2015年5月27日(水)~6月14日(日)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部 2015写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは多くの人気フォトグラファーをお招きして、写真を見ながらのトークステージが行われました。
5月28日(木)に行われたニコンイメージングジャパンのトークステージでは、フォトグラファー・三好和義さんにご登壇いただき、三好さんが高校生のころに撮影した写真から最新作まで40年間にわたる作品について、お話しいただきました。
「朝早くからお集りいただきありがとうございます。今日は僕が長年撮っている世界中の楽園や、沖縄、屋久島、室生寺などいろいろな写真をお見せしてお話したいと思います」
三好さんが学生時代に撮影されたモノクロ写真の数々を見せていただきました。最初に画面に映し出されたのは、高校生の頃に撮影されたという台風の写真です。
「これは僕が16歳の時に水中カメラのニコノスIIで撮った写真です。僕のデビュー作かな。県展で入賞して、特選をもらった作品です」
三好さんは徳島県出身。徳島駅前には今もたくさんのヤシの木があるそうです。
「ヤシの木を見て育ったので南国が好きなんです。この写真は、若い頃モルディブに行った時のもので、一番最初の写真集『RAKUEN』の表紙に使いました。どのヤシの木がかっこいいかな、かわいいかなと見つけた木です。浜辺にぽつんと1本だけあって、朝も夕方も撮りました。カメラは大きな8×10で、ニッコールの150mmレンズをつけています」
引き続きモルディブで撮った写真を見せていただきました。船の影が水底に映っている一枚です。
「太陽が真上にあって波がない凪の時に撮影したものです。モルディブは海がものすごく透明なんです。いろんなところで使ったことのある写真です。」
ハワイで撮影したフラダンスの写真です。
「現地でフラを踊ってもらったときの写真です。タイミングよく二重の虹が現れてびっくりしました。『そういうときは神様が歓迎してくれているんだ』と言われて、なるほどと思ったのを覚えています」
Nikon D3Sのクロップ機能で撮影した小笠原での写真です。
「クロップというのはセンサーの真ん中だけを使って撮るのですが、連写がものすごく速くなるんですよ。でもこの写真を撮るのは難しかったです。どこから出てくるか予測できないから」
三好さんは日頃からハンドストラップを愛用していて、この写真を撮った時にも使っていたそうです。
「こういう撮影ではカメラを首にぶら下げていたのではだめですね。疲れてしまいます」
宮古島の悪霊払いの伝統行事「パーントゥ」の写真です。
「全身に泥を塗った青年が神様になって町の中を暴れ回るんです。すごく盛り上がってもう大変ですよ。こんな撮影の時にはデジタル一眼レフカメラも連写がきく機種がいいですね。Nikon D4Sにスピードライト SB-910をつけてバシバシバシっと撮りました」
海辺での撮影です。波の形はなかなか思うようにいかないので何十枚、時には何百枚と撮るそうです。場所は宮古島与那覇前浜、三好さんは「世界で一番きれいなビーチ」と紹介されていました。
「この写真はちょっと珍しい時間帯に撮っています。日の出直後で太陽がまだあまり昇っていないので影がありません。太陽が昇りきってしまうと、波うちぎわに自分の影が落ちてしまうんですね。こうして、時間帯についても考えて撮影した写真です」
石垣島のマングローブ林の写真です。
「NDフィルターにPLフィルターが重なったグレーのフィルターがあるのですが、それをつけて日没後に撮っています」
フィルターの有無による写真の違いを見せていただきました。フィルターなしで撮影したものは、水面が反射し紋様ができています。フィルターをつけて撮影すると、水面の反射が少なくなると同時に水面がぶれて、フラットな感じに写ります。
西表島でマングローブを撮影した半水中写真です。「フィッシュアイ」というメーカーのハウジングにカメラを入れて撮影されたそうです。「水中で撮るにはこんな仕掛けがいるんです。中身はNikon D810です。重さが4~5キロありますが、水に入れると浮力があるのでほぼゼロになります」
海辺ではこのようなスタイルで撮影しているそうです。三脚は、水中でも使えるジッツオのオーシャン三脚です。
AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gで撮影された写真です。
「このレンズ、結構危ないですね(笑)。何を撮ってもよく写る。ボケ味がすごくきれいですよね。デジタル一眼レフカメラを使う時には、いいレンズを使った方がいいです」
撮影の際に泊まった沖縄の民宿の写真です。
「民宿のおばちゃんに怒られたんです。『あんたら朝ご飯も食べないし夕ご飯も食べないし』って。でも朝と夕方はシャッターチャンスだし、今のカメラは夜中にも撮影できるんです。おばちゃんは『夜も布団敷いていないけれど、あんた何してんの?ちょっと寝たほうがいいよ』と言うんですけど、沖縄で2カ月、寝る暇もなかったです。昼間は暑いので昼寝はしましたけど。笑」
屋久島のウィルソン株という切り株の写真です。江戸時代より前に切られたものだそうです。
「切り株の中に入って上を見上げるとハート形に見えるんです。これを見たら幸せになれるとかで女性に大変な人気で、最近ではこの1枚を撮るのに順番待ちですよ」
「これも屋久島です。白いエコツキの花が散っている様子が星空に見えるように少しアンダーめに撮ってみました。マニュアルで露出を変えながら何枚もシャッターを切っています。」
屋久島では移動のために沢登りをすることもあるそうです。
「こんな格好で沢登りをします。春はちょっと寒いかな。フェルト底の靴に、ゴアテックスのレインウェアを着ています。完全防水でズボンも全然濡れないし、雨が降っても大丈夫です。森の中は暗いので三脚を使います。この写真は助手が撮っていますが、ちょっと寒くて震えているのでしょうか。ブレていますね」
室生寺で撮影した十二神将像の写真を使って「秘伝の撮り方」を紹介していただきました。 「200mmの望遠レンズで撮っていますが、手前から奥まですべてにピントが合っています。デジタル一眼レフカメラで普通に撮影してもこのようには撮れませんね。これは、奥から手前まで少しずつピントをずらしながら20枚シャッターを切って、1枚につなげているんです。深度合成という方法です」
お寺で撮影する時には、600mmから14mmまでのレンズを用意します。スタンドや照明なども含め、機材の総重量を計算したら200kgあったとのこと。
「仏像の写真は自然光で撮っているように見えますが、熱が出ない特殊な照明を使っているんです」
奈良の東大寺で2月に行われるお水取りの写真です。
「デジタルならではの写真ですよね。感度は20000に上げ、シャッタースピードは1/4000秒です。レンズは300mmですね。何百枚と撮った中からこの写真を選び出しましたが、火が何かの形に見えますね。竜に見えたり鳳凰に見えたり」
星空など夜の写真も多数見せていただきました。
「これはフィルム時代に撮ったネパールの写真です。右端に写っているのがエベレスト。新月の夜に撮影しています。星ってこんなに写るんだなあと感じた一枚です。これがきっかけで星の写真を撮るようになりました」
「最近は夜の写真が結構気に入っていて、民宿のおばちゃんに怒られるくらい夜も寝ずに撮っています。この写真は千畳敷です。ここに行くのはエベレストと違って簡単ですよ。ロープウェイで行けますし、快適なホテルもあります。」
三好さんは、写真を撮るためには美しいものを見て感性を磨くことが大事だと言います。 「これは大阪の藤田美術館所蔵で、秀吉が持っていた曜変天目という世界に3つしかない国宝のお茶碗です。茶筅の跡が付いていますから実際に使ったものですね。こういう本物を見て、イメージを膨らませて星の写真を撮ります」
沖縄の浜比嘉島で撮った星の写真です。3時間の間に1800枚の連続シャッターを切って、比較明合成で1枚の写真にしたものだそうです。
「1枚当たり15秒とか30秒で撮る人が多いんですけど、そうすると軌跡が点線に写ります。点線にしたくなければ、1枚当たり6秒。感度は6400です。新しいデジタルカメラなら何百枚でも何千枚でもバッテリーとカードが持つ限り無限に撮れますね」
雷の写真です。
「1枚30秒かな。それをずっと撮り続けるんです。するといつかは光ります。雨の時に傘をさすと危ないので、この時は洞窟のような場所から撮影しています」
こちらも人気のスポット、熊本・阿蘇の『ラピュタの道』と呼ばれる場所です。
「前の日に下見をしておいて、次の日の朝撮りに行きました。僕が監修したナショナルジオグラフィックの『全国撮影地ガイド』の表紙にもなった一枚です」
三好さんには、このほかにも実にたくさんの写真を見せていただきました。また、「ここに来た人だけに」と撮影のヒントを挟みながらのお話は、来場者の心を引きつけていました。
「僕は16歳の時から40年間写真をやってきて、本当によかったなと思っています。皆さんもこれからもさらに写真を楽しんでいただけたらと思います」