キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」



2017年4月28日(金)~5月6日(土)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2017写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。

4月29日(土)に行われたキヤノンマーケティングジャパンのトークショーでは、東京カメラ部10選 柄木孝志氏にご登壇いただき、「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」というテーマでお話しいただきました。

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

塚崎「司会の東京カメラ部運営の塚崎と申します。本トークショーでは写真を使った地方創生に取り組まれている柄木さんが、地域にどれだけ人を呼び込んでいるか、地域の魅力をどう見つけて伝えているかという事例をお伝えしていければと思っています。また、“「日本で最も美しい村」連合”という各町村が集まって作っている連合と、雑誌“Discover Japan”さんと“Amazing Village ~ 写真で残すニッポンの美景”という取り組みもされています」

柄木「こんにちは、柄木と申します。本日はよろしくお願いいたします。実はわたしは大阪出身なのですが、13年前にIターンで鳥取に行ったときに、鳥取という地域を知ってもらいたいと強く思ったことが本格的に風景写真を撮るようになったきっかけです。写真で街を元気にしたいという気持ちがわたしの活動の原点でもあります。ここに写っているのが大山です。富士山と勘違いされる方が沢山いらっしゃるんですが、鳥取県の大山は“伯耆富士”と呼ばれるくらい富士山と形状が似ているんです。この写真のように水たまりに大山を写すなどの遊び心を入れた撮り方の提案をすれば、皆さんが真似してスマホで撮影しやすくなり、SNSなどでも拡散していただけるんです」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「大山のすぐ近くに鳥取県南部町という地域があります。田んぼの中にぽつんと神社があるのですが、その神社が“となりのトトロ”に出てくるロケーションに似ていたため、“トトロの森”とつけて発信したところ、それが多方面に広がり、今やここに来たいがためにわざわざ遠方からいらっしゃる方もいるほどです。写真の可能性を大いに示してくれた一枚だと思います」

塚崎「この写真が発表されるまでは、誰も来ていなかった場所なんですね」

柄木「そうなんです。駐車場すらなかった場所なんです。今後の課題としてはここをどう地域の活性化、もしくはビジネスに繋げていくかということだと思っています。写真で地域活性というと人を呼び込む形のものがメインになりがちなんですが、迎え入れる側がどうインフラの整備をしていくか、第2・第3のコンテンツをどうやって提供していくかなど、ホスピタリティが重要なんです。写真で発信できることは一過性であり、それをきっかけにして地域を元気にしていくことが必要なんです」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「地域活性化の活動の一環として地元の廃校でクリエイターの育成を行っているのですが、その中のクリエイターである和傘の職人の傘を使って地元の観光地をライトアップした事業です。実はこれはスマホでも簡単にきれいな写真が撮れるんです。SNSで発信してもらいたいという思いがあるので、皆さんにモデルになってもらえるブースを作り、両サイドから照明を当てています。元々夏と夜の集客が落ちていた地域にお客さんが戻ってきて、実際これをやるまではほとんど皆無だったものが、3日間で1万人以上のお客さんが大山に訪れることで宿泊も食事も潤ってくるという形です。事業の維持ができるための収入をしっかり得るための計画を立てることが大切なんですね」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「実は全国で5~6つの自治体のお手伝いをしておりまして、その一つに沖縄県の東村という北部に位置する小さな村があるのですが、星を見る上で絶好のポイントがあったんですね。こうやって岩に座りながら星空の鑑賞ができるんですが全く知られておらず、地元の人さえ知りませんでした。そこで我々が「星見の岩」という名前をつけて写真の撮影をして、今後プロモーション活動をしようとしています。そうすることにより、ツアーや食事、宿泊を結び付け、町おこしの仕組みを作ろうと準備をしているところです」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

塚崎「そして今回の企画では、そういった取り組みをしている柄木さんに3つの町や村に旅をしてもらい、撮影をしていただきました。その写真をご紹介したいと思います。まずは、京都府の伊根町ですね」

柄木「丹後半島の方の海側の京都ということで、広域連携で町をアピールされてるんですが、この代表的な地域として伊根町があるんですね。皆さんも聞いたことがあるかもしれませんが、舟屋の町として全国的にも有名な地域なんです」

塚崎「京都って海があるイメージがあまりないですが、実はあるんですよね。舟屋というのはどういうものか写真を見てみましょう」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「夕暮れの舟屋を写し込んだものです。海に面して家が建っているんですが、玄関とは逆の方にも扉があってそこに船が係留されるんです。そこで魚の取引をしたり朝の漁に出たりと、地域の暮らしとして根付いた船があるという、全国でも非常に珍しい地域です。今回撮影の機会をいただいて、自分なりのテーマのひとつが、自然景観の中にある舟屋を切り取ることでした。ですから舟屋を寄りで撮るのではなく、夕日の赤に染まった舟屋を切り取ることで自然というものを落とし込んでみました」

塚崎「こういう景観って、放っておいてはなかなか維持できないものですよね」

柄木「そうですね。伊根町は地域の取り組みがしっかりしている全国でも有数の町なんですね。実は伊根町はコンビニが全くないのですが、それは作れないわけじゃなくてあえて作らないんです。便利なものを入れることによって失うものの価値が大きいということを皆さんはわかってらっしゃるんです。町民全体として、地域全体としてNOと言うことは相当な覚悟と勇気がないとできないことだと思いますから、伊根町の皆さんは、それだけ地域に対するプライドや大切さを感じていると思うんですね」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「今回ご縁があり漁船に乗らせていただくことができたのですが、その漁船からの一枚です。僕もとても感動したのですが、感動したポイントが二つあります。一つは、おこぼれをもらいに来るウミネコがものすごい数でその迫力にびっくりしたのと、あともう一つは、若い漁師さんでも漁に出ると顔つきが変わって、実は船の上ではほとんど会話がないんです。テキパキ自分の仕事をこなしていく手際の良さにびっくりしました」

塚崎「ウミネコの数とそのは迫力が伝わってくる一枚ですね」

柄木「そうなんです。朝早いので光もそれほど強くなく、船の上ですから揺れますし、そんな中でのEOS 5D Mark IVの優れた高感度性能には助けられました。今日力説したいのは、EOS 5D Mark IVは使ってみて初めてその凄さや良さがわかるカメラです。この写真ではウミネコの表情を捉えたいので絞りつつもシャッタースピードを稼ぎたいですよね。そうすると必然的に高感度撮影になりますが、全くノイズが出ずにこの立体感・解像感。EOS 5D Mark IVの素晴らしさが上手く表現できた一枚だと思います」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「ただ港町を撮るだけではなく、赤と黄色の網と青い空を広角レンズを使って切り取ることで、信号のような色のバランスを楽しんでもらおうと思った一枚です」

塚崎「よく見ると奥の方に人がいらっしゃるんですね」

柄木「そうですね。僕は作品の中にこうやってさりげなく人を入れることで、生活感を出したりちょっとした動きを表現することが多いんです。この写真には釣りをしている人を入れてみました」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「次は我が故郷鳥取県の智頭町という東部の町で、2月に開催される雪祭りです。雪を集めて作った燈篭に火を灯して、民家を開放しながら皆さんに歩いてもらおうというお祭りです。ノイズ補正をかけなくても、このまま大画面で皆さんに見ていただいてもノイズはほとんどわかりません。高感度の強さももちろんですし、解像度の高さも感じていただけるんじゃないでしょうか。暗いシチュエーションであるほどノイズがどうしても目立ってきますが、EOS 5D Mark IVは一切目立たないですし、ハイライトもかなり粘っていますね」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「智頭は鳥取県の中でも町づくりに一生懸命な地域です。地域活性にどう結び付けるかということで、一生懸命な民間の仕掛人が実はこの方なんです。この方にいろいろお話を聞いたところ、智頭はこの辺で有数の杉の木の町なんです。以前のニュースで鳥取県が大雪に見舞われて高速道で立ち往生したというのをご覧になった方いませんか?それ、実は智頭町だったんです。まさに僕らその時に撮影をしに行ってまして、約3日間まさに閉じ込められた状態になりました。でも、皆さん雪に慣れてらっしゃるので、何気ない日常という雰囲気でしたね」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「木に積もっている雪は太陽に照らされるとだんだん溶けて落ちてきます。その落ちてくる瞬間を切り取った一枚です。雪が太陽に当たるとこの写真のようにフラッシュするんですね。弾けるように光が入る瞬間を狙いました。杉を絡めた智頭をアピールできるような写真が撮れたかと思います」

塚崎「広角が活きた一枚ですね」

柄木「はい、杉の木の高さと青空と光の反射を入れるために、レンズはEF16-35mm F2.8L III USMを使用したのですが、このレンズはあまり歪みを感じずに自然のままを切り取れるので、本当によく使っています。下からなめるように撮ると遠近感や奥行を感じられつつ、自然の中では歪みがそれほどわからなくなるんですね。広角レンズってワイドレンジで切り取れる分色々な表現方法が出来るのでちょっと難しいと思うかもしれないですが、こういった撮り方も面白い形かなと思います」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「次にご紹介するのは徳島県の祖谷地区です。“そや”ではなく“いや”と読みます。祖谷は元々渓谷がある地域で、アクセス的には非常に不便な所です。高速道路も20~30km行かないとないし、道幅がすごく狭いんです。このエリアの一部は「酷道」と呼ばれるくらい道が悪いんですけども、実はこの祖谷だけは凄い観光客が来てるんですね。なぜかというと、こういった古民家を再生した宿泊施設に、日本の素朴な文化や暮らしを体験したいという海外からのお客さんがたくさんいらっしゃってるんです」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「中はこういった照明があったり、お風呂やトイレは現代風に使いやすいようにハイブリットされていて、新旧が融合した新しい古民家の形です。画面の中に屋根と床、奥のグリーンを入れたかったのでEF16-35mm F2.8L III USMを使用しています」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「こちらが人気スポットの“かずら橋”です。葛で出来た吊り橋なんですが、下が抜けていて怖いんです。その怖さを何とか表現できないかということで撮った一枚です。若干アンダー気味に撮って、奥にしがみついている方がうっすらとわかるように入れました」

塚崎「縄のこういった質感はある程度解像度がないとわからないですよね」

柄木「手前の葛一本一本がくっきりと出ていますよね。やはりEOS 5D Mark IVの解像度の高さ故の表現だと思います。その質感って実はすごく大事で、たとえモニターの小さい画面でも細かい部分ははっきり出ます。僕も使ってみて体感したのですが、やはりこの解像度の高さは優れたカメラだと実感させてもらいました」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「先ほど大きな茅葺屋根を見ていただきましたが、祖谷の落合集落はその集合体なんです。その集合体が民家の内装を改築して宿にしてるんです。ですから申し込めばこの宿のどこかに泊まれるんですよ。それを一つの売りにして、その集落に人が集まってくるということです。夜になると霧がこうやって下りてくるのですが、だいたい30秒流しながら撮りました。これも高感度に助けられた一枚で、ISO6400で撮影していますがノイズがほとんど出ません。EOS 5D Mark IVは勝負する場所が変わる、環境が変わると思わせてくれるほど高感度に強いカメラです。また、暗い中でもダイヤルを見れば設定が一目でわかるのもいいですよね。タッチパネルも導入されて更に使いやすくなりました。EOS 5D Mark IIIからEOS 5D Mark IVに変わったとき、最初の印象では『どこが違うのかな』という感覚だったんですが、本当に衝撃的だったのは使ってみてだったんですよ。それは操作性もですし、高感度と高解像度は普段写真を撮る上ですごく重要な2点なんですね。ハイレベルなクオリティで撮影ができるというだけでも安心感を与えてくれるんです。この凄さは使ってみないとわからないということは力説したいですね」

キヤノンマーケティングジャパン 東京カメラ部10選 柄木孝志「EOS 5D Mark IVで撮る日本の美しい村」

柄木「今ご紹介した3つの地域はすでに町の活性化に動き始めているんです。今日会場にいる皆さんの中にも『うちの地域は元気がない』と感じている方もいらっしゃると思うんですけど、実はそういう地域こそ写真というコンテンツを活用してインナーブランディング・インナープロモーションをやるべきだと思っています。写真にはそれだけの訴求力があり、しかも人を惹きつける魅力もあるんです。ただ、大切なのは撮るだけではなくて、撮ったものをどう活用するかということです。総合的な事業の中のきっかけとして写真がある、という風に思っていただきたいです」

塚崎「そしてそのきっかけを作るのは、ここにいる写真が好きな方なんじゃないでしょうか。是非皆さんもこういう場所に行って、地元の人が気づいていない美しい場所を撮って、そしてそれを発表して『こんなところがあるんだ』と地元の人にも気づいてもらえるようにしたいですね」

柄木「そうですね。地域おこしの究極の考え方は、単純に“地域の自慢”なんです。要はそこに住んでいる人たちがどれだけ胸を張って「自分たちの町は凄いんだ」と言えるかということ。その密度が濃ければ濃いほど、その地域は元気です。そういったことを気付くためのツールとして写真があり、我々写真が好きな人がいる、と思っていただければなと思います。本日はありがとうございました」

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