2017年4月28日(金)~5月6日(土)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2017写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。
4月28日(金)に行われた本田技研工業のトークショーでは、こばん氏 × 東京カメラ部運営による「Love Cub Snapトークショー ~写真で楽しむスーパーカブ~」というテーマで、スーパーカブの魅力についてお話しいただきました。
まず本田技研工業の金塚氏、東京カメラ部運営の塚崎氏が登壇し、「スーパーカブ」をテーマに開催されたフォトコンテストの受賞作品についてのお話がありました。
司会「先日募集させていただいていた、スーパーカブをテーマにしたフォトコンテスト“スーパーカブ × 東京カメラ部 Instagram Photo Contest”には総数1,883点の作品が集まりました。その中の最優秀賞1点と、優秀賞3点の計4点をご紹介いたします」
司会「まず優秀賞1点目はこちらの写真です。作者(Instagramのアカウント)は"mk826jp"、タイトルは“ナイトシティカブ”。この作品についてコメントをいただけますか?」
金塚「夜景とカブのコントラストや光の加減、雨よけについた水滴などがすごく良いなと思って、見た瞬間にパワーを感じました。私は写真やカメラに対しての知識はさほどないのですが、非常に心惹かれた作品でした」
塚崎「今回のフォトコンテストで大切なのは、写真の技術の高さや構図の巧みさだけではなくて、カブが街のなかでどういう風に活躍をしているか、カブとその人の関係性や、カブがその人にとってどういう存在なのかが見えてくることが大事だと思っているんです。最近では自動車もバイクもあらゆるものがどんどん新しいものに乗り替わっていくなかで、カブに関してはユーザーがずっと強い思い入れを持つんですね。少し古いモデルでもとにかく壊れないし、ずっと乗りたくなるバイクなんです。この写真のカブも古いモデルだと思うんですが、それが現代的な建築の前に写っている対比が面白い一枚ですね」
金塚「スーパーカブは特にそうなのですが、思い入れのある乗り物って人に見えてくるんですよ。これからの写真をそういった視点でも見ていただけると楽しいんじゃないかと思いますね」
司会「では優秀賞2点目です。作者(Instagramのアカウント)は"norifumikoike111"、タイトルは“エンジンをかけたい!”。お子様が真剣な表情が印象的ですね」
金塚「たまらないですよね。カブが子どものお守りをしている風にも見えますし、将来この子にもカブに乗って欲しいですよね。先ほどの都会的な街とは違ったお城のような背景なのですが、とても馴染んでいて、どのような街にもカブは溶け込むことができるのが大きな特徴だと思うんです」
塚崎「これも相当古いモデルですよね。今の消費社会においてどんどん物が捨てられるなかで、世代を跨いで使われていく道具ってそんなにないと思うんですね。その時代が良ければ良くて、そのあと何十年使われることを考えられていないものがたくさんありますが、カブに関してはずっと使うことができるんですよね」
金塚「そうですね。この子が大きくなったときに、最初に触れるバイクがこのモデルであってほしいと思います」
司会「親子二世代、もしかしたら三世代とどんどん続くスーパーカブの歴史まで感じられますよね」
司会「では続いては優秀賞3点目、作者(Instagramのアカウント)は"hirorin_go"、タイトルは“夏休み”です」
塚崎「虹と橋の構図や、カブを置く場所まで考えられており、写真としても確実に評価されそうな作品ですね」
金塚「一人旅のように見えますが、カブと一緒なので決して一人ではない旅になるんだろうな、ということが想像できます。カブ乗りの人は特に、カブのことを自分の子や友達のように接してくれるんですね」
司会「続いては1,883点の中から選ばれた最優秀賞作品を発表します。作者(Instagramのアカウント)は"vfr750r87"、タイトルは“たたずまい”。凛とした印象ですね」
金塚「スーパーカブは日本の芸術作品と言ってもいいのではないかと思っています。まさに日本のお寺ともすごくマッチしていて、場所だけでなく精神的な部分でも、日本の誇りだということが現れている写真だと思います」
塚崎「ホンダの代表格であるスーパーカブと、日本を代表するお寺がしっとりとマッチしていて。ライティングをすごくしっかりしているわけではないのですが、逆にそれが味になっていると思います」
金塚「例えばこの背景の前に立って絵になる人ってなかなかいないと思うんです。それがすっと自然に佇んでいられるのはスーパーカブの魅力ですよね」
司会「それではここでスーパーカブに大変詳しいゲストをお呼びして、色々とお話をお伺いしたいと思います。スーパーカブをテーマにした写真がInstagramで大人気のこばんさん(Instagramアカウント"mk826jp")、ステージへどうぞ」
こばん「初めまして、こばんと申します。わたしはスーパーカブが大好きでもう6年くらい乗っているのですが、カブと一緒に日本全国を旅していて、その様子をInstagramにアップしたり写真集としてまとめたりしています」
司会「実は先ほどの優秀作品のなかに、こばんさんの作品が含まれていたんですよね。改めてご覧いただきましょう。タイトルが“ナイトシティカブ”。こちらの作品、何かご自身の思い入れなどはありますか?」
こばん「この場所は大阪府枚方市の枚方T-SITEという近年できた商業施設です。昨年12月に佐世保から枚方に引っ越してきたので、"ちょっと都会にやってきたカブちゃん"という雰囲気が出せるように撮りました。この子はソラコさんと言って、いつもそういう風に呼んでいるんですよ」
司会「それでは実際にこばんさんの作品を見ながら、カブ写真の撮り方のポイントを伺って参りましょう」
こばん「一人旅なのに写真をどんな風に撮っているのかよく聞かれるのですが、カメラを三脚に乗せてセルフタイマーで撮っています。ソラコさんのトレードマークであるランドセルもここに写っていますね」
司会「ランドセルを背負っている空色のスーパーカブを街で見かけたら、ソラコさんの可能性が高いということですね」
こばん「長崎県の平戸市のススキとソラコさんを撮りました。こういう細い道にも入って写真を撮れるというのがスーパーカブのいいところなんです」
塚崎「車だと入っていけない場所ですよね。その場で"いい!"と思ったときにパッと撮れるのがカブの強さですよね。写真に関しては、ススキって逆光で撮らないとこういう風に光らないんですよ。カメラや写真に詳しくなくても、多分無意識に光を探しているんだと思うんです。カブであれば気軽に色々なところに行けますから、光を探すことも楽しいですよね」
こばん「はい。ソラコさんと二人旅をしている気分にもなるし、楽しいです」
こばん「長崎県佐世保市の夕日です。仕事が定時で上がれたら、ここに走りにきて夕日を狙うと決めている場所なんです」
塚崎「この写真、太陽の道がちゃんとできているんですよね。光を探して撮っているんだなぁというのがよくわかります。カブとこばんさんの間にその太陽の道を入れていて、構図もしっかり考えられている。雲も流れ気味でかっこいいです」
金塚「せーのでポーズを取ったかのような、二人のコンビネーションが感じられる写真ですよね」
司会「続いてはこちらの写真です。素敵な花火ですね!花火大会のタイミングを狙って行ったんですか?」
こばん「そうです。去年は色々な花火大会に行きました。花火を撮るのってすごく難しくて、やっと撮れた一枚なんです」
塚崎「花火って上がってどこで花開くか、予想が出来ないんですよね。だからちょうどいい画角で撮るのって難しいんですが、きれいに収まっていますね。花火をきれいに撮るにはシャッタースピードをある程度遅くするんですが、そうすると白飛びしやすいんです。でもそれが抑えられていて花火の色が出ているのと、カブもきれいに撮れていますね」
こばん「九州を一周したときに撮った桜島です。細い道を通って民家をくぐり抜けて偶然見つけた場所です。絶景でした」
塚崎「サイドミラーに青空が写っていて、大きな山も見えて。気持ち良さが見えますよね」
金塚「カブのような小さい乗り物で遠いところから来ている人と出会うと会話も弾みますし、仲間意識が芽生えたりするんですよね」
こばん「渋いカブに乗っていたり、ナンバープレートが遠い地域だったりすると話しかけちゃいますね」
こばん「記念撮影のように撮った一枚です。今年の5月から岡山県の浅口市で暮らすことになったので、引っ越し旅をしたんです。大阪から四国経由で行って、向こう側に水島工業地帯が見えて。今後たくさんこの辺りで写真を撮りたいなぁと思っています」
塚崎「お世話になりますという気持ちなんですね」
こばん「これも瀬戸内海の写真で、浅口市で撮影したものです」
金塚「海がキラキラしていますね」
塚崎「港って車が入って行けない場所が多いと思うんですが、カブのようなバイクだと許される場合もあったりするんですよね。こういう写真は特にロケーション勝負という面も大きいので、そこまで行けるかどうかが重要になってきますよね。一人で行動しているとだんだん寂しくもなってきますが、そんなときに相棒であるカブがいつも一緒にいてくれるっていいですよね。カブに乗りながら写真を撮っていると、いいことがたくさんありますよね」
こばん「本当にそう思います。いい風景にたくさん出会えるし、いろんな人とおしゃべりできるし、いいことがたくさんあります」
司会「ここまでお話をお伺いして、スーパーカブは人と人の輪を広げてくれるんだなぁと実感しました。世界中に存在するスーパーカブで人生を楽しむ人たちの輪をつなぐwebアプリ、Love Cub Snapについてはどう思われますか?」
こばん「アイディアもすごく面白いですし、自分の写真が仲間入りできて、世界中のたくさんの人と繋がれるって素敵ですよね。色々な文化のなかにカブがいるんだなぁというのが実感できます」
金塚「HOW TO JOINの項目を見ながら簡単に参加していただけるようになっていますので、皆さんぜひwebページにアクセスしてください」
司会「それでは最後に、スーパーカブと一緒に人生をもっと楽しむコツがあったら皆さんそれぞれ教えていただきたいです」
金塚「予定通り行くと、今年の秋でスーパーカブの世界生産累計台数が1億台を突破します。その記念として立ち上げた企画なのですが、これがゴールではないと思っています。来年にはスーパーカブ60周年の節目を迎えます。これからもどんどん先を目指して行きたいですね。それだけ街にスーパーカブが溢れているので、街を見渡せばきっとどこかにカブがいると思います。カブを見つけて写真を撮る、そんな人生の楽しみ方もあるのではないかと。今後ともスーパーカブをよろしくお願いします」
こばん「スーパーカブのキーワードは、“気軽に・ずっと・どこまでも”だと思っているんですね。気軽に乗れて、どこまでも走っていける気持ちになれる。おばあちゃんになってもずっと乗れるような夢のあるバイクなんです。新しい住まいの岡山県浅口市で、海辺を走ったり山に登ったり写真を撮ったりしながら、これからも楽しんで行きたいと思います」
塚崎「写真を好きになると、光を探すようになって、世界の美しいものを撮りたくて、美しいところは何処だろうって探すようになるんですね。それが人生を豊かにする大きなひとつだと思っているんです。そんなときに気軽に、ずっと長く相棒として一緒に寄り添ってくれるカブがあったら、カメラのある暮らしがもっともっと楽しくなると思うんですよ。あと、写真を始めたら友達が増えたという人がかなり多いんですね。その上にカブがあったらカブでも繋がれるから、どんどん友達が増える。カブに乗りながら写真を撮ると、今からでも新しい出会いができて、新しい友達ができて、毎日がもっと楽しくなるんじゃないかと思っています」
司会「本日は楽しいお話、ためになるお話、たくさん聞かせていただきありがとうございました!」