリからはTGVという新幹線で約2時間で行けます」
井上「旧市街地は建物が隙間なく並んでいるため、建物の裏側に行く場合大きく遠回りしないといけなくなるんです。そのためトラブールという名前の、建物の中を通る通路が無数にあります。人の家の中に入って反対側まで抜けるという大変楽しいところでした」
金田「トラブールは私有地なのですが、それぞれの所有者と観光局が協力し合い、いつ行ってもどこか開いているトラブールがあるということで、新しい観光地として注目されています。作られた時代によって装飾が違うので、そういうところも見てみると散策が更に楽しくなりますよ」
八木「星の王子様の作者、サン=テグジュペリはリヨンで生まれていて、空港もサン=テグジュペリ国際空港と名付けられています。街には生まれたアパルトマンや星の王子様の像があったり、グッズもたくさん売っていて可愛かったです」
H.I.S.田島「続いては『フランスの最も美しい村』であるペルージュへ向かいます。人口は1500人くらいです」
井上「リヨンから『フランスの最も美しい村』を見たいとう場合は個人的にここがおすすめです。距離も近くて、30分ちょっとで行けるんですよ。ペルージュは日陰からただよってくる匂いが独特で、パンやオリーブオイル、ニンニクの匂いがほわっと香るような素敵なところだったんです」
井上「こちらは街中にある大聖堂です。他のフランスの大聖堂はきらびやかな装飾や立派なステンドグラスがあったんですが、すごく質素な大聖堂でした。僕はここがすごく落ち着くところだなと思います」
八木「ペルージュは城壁で囲まれた小さな村で、ここに立っている人は民族衣装を着ています。本当に中世にタイムスリップしたかのような雰囲気でした」
H.I.S.田島「お二人の旅もいよいよパリに向かいます。途中でボーヌという街を訪れました。人口は2万人の非常に美しい街です。ワイン好きの方なら一度は耳にしたこともあるのではないでしょうか」
金田「ブルゴーニュ地方はボルドーと並ぶフランスの二大ワイン産地のひとつです。その中心がボーヌ。みなさんご存知のロマネコンティの産地もあります。11月にはワインオークションも行われます」
井上「僕、こういう街の日陰が大好きなんです。ボーヌではワインの匂いがあちこちからしてきて、歩いているとワインを試飲させてくれるんです。最高の街でしたね!」
八木「こちらはノートルダム寺院です。ここは木造のマリア像が置かれていて、それが見所です。暗い場所のため、手ぶれしないようにISO感度を上げて撮りました」
井上「歴史的建造物の中でフラッシュをたくと、飾られている絵画なども痛むといいますし、なんだか野暮ですよね。僕もフラッシュは使わず手持ちでぶれないように撮っています」
H.I.S.田島「続いて訪れたのが『フランスの美しい村』のひとつ、ヴェズレー。ボーヌから1時間半くらいの人口が約500人という非常に小さな村です」
金田「スペインのサンチャゴに続く巡礼路のスタート地点として、世界中から巡礼者から訪れていることでも有名です」
井上「丘の上に建物があるのが見えますでしょうか。この上にある村がヴェズレーなんです。自転車で登ったり降りたりを繰り返している人たちがいましたね。非常に暑い日だったので、アイスと炭酸水が非常においしかったです」
八木「村の下から坂道を上がって一番上にサントマドレーヌ大聖堂があります。ここから景色と村々が見えて見晴らしのいい美しい場所でした」
H.I.S.田島「そしていよいよお二人はパリに到着します。人口は220万人で、実は大阪市よりちょっと少ないくらいなんですよね。井上さんのこの一枚は、今回のパンフレットの表紙になっています」
井上「何気ない街角に赤い車が通った瞬間を切り取りました。残念ながらイタリア車のフィアットでしたが(笑)。いいアクセントを生み出してくれています。昨年の残念な事件から、雰囲気はだいぶ良くなってきているのかなぁと感じました。街中には武装した警察官やライフルを持った軍人もいるんですが、却ってそういった人たちがいた方が安心する感じを受けました」
金田「非常事態宣言という、日本語だと強いイメージですが、翻訳すると治安強化月間という意味合いなんです。警察官が令状なしで怪しい人を逮捕したり家宅捜査できたりしますので、実はスリとか軽犯罪は去年と比べると激減してるんです。そういった意味でパリは安全な街になっています」
八木「トロティネット、日本でいうキックボードですね。パリジェンヌの方は交通の手段としてすごく使ってますよね。パリはまだ街が静かなのかと思っていましたが、皆さんいつも通りの生活をしていて笑顔あふれる素敵な街だと思いました」
金田「パリも観光客を誘致していて、日本人以外はみなさんもうパリに戻ってきています。メディアの過剰な報道もあったと思うのですが、お二人の写真を通じてパリの現状を見ていただければと思います」
H.I.S.田島「パリ滞在中にもう一箇所行っていただいたところがヴェルサイユ。パリから20kmほど離れた場所にあり、アクセスは意外と簡単です」
井上「実は僕、大学生、大学院生、その後も塾の先生をやっていたんですが、この写真が出てきたらヴェルサイユ宮殿と書いてね、と教えていました。そんな記憶があって、資料集にあったような一枚を撮ってみたいと思って撮りました」
H.I.S.田島「そしてヴェルサイユ宮殿の象徴と言えるのがこちらですね」
八木「ヴェルサイユ宮殿で有名な鏡の間です。すごくきらびやかで、入った瞬間に思わず声をあげたくらいです。窓から外の光が入ってきて鏡に映って、とても豪華な部屋でした」
H.I.S.田島「最後に、今回の旅を振り返っていかがでしたか?」
井上「今回の旅で一番印象に残ったのは美しい村。ここにもう一度訪れて写真を撮ってみたいです。今回下調べで様々な写真を見ましたが、あまり美しい村々で撮られた写真が写真サイトには載っていなくて、ここですごい写真を撮ったら世界に自分の名前が残るのではないかと、そういう野心を考えるくらい素敵な村だったので、また行きたいです。」
八木「フランスを訪れるのは初めてだったのですが、パリはもちろん、美しい村々が素敵でほっとできる場所でした。もう一度行ってたくさん写真を撮りたいと思いました」
金田「フランスの魅力はパリから先の、地方の田舎や地方色だと思っています。色々な地方に美しい村があって、そこには郷土料理が根付いています。ぜひ地元の料理とお酒を楽しんでもらいたいです」
H.I.S.田島「フランスはまだまだ知られていない場所もありますし、パリも今ではすっかり日常を取り戻しております。ぜひカメラを持って訪れてみてください」