ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」



2017年4月28(金)~5月6日(土)東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2017写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。

5月5日(金)に行われたニコンイメージングジャパンのトークショーでは、東京カメラ部10選の福田悟氏、別所隆弘氏にご出演いただき、「NIKKORレンズで表現した世界」というテーマで作品づくりのこだわりや表現についてお話しいただきました。

塚崎「司会の東京カメラ部運営の塚崎と申します。まずはニコンのカメラシステム、そしてNIKKORレンズを利用している理由からお伺いいたします」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

別所「僕は風景写真家の顔をしていますが、実は人物やファインアートっぽいものなども『全部撮りたい』と考えてます。そうするとシステム全体の幅広さ、大きさが必要。例えば、超望遠がなかったら飛行機は撮れませんし、超広角がなかったら風景は撮りづらい。ボケのきれいなレンズがなかったら、ポートレートは撮りづらくなります。システム全体が均一にすべて高品質であるというのが、ニコンの一番の特徴なのではないか、と思っています」

福田「僕は大学院生のときに、『一番いいカメラを買ってやろう』と奮起してF3のhigh-eyepointを買ったのが最初です。僕にとっては憧れでしたね。本格的に撮りだしたのはデジタル一眼に移行してからで、D1X、D2X、D3Xと買ってきました。どちらかというと、カメラファンなんです。ですからニコンさん以外には浮気もせず、ほとんど一筋です」

塚崎「ニコンのカメラは製品テストが厳しく、壊れにくいという話もありますが、体感はあるのでしょうか?」

別所「僕はわりと乱暴なほうなので、僕のD800Eは4回か5回ぐらいは高い所から落ちています。だけど壊れてはいません。精密機械ですから、そんなに落としたら普通は壊れます」

福田「僕も新しく買ったカメラは必ず落とすんです。F3も最初の旅行で落として、すごくショックを受けました。ただ、外装は傷ついたんですが、全然問題なくそのまま使い続けられましたね。また、D1Xは、強い風が吹いて、駐車場で三脚ごと倒したこともあります。社外レンズはポッキリ2つに割れたんですが、ボディは別のレンズを付けて一応使えました。さすがにニコンサービスで光軸のズレを修理しましたが、現場では使えましたね」

塚崎「トラブルがあっても動く、それがニコンの安心感につながっているようです。動かなくなってしまうと、まったく撮れなくなってしまうわけですから。プロが使う、選ぶ機材にはこういうところにも意味があるようです。ただし、いまお話いただいた話はあくまでお二人の実体験であって、すべてのケースでこうなるということではありませんし、ニコンさんがメーカーとして保証している話ではないことはご理解ください」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

塚崎「実は東京カメラ部では様々な分室を運営しています。ニコンさんにスポンサードいただいている『山のある風景写真館』もそのひとつ。そこでおふたりの山の風景写真を紹介いたします」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

別所「これは奈良県にあるナメゴ谷。10選2015の北川力三さんが撮られて、非常に有名になった場所です。これは『AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8 ED VR Ⅱ』を使って撮って、一部をトリミングしています。色はあまりいじっていません。撮ったデータそのものが非常に精彩なんですよね。その理由の1つは高画素機のD810を使っているということ、そしてもう1つは、レンズそのものの美しさ、精細さ、階調性の素晴らしさです。闇の中に沈んでいる山肌も、しっかりと取り込んでくれるのが70-200の一番のポイントだと思います」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

別所「これは余呉湖です。『日本のウユニ』とか言われている場所の写真で、長浜市役所でも使っていただいています。これら一連の写真は『AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED』で撮っていることが多いです」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

別所「広角レンズで撮影すると基本的にはパースがつきます。遠くのものはより遠くになるし、近くのものはより近くになる。このレンズは、奥に引いている部分から、手前までせり出してくる部分の描写まで、すべてに隙がないんです。また、広角レンズにありがちな歪みもないから気持ちいい。この写真はNational Geographic社の「Travel Photographer of the Year 2017」に出したところ、1週目に、エディターズ・チョイスに選ばれました。作品の高次元な完成を保証してくれるのは、このレンズの素晴らしさではないかと思っています」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

別所「次は三重県いなべ市の、いなべ市梅林です。僕は撮影には必ず2~3本のレンズを持って行きます。そうすると同じ場所を撮っても表現の幅が広がるんです。左側は『AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED』で空をメインにしました。右側は、後ろにある鈴鹿山脈を見せたい写真。レンズシステムが広いからこそできる技(わざ)ですね」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

塚崎「続いて福田さんの、レンズの特性を使い尽くした素晴らしい作品です」

福田「山の写真で好きなのは、飛行機に乗ったときに、そこから撮ることです。これが初めて飛行機から撮って、作品にしたものです。羽田から富山に行くときに撮影できました。山梨と埼玉と長野の県境あたりの上空から偶然見た風景なんですが、本当にクリアに見えていました。伊豆半島の先のほうまで写っています。飛行機に乗るときは、必ず『AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR』を持って乗ります。いろんな角度で撮ろうと思ったら、やはりズームが便利です」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

福田「これは群馬県の谷川岳、一ノ倉沢の朝の情景で、『AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED』で撮っています。ちょうど朝日が昇ってきて、わき立つ雲とこのすごい岸壁を対比させました。5~6秒開けて撮ったと思います」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

福田「続いてこちら。実はこの3枚、同じ場所なんです。最初は『AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR』で撮影しました。太陽が上がってきて雲海を照らした、その立体感や透明感、グラデーションが非常にきれいです。また、この下は諏訪湖なんですけれども、周りの建物もすごく精彩に表現されています。2枚目はそれから20分後、そして最後が1時間20分後です。最後だけ帰り際だったので、『AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR』で撮っています」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

福田「これは草津の白根山の湯釜です。これも『AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR』です。撮ったのは4年前だったので、今回、現像し直しました。現像ソフトの進化や自分の技術もありますが、デジタルでは元のデータがいいと現像を後でやり直すのが楽しい。ニコンさんのRAWファイルは本当に信頼できるので、あとで生かせる楽しみがありますね」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

塚崎「東京カメラ部では『山のある風景写真館』以外にも、ニコンさんの応援で夜景専門の分室『Nightscape Gallery』を運営しています」

別所「僕は基本は風景写真ですけど、ロマンティックなボケのある写真に憧れがあるんです。でも、東京カメラ部に投稿してもずっと無反応でした。そんなときに『AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G』というレンズが出たんです。そしてこれが買って最初に撮った1枚です。ボケが凄くきれいです。おっ!と思ってもらえる、ロマンティックな写真を撮ることができるレンズだと思います」

塚崎「こういうレンズでお子さんや奥様、旦那様を撮ると、愛が深まりますね」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

別所「これはニコンの『AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR』という超望遠レンズで撮った写真です。今では定番の撮り方になっています。きっかけは前日の夜景撮影の設定のままで20秒ぐらい露光して夜の空港を撮ってしまったことなんです」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

別所「失敗したと思っていたら、きれいな夜景と小さく飛行機が写っていました。そこで超望遠で撮ったらもっときれいだろうなと思って、レンズを借りて撮ったのがこの写真です。このレンズがなかったら撮れなかった写真です」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

別所「僕の名前で一番出回っているのがこの京都の写真です。「望遠で撮ってるんじゃないか」ってよく言われるんです。それだと上側の紅葉の迫力が出ないんです。構図的には紅葉を強調したいし、手前側を寄せたほうが絶対にきれいなんです。だから超広角『AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED』で撮りました。超広角で撮ると直線が歪みがちなんですが、このレンズは直線をちゃんと直線として表現できます」

塚崎「続いて福田さんの作品です」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

福田「先ほど高ボッチの写真を3枚ご覧いただきましたが、これも同じ日に撮影した作品です。これは105mmの古いタイプのマクロレンズを使っています。マクロがちょうどいい焦点距離だったので使いましたが、単焦点で絞りをある程度絞り込むと、点光源に光条が出て非常にきれいに写るんです」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

福田「だから夜景は単焦点を使っています。また、ニコンさんは『AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED』という、非常に評判の高いレンズを最近出されています。これも是非使ってみたいですね」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

福田「これはポータブル赤道儀を初めて使って、富士山と天の川を撮った作品です。レンズは『AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED』です。ポータブル赤道儀を使うとカメラの動きを天球の動きと同期させられますので、長時間露光しても星が流れないで、点のまま表現できるんです。それを複数カット撮って合成すると、ノイズが消えて繊細な濃淡のある星空が表現できます。ただ、地上の風景は全部流れてしまうので、同じ位置から、最初、あるいは最後に静止のカットを撮っておいて、地上の風景と天の川を最後に合成しています」

塚崎「このような星景写真も人気の1つですが、適したレンズがないと撮れません。自分が撮りたい作品ごとに、レンズを買わないと無理だと思うんですよ。だから、自分が「こんな写真を撮りたいな」と思ったら、それはどんなレンズで撮っているんだろうとか、その人にちょっと聞いてみてもいいと思うんです。そして、それを手に入れてやってみる。好きな風景、撮りたいものから、逆引きして、ご自身の予算の中で可能な範囲でどれが必要なのか考えるといいと思います」

ニコンイメージングジャパントークショー 東京カメラ部10選 福田悟氏、別所隆弘氏「NIKKORレンズで表現した世界」

塚崎「東京カメラ部の分室では、『NIKKOR LENS』Facebookも運営しています。ここはニコンのレンズで撮影された写真だけをご投稿いただく分室です。ここでご投稿いただいた作品は、東京カメラ部でも紹介されますし、ニコンさんのサイトで紹介される可能性もあります。ぜひこちらもフォローやご投稿いただければと思います。また、最近『nikonjp』というニコンイメージングジャパンさん公式のInstagramアカウントも開設されました。ここでは、光をテーマにした写真にハッシュタグ「#light_nikon」を付けて投稿された作品やニコン製品のお知らせ等をご紹介しています。

『ニコン製品で撮影された写真を見たい』、『せっかくニコン機材で撮っているんだから、どこかで紹介してほしいな』と思われている方はぜひ、『NIKKOR LENS』Facebookや『nikonjp』Instagramアカウントをフォローしていただいて、ご投稿いただければと思います。本日はどうもありがとうございました」

returnTop