2018年4月26日(木)~5月5日(土)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2018写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。
4月28日(土)に行われた富士フイルムのトークショーでは、東京カメラ部10選 浅岡省一氏と高橋伸哉氏にご登壇いただき、「Xシリーズで撮るポートレート」というテーマでお話しいただきました。
高橋「もともと僕はフィルムカメラで20年ほど写真を撮っていて、デジタルカメラがサブ機だったのですが、1年半ほど前にX-Pro2に出会い、使い方に変化が出てきました。フォルムがカッコ良く、ダイヤル操作がしやすく、やっとメインで使えるデジタルカメラに出会えたなと。ファインダーを覗いたときの没入感も好みでした」
浅岡「最初はポートレートではなく、夕景や夜景などを撮っていましたが、Xシリーズが叩き出す色が僕の作品に合うと気付き、以来ずっとXシリーズを使っています。最近はGFXやボディ内手ブレ補正が搭載されたX-H1などを使っています」
高橋「それでは写真の話しをしていきます。僕がX-Pro2を購入してから1か月後くらいのテスト撮りの写真です。和歌山の大石高原というところで、奥行き感もすごく出ていて、自分の中でも気に入っている写真ですね。これはJPEG撮って出しなんです。コントラストを少し強めてあげるだけで、これくらいの完成度。非常に優秀だと感じました」
高橋「もう一枚も同じ場所。夕日が沈んだ後のマジックアワーでXは真価を発揮します。これはX-E3で撮影した一枚。コンパクトでありつつスペック的にはX-Pro2やX-T2と同等で非常にいい色を叩き出します。マジックアワーの淡い色、奥行き感。粒子をのせることで味わいのある一枚になりました」
浅岡「フィルムシミュレーションは何を使っていますか?」
高橋「PROVIA/スタンダードですね。僕は説明書を見ないタイプで、購入したままの状態で使うことが多いです(笑)。カラーやシャドウを少しマイナスにしている程度です。後はファインダーを覗きながら露出を決めていきます。液晶での撮影も便利ですが、ファインダーを覗いて世界観に浸るというのも、ぜひ試していただきたいです」
高橋「続いては栃木の湯西川温泉。この雰囲気がすごく気に入っています。この電車を逃すと帰ることができないという時間でしたが、どうしても撮りたくなってしまい…。トンネルがレフ板代わりになり、女性の輪郭がより強調されています」
高橋「ここはインスタグラムを拡散されて有名になった場所。香川県にあります。遠浅なんですが、夢中になって撮った結果、このようになってしまいました」
高橋「実は僕の後方にはたくさんの人が撮影しています。みんな狙いはリフレクションで、僕と同じように貴重な週末に写真撮影を楽しんでいるでしょうね。週2日の休みに写真を撮るしかないわけで、それならRAW現像でデータをこねこねと時間をかけていじくるより、JPEG撮って出しで十分に満足にいくカメラを使い、撮影に時間を使いたいじゃないですか。これは最新のX-H1とXF56mmF1.2 R APDの組み合わせですが。なだらかなボケと美しい発色でJPEGでも何の問題もない写真を撮ることができます」
高橋「最近取り組んでいる『日常ポートレート』というテーマからの1枚です。僕の中で基本にあるストリートスナップに人を融合させてポートレートを撮っていきたいなと。何気ない街歩きをしながら、何気ない路地裏で撮っています。日陰の中に射し込んでいる光に立つ事によって顔が強調されるという王道の撮り方ですが、髪の毛を日陰にしないようにするなど気を配って撮影しています」
高橋「とても雰囲気のある写真で個人的に好きな作品。曇り空のアンニュイな雰囲気と情緒感のある物語性を出すために、顔にピントを合わせていません。オートフォーカス使わずに、あえてちょっとぼかしているんです。顔にガチピンの場合だと、こんな雰囲気のある写真になりません。たまにはカメラに頼るのではなく、敢えてピントをボカして物語性を出してみてはいかがでしょう」
高橋「次の写真はWEBで反響が大きかった1枚。ある意味、誰でも撮れる日常の一コマですが、女性がこれから旅をするのか、帰り際なのか、そんなことを連想させるようなポートレートになったと思っています」
高橋「X-Pro2をメインカメラにしようと思ったのは、この色合いなんです。ISO1600、完全に太陽が沈んだ後の雰囲気を手持ちで撮っているんですが、京都らしい情緒感が出ていると思います」
高橋「お気づきかもしれませんが、僕はアップも撮るものの、基本的に横顔、背中、遠目などを多用した撮り方をしています。あくまで、人がそこにいて何かを連想させるような写真を撮ることが狙いなんです」
高橋「それでは、このへんで浅岡さんにバトンタッチしたいと思います」
浅岡「まず同じ海で撮影した数枚の写真からです」
浅岡「この日は気象条件を読み、雲が切れるだろうと予測して撮りにいきました」
浅岡「だんだんと雲が切れていき、傾いた太陽が雲を照らして色もついてきました。海って朝と夕方に一瞬風が停まることがあるんです。そのタイミングを待って、潮の流れを見ていてそろそろ水面が停まるぞっていう時に撮影した1枚です」
浅岡「やがて、西側の重かった雲がほぐれてきて、強い光が射してきてドラマチックな写真になってくれました。この頃には風が再び吹き水面が動き出しているのでリフレクションはしていません」
浅岡「モデルさんを挟んで左と右に一灯ずつストロボを配置しています。左下の少し明るいところにライトは打っていて。水面に反射した光をモデルさんに当てています。だから、水面の波紋が洋服に模様として移っています。いろいろなライティングを試して辿り着いた1枚です」
浅岡「天気図を見ると伊豆半島より西側で雲が切れそうなので、そこよりも東に行けば良いものが撮れそうだと移動しました。沼津あたりですね。このときはGFXとGF23mmF4 R LM WR、上から1灯で撮影しています。波が荒い日だったのでそれを活かそうと思っていましたが、実際に現場に入ったら波間が泡立つんです。逆にこれ使って撮ろうと切り替えました」
浅岡「桜+ストロボというのを毎年撮っていて、これはGFXにマウントアダプターでシグマの広角ズームを付けて撮影しています。ストロボは7個使っていますね。枝にストロボを置いておき、シャッターを切っては結果を見て調整しに行く、というのを繰り返して作りました。若干空の色が残るように撮っています。空の色は日没後、30分もすると消えてしまいます。ということは、そのわずかな時間で7灯を全て調整して撮りきらなければなりません。これは本当に大変で。枝に当てるストロボはカラーフィルターを使って変化を付けています」
浅岡「東京カメラ部の写真展は夢がある場所だなと思っています。カメラを好きな人、写真を好きな人が、次の夢へ進むためのステップになる場所だと思っているんですね。それを少し拡大解釈し、次の写真は会場で知り合った女性をモデルさんにしています」
浅岡「僕のファンではなく、僕が撮ったことがあるモデルさんの熱心なファンで。僕は人見知りですが、せっかくだから1枚撮ってあげるということで撮影しました」
浅岡「これは有名なモデルさんです。この方の美しい写真はたくさん世の中にあります。それと同じものを撮ってもしょうがないなと思い、一生懸命崩して撮りました。ですから、顔は敢えて見せていません」
浅岡「同じく顔を見せないことを狙いました。ただ顔を見せないシリーズばかり撮っても、有名なモデルさんですから顔を撮れよとなるじゃないですか」
浅岡「顔を出しつつも、ようやく満足のいくものが撮れました。これは彼女の写真としては珍しい内容で、いいものが撮れたなあという一枚です」
浅岡「これは昨日撮った写真です。この方も有名で、普通に撮ったらみんなと同じになってしまうんですよ。多少ライティング変えたぐらいではダメなので、後ろにカポックを2個立てて背景を黒にしてるんですね。それで左下からライトを当てているんですけれど、ライトも半分遮って、右側にあまり光が来ないようにしています。そして大型扇風機で風を出しているんです」
高橋「めちゃくちゃいい写真ですね」
浅岡「自慢の一枚です!」
浅岡「XF35mmF1.4 Rというレンズで撮っていますが、このレンズはとにかくフレアが美しいんです。ぜひみなさんも、こういう半逆光のシチュエーションで撮っていただきたいです」
高橋「XF35mmF1.4 Rは最高のレンズですよね」
浅岡「僕も大好きで、撮影には必ず持って行くレンズのひとつです」
浅岡「最後は僕の定番の作風。小雨の降る横浜で撮っています。写真で難しいのは、同じものを何回も撮っていると飽きられてしまうこと。自分自身ですら飽きてきてしまうんです。ですから、変化球ではないですけれど、さまざまな写真と撮るように心掛けるのですが。そうすると今度は浅岡さんの定番が見たいとか言われます。定番と変化球の緩急が大切なんでしょうね」
高橋「意外とトークショー1時間はあっという間ですね(笑)」
浅岡「本日はどうもありがとうございました」
高橋「ありがとうございました」
<関連リンク>
富士フイルム GFX / Xシリーズ スペシャルサイト