開催日 : 2021年04月27日
協力 滋賀県大津市
コロナ禍の現在、そして未来に向けて、今何に取り組むべきかをお考えの皆様への参考情報として、大津市 産業観光部 観光振興課 山田 創さまをお招きして、「応募枚数3,500枚超!
フォトコンテスト成功の秘訣と今後の展開について」と題して本対談を開催いたしました。
本対談内では、コロナ禍における大津市の現在の取り組みを山田さまからご紹介いただきました。また、弊社野中から、政府、自治体など多数の公的機関SNS運営代行やオンライン、オフラインで日本各地の観光・支援を多数経験している東京カメラ部として、具体例を交えながら以下の点をご紹介させていただきました。
- 1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束時期が読めない中、旅行先として忘れられないよう地域から発信していくことが重要
- 2)大津市はコロナ禍でできることとして、フォトコンテストを実施
- 3)コロナ禍でSNSと連動して実施するフォトコンテストは、オンラインで完結でき、また、オンライン上でのPR・関係人口の創出の観点から非常に有効
詳細な対談の様子は以下のとおりです。皆様の参考になれば幸いです。
大津市は、京都の隣町で1,300年以上の歴史ある古都、そして日本最大の湖であるびわ湖のほとりの湖都である大津の四季、寺社、山、びわ湖、自然といった魅力のある地域です。公式Instagramアカウント「@hello.otsu.japan」を基盤に、大津の魅力を発信しています。
東京カメラ部株式会社は2020年11月に大津市とのタイアップ企画として、“大津の四季、歴史、文化、自然など見た人が大津に行きたいと思うもの”をテーマとしたフォトコンテスト「#hellootsu」フォトコンテストを開催しました。
登壇者
大津市 産業観光部 観光振興課
山田 創氏
- カナダ癌センターで研究員として、老化と薬理遺伝学のプロジェクトに従事
- 帰国後、地元大津市役所に入庁
- 環境部→企業局下水道部を経て産業観光部観光振興課に所属
- これまで、国際交流やインバウンド推進を担当し、現在はMICE推進事業のグループリーダーを務める傍ら、SNS運営や様々な情報発信を担当
聞き手 : 東京カメラ部株式会社 企画営業 野中裕太
出演者紹介
まず、聞き手の東京カメラ部株式会社の野中から自己紹介いたします。
大学卒業後、大手電気通信事業者で、代理店営業・法人向けのコンサルティング営業、法人向けコールセンターのマネジメント業務などに従事したあと、東京カメラ部株式会社に入社しました。現在は主にSNSや写真を活用した省庁・自治体さまの誘客プロモーション、関係人口の創出、早朝・夜間観光資源開発など、また、大企業さまの写真を使ったプロモーションなどを企画立案から実行まで推進しております。
山田さま、自己紹介をお願いします。
山田氏:大津市産業観光部 観光振興課の山田と申します。私はカナダのバンクーバーの癌センターで研究員として、老化と薬理遺伝学のプロジェクトに従事しておりました。ビザが切れた関係で地元に帰ってきて、育ててもらった地元に何か貢献したいなという思いから大津市役所に入庁いたしました。これまで環境部や企業局の下水道部門を経て、今、産業観光部 観光振興課に所属しております。今は4年目です。これまで国際交流やインバウンド推進を担当して、現在はMICE推進事業のグループリーダーを務める傍ら、今日お話しさせていただくSNS運営やさまざまな情報発信を担当しております。
非常に豊富な経験をお持ちの山田さまにお話を伺いながら、本日は進めてまいります。
東京カメラ部株式会社のご紹介
まず、東京カメラ部株式会社をご紹介します。弊社が運営する「東京カメラ部」は日本最大級の写真好きが集まるコミュニティ、審査制の写真投稿サイトです。
主な特徴は、以下のとおりです。
- 世界中の写真愛好家の方から、毎日約4万作品をご投稿いただいている「東京カメラ部」アカウント。その中から素晴らしい作品を選び、毎日7作品を東京カメラ部のSNSアカウントでご紹介、昨年は延べ11億人の方が閲覧
- この運営ノウハウを活かし、日本政府観光局様、環境省様、浜松市様など地方自治体様、大手企業様の世界に向けた情報発信を支援。また、Twitter Japan様などSNSプラットフォーマー様からの仕事も受託
- 投稿写真は、日経ナショナル ジオグラフィック社様から写真集が発売されるほど、レベルの高い作品
- 幅広い業界でのフォトコンテストの実績多数。一括(企画、募集告知、運営事務局、審査/選定、賞品発送)で受託したフォトコンテストは、150件超
大津市と東京カメラ部の取り組み
昨年2020年11月9日から今年2021年1月15日まで約3ヵ月間、大津市主催で「#hellootsuフォトコンテスト」を開催されました。このフォトコンテストを開催した経緯と目的について、お話しいただけますか。
山田氏:開催の経緯について、まずコロナの影響前からの課題として、大津市公式Instagramのフォロワー数をもう少し増やしたいということがございました。フォロワーは当時7,000後半いらっしゃったのですが、われわれとしてはもうちょっと増やしたいなと考えておりまして、フォトコンテストの実施はどうだろうかと前々から検討しておりました。
加えて、京都で有名な瑠璃光院さんのようなリフレクションを活用した市の観光施設がございまして、そこをもっとPRしたいという思いもありました。特に昨年2020年度は、NHK 大河ドラマ『麒麟がくる』、明智光秀のゆかりの地が大津市にございましたので、そこのPRもしたいなという思いがありました。
そして、昨年2020年度はコロナの影響がありまして、国の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を活用させていただき、コロナ禍でも安心・安全に大津市のPRができ、なおかつ地域の旅行関連事業者さんへの支援を実施したいという経緯からフォトコンテストの開催に至りました。
新型コロナの影響を考えながら、交付金など補助金を活用してコロナ禍でも安心・安全にPRできる方法として今回のフォトコンテストを開催されたのですね。
フォトコンテストのテーマは、先ほどの山田さまからのご説明にもございましたようなご要望を受けまして、大津市の「1,300年以上歴史がある古い都、日本最大の湖であるびわ湖のほとりである湖都の大津の四季、寺社、山、びわ湖、自然といったような魅力ある写真」と設定し、非常に幅広いテーマで募りました。今回、セミナータイトルにもございますとおり、期間中の応募枚数「3,662枚」と非常に多くのご応募をいただきましたね。
山田氏:はい、そうですね。開催する前は、応募枚数は最終3,000を超えられたらいいかなという思いでしたが、最終的に3,600件を超える応募をいただいて正直驚きました。
自治体さまのフォトコンテストの応募枚数で3,000枚台は、十分多いと評価できるレベルかと存じます。
なぜ多数の作品が応募されたのか、という点について後ほどお話をさせていたただきます。
今回のフォトコンテストでは、東京カメラ部SNSアカウントで募集の告知投稿を実施しました。募集期間中に東京カメラ部SNSアカウントで実施した告知投稿は、延べ43万214リーチ※となり、多くの方に拡散いたしました。
続きまして、フォトコンテストの入賞作品をご紹介します。この作品は、最優秀賞です。非常にいい作品で、今回のセミナーのお知らせにも使わせていただきました。
※東京カメラ部のフォトコンテストでは、フォトコンテスト募集期間中に東京カメラ部のSNSアカウント(Instagram、Facebook、Twitter)で3回告知投稿を行う標準メニューをご提供しています。
山田氏:今回、フォトコンテストを開催した目的の1つに、「新しいフォトスポットを市内で発見したい」ということがありました。この最優秀作品はまさに新スポットで、びわ湖のほとりで空がきれいにリフレクションできるこういったスポットについては、われわれも知らなかったので非常に驚きました。
大津市は、フォトコンテストを開催される前から7,000フォロワー超いらっしゃる公式Instagramアカウントをお持ちでレベルの高い作品が投稿されていましたが、その中でも市内で写真をたくさん撮られている方がフォトコンテストを契機に、とっておきの新スポットの作品を応募された、ということですね。
また、テーマに沿った、大津市の四季を非常によく表現されている高品質な作品が多数応募され、入賞しています。
山田さま、入賞作品の質についてのご感想をお聞かせいただけますか。
山田氏:質に関しては、もう「非常に高かった」というのがわれわれの印象です。
もともと公式Instagramアカウント「Hello Otsu」で、市内在住の「東京カメラ部10選」※の別所隆弘さんにご協力いただいておりまして、毎週、投稿作品から1枚だけご紹介をいただいております。その効果もあって投稿作品の質はどんどん上がっていっております。
今回のフォトコンテストにおきましても、東京カメラ部の冠をお借りしつつ「Hello Otsu」のフォロワーさまからもたくさんご投稿いただいて、全体的に投稿写真の質は非常に高かったかなと思っております。
※「東京カメラ部10選」とは、東京カメラ部が運営するSNSにてシェアした写真の中で、各カテゴリー内でクチコミ度*が高かった写真とその写真を撮影されたかたです。
シェアは東京カメラ部とその全ての分室に投稿いただいた作品を対象に基本毎日7作品程度行っています。
*クチコミ度:「リーチ」数に対する「話題にしている人」の割合。投稿がFacebook内でどれだけ拡散したかを表す指標です。
あくまでもフォトコンテストの実施目的次第ですが、応募枚数が多くても地域のプロモーションにならない/使いづらい質の作品が多く応募されるということにならないよう、フォトコンテストを設計する必要があります。今回の場合は、応募枚数が多く、質も非常に高かったですね。
現状の整理
この後フォトコンテストについて詳細にご説明してまいりますが、その前に現状の整理として、コロナ禍でできることをご説明いたします。
新型コロナワクチン接種が始まりましたが、全員にいきわたるにはまだまだ時間がかかりますし、変異株も出現し、新型コロナがいつ収束するかまだ分からない状況です。
コロナ禍において、今後の観光客誘客を考えますと、旅行先として忘れられてしまうことが一番まずいことだと思います。コロナ禍においては、旅行先候補として忘れられないようにSNSで発信していくことが重要です。
お客様のSNSのご利用は、コロナ禍で増えておりまして、どのSNSでも利用頻度が上がっております。ただ、Twitterは主にリアルタイム性の高い内容や新型コロナなどの情報収集、Instagramは主に趣味や好きなことに関する情報収集など、SNSツールごとに活用のされ方が異なります。
旅行先については、主にInstagramで情報収集されていますので、観光情報の発信は、現時点ではInstagramの活用が有効だと言えます。
フォトコンテスト開催のポイント
フォトコンテストの実施目的
フォトコンテストは実施目的を明確にすることが重要です。目的は主に4つあります。
- 「受賞作品の2次利用」:高品質な写真をPRに活用したい
- 「ユーザーからの魅力発信」:SNSではこの点が一番効果を発揮。SNSでユーザーを巻き込んだ魅力発信を行いたい。SNSで実施をすることで、一方的にPRをするのではなく、参加者が周りに対して魅力を発信する仕組み
- 「ブランディング施策」:地域、製品や会社などに対してのイメージを訴求したい
- 「SNS盛り上げ施策」:SNSでキャンペーンを実施してファンのエンゲージメントを活性化したい
コロナ禍にもかかわらずフォトコンテストを実施した背景に、来訪者の方に実際に来てもらうことを期待していたのでしょうかというご質問を頂戴しました。山田さん、いかがでしょうか。
山田氏:フォトコンテストを開催した時期は、一定程度にコロナの感染が収まりつつあり、国のほうでもGo To トラベルキャンペーンを実施するなど観光需要の回復に向けた動きがあったタイミングではありました。ただ、一斉に多くの方に来ていただくことに関しては、地元の方への影響や反応なども考えなくてはなりません。オンラインで実施できるフォトコンテストであれば、また、今回は過去の写真も投稿していいよという門戸を広げておりましたので、必ずしも来ていただく必要はなく、大津の魅力を発信できる内容となったのではと考えております。
山田さんからご説明いただいたとおり、今回のフォトコンテストでは「過去に撮った写真でも大歓迎です」という内容を募集要項ページに記載しています。コロナ禍で実施するフォトコンテストでは特に、過去作品も歓迎、の内容で実施されることをお勧めしております。新型コロナウイルスの感染拡大を広める意図はありませんよということを明確に示しておく、かつ、皆さんにもそういった姿勢でお過ごしいただくように注意喚起をしていくというところですね。
フォトコンテスト実施目的の4つめ「SNSの盛り上げ施策」に関して、大津市では非常に効果があったそうですね。
山田氏:はい、そうですね。フォトコンテスト開催前と比較しますと、大津市公式Instagramアカウント「Hello Otsu」のフォロワー数は8,000人を超えました。全体的には5%増加したという結果になります。
投稿数に関しましても、通常時と比較するとフォトコン開催期間は圧倒的に多かったなと思っております。
また、冒頭にも説明させていただいたのですが、開催中は特に、新たな撮影スポットであったりだとか、定番スポットであっても違う構図で撮ったり、現像をちょっと変えてみたり、そういったいろいろな工夫が見られたというのが全体的な感想です。
数字として目に見えるところですとInstagramの「フォロワー数」とか「ハッシュタグの投稿数」、あとはもう投稿者さんの気合いの入り方が違ったということですよね。
山田氏:もう全然違いましたね。
フォトコンテストを実施されますと、入賞に向けて投稿者の方々の気合いも入ってまいりますので、フォトコンテストは「SNSの盛り上げ施策」としても最適ですね。
後ほどお話ししますが、大津市では、普段からSNSアカウントを盛り上げるための施策として公式Instagramアカウント「Hello Otsu」にて、大津市内在住の写真家で「東京カメラ部10選」別所隆弘さんによる週1回のフィーチャー企画を実施されています。そのような施策に追加してフォトコンテストを実施することでさらに盛り上げた、という成功例と言えるでしょう。
フォトコンテストのスケジュール
フォトコンテストの全体の流れとスケジュールは、以下をご参照ください。
概ね、3段階の以下の流れで進めます。
- 「企画~特設サイト制作」に1~2カ月
- 「フォトコンテスト応募期間」に1~3カ月
- 「審査~入賞者確定」に1カ月
「審査~入賞者確定」については、後ほど詳細にご説明します。
フォトコンテストの設計
応募写真を集めるためには、フォトコンテストの設計が重要です。参加ハードルを低くし、参加したくなるように設計し、多くの写真好きにリーチすることがポイントです。
この3つのポイントのどれが弱くても、応募数は減少します。
- 「ハードルは低く設計」:応募しやすいテーマ、SNSで応募可能、過去作品でも応募可能など
- 「参加したくなる設計」:賞品が魅力的、審査員が憧れの芸能人、大手フィーチャーアカウントとの共催(質の向上)
- 「認知・拡散」:フォロワーの多いアカウントでの紹介、広告
フォトコンテストの「賞品」設定は、PRの場となります。大津市のフォトコンテストでは、地元の観光協会「びわ湖大津観光協会」と連携することで大津市ならではの魅力のある賞品をご提供されました。山田さん、賞品選定のポイントなどお話しいただけますか。
山田氏:賞品選定は第一に、多くの応募が見込まれるような内容にするというのは非常に大事なことだと思います。加えて今回コロナの臨時交付金を活用しておりますので、冷え切った地域の観光産業を盛り上げるために事業者さんを支援できるような賞品、例えば旅館さんの宿泊券や観光遊覧船の乗船券など、また、地域の特産品である近江牛などを観光協会と連携してご用意させていただきました。
大津市にはこういったいいホテルがあるとか、こんな面白いアクティビティがあるとか、近江牛は言わずもがななのですが、皆さんにやはり「大津の近江牛、おいしいよね」というふうに言ってもらえるような、そういったPRの意味を込めて賞品を選んでいただいたのですね。
フォトコンテストの賞品として設定できるものには、金銭・モノだけでなく、以下のように多くの人に入賞作品を見られることや、首長からの表彰、特別な撮影機会などがあります。
- ギフト券などの金券・モノ
例:ふるさと納税の返礼品や通販で買えるもの - 名誉となるもの
例:作品展示、広告への採用など、多くの人に自分の名前入りで写真が見られる機会の提供。著名人や公的な方がご登壇される表彰式 - 特別な体験
例:写真家としての仕事の依頼や、普段は入れない場所/撮れない時間などに撮影できる機会を提供し、通常では撮れない写真を撮れる体験のご提供
「特別な体験」に関しては、その体験が素晴らしいものであればツアー化できます。
インバウンドの方や消費単価の向上施策として、また地元の方も入れない時間や場所であれば地元の方に向けたマイクロツーリズムにつなげることができます。
また、入場規制をかければコロナ対策にもなります。
フォトコンテストの審査~入賞者確定
オンラインで完結の審査システム、本人確認作業
フォトコンテストの審査の流れをご説明します。
東京カメラ部では、SNSに応募された作品をAPI経由で画像管理システムにダウンロードします。大津市フォトコンテストでは、東京カメラ部で一次審査、大津市で二次審査を行いましたが、全て東京カメラ部の審査システムを使ってオンライン上で完結しました。審査のために集まることが難しいコロナ禍の状況に適しています。弊社の審査システムでは、複数人がログインして写真にお気に入りをつけたり、タグを付けたり、そのタグで検索や分類ができます。
山田さん、実際に審査システムをお使いになっていかがでしたか。
山田氏:単純に非常に楽しかったというのが率直な感想です。さすがに3,600件を超える応募の一次審査を東京カメラ部にお願いできたのは非常に助かったなと思っております。最終審査は複数の職員が担当して、最初はテーマにあった新規性とかストーリー性を重要視しつつ、場所であったり季節であったり、あと時間帯、内容等のカテゴリーで全体的なバランスを取って入賞作品を選定いたしました。
ほとんどのクライアントさまでお聞きするのが、審査が不安、ということです。東京カメラ部は自社開発した審査システムで、審査をサポートいたします。審査システムでは、例えば複数人でログインしてお気に入りを付けたり、写真を拡大表示したり、リアルタイムで募集状況を確認したり、タグという情報を付けて一括で検索したりなど、複数人がオンライン上で審査を進められる機能が揃っています。この審査システムで東京カメラ部が一次審査を行い、絞り込んだ作品のなかからクライアントさまにて最終審査、という流れでオンライン上で安心してスムーズに進めることができます。
フォトコンテストの審査員
今回のフォトコンテストの審査員は、大津市、東京カメラ部のほかに「特別審査員」として先ほど申し上げた大津市在住で「東京カメラ部10選」の別所隆弘さんにも参加いただきました。応募枚数が多かったのは、ターゲットへの影響力が大きい審査員として別所さんを採用したというところもポイントの一つです。別所さんは大津市に在住の方なのですが、Instagramのフォロワーが6万人、Twitterのフォロワーが7.4万人いらっしゃいまして、非常に影響力が大きい方です。
もしこのような写真家や著名な方を審査員として検討する場合は、その方のフォロワーの数だけでなくフォロワーの属性を確認し、意図したターゲットに合っているかを吟味することがポイントです。今回は、普段から公式アカウント「Hello Otsu」で共同企画を推進されていたので既につながりがあり、写真家さんの影響力が確認できているなかでスムーズに依頼できました。また、ご本人のアカウントでPR投稿してくださいまして、フォトコンテストの告知にもご協力いただきました。
審査は、東京カメラ部で一次審査、クライアントさまの内部で最終審査、というフローをお勧めしております。あらかじめこういったテーマ/方針で選んで欲しいということをお伝えいただければそれに沿って、東京カメラ部である程度の作品数まで絞り込みます。その後にクライアントさまで最終審査を行っていただくことで、今後地域のPRに活かしていくというPR視点で最適なものを入賞作品として選ぶことができます。
また、審査員として、フォロワーを多く持つインスタグラマーを採用しその拡散力に期待したいのですが、というご相談をいただくこともあります。
まず、写真好きへの拡散、ということでしたら、東京カメラ部のSNSアカウントで告知することでターゲットにリーチできます。
今回大津市フォトコンテストの特別審査員の別所さんは、大津市で多くの素晴らしい作品を撮影されており、フォロワーが多く影響力の高い方で、既に公式アカウントの企画で連携しているなど今回のフォトコンテストの特別審査員として最適でした。
多くのフォロワーを持つインスタグラマーの場合、ほぼ海外のフォロワーあるいは施策にマッチしないフォロワーが多いなどありますので、数だけでなくその中身を考慮した選定がポイントです。
フォトコンテストの炎上リスクを回避するための本人確認作業
フォトコンテストに関しては、とりわけSNSを活用することによる炎上リスクへの懸念をよくお聞きします。フォトコンテストの審査では、注意しなければならない点があります。
- 盗作の作品を入賞させてしまう
- あるはずのないものを合成した写真を入賞させてしまう
- マナー違反をして撮影したものを入賞させてしまう、などが挙げられます。
万一、盗作作品を入賞させた場合は、主催者がなぜ盗作に気づかなかったんだ、ということで、PRどころか炎上してしまいます。フォトコンテスト運営側がどこまでチェックしているか、ということが求められる時代です。なかでも盗作の作品を入賞させてしまった場合、PRではなく、ブランド毀損、損失のほうが大きくなってしまう事態にもなりかねないので、ここは丁寧に対応・確認するプロセスだと考えています。
東京カメラ部では、フォトコンテストの炎上リスクを回避するために、入賞者を確定する前に「本人確認作業」を行っています。
本人確認作業では、入賞候補になった方に撮影したご本人しかお持ちでないオリジナルのデータを提出していただきます。また、このオリジナルデータは編集前のデータですので、合成前/合成後がわかります。このような本人確認作業を一件一件丁寧に実施していますので、審査から入賞者確定まで1カ月ほどかかります。
この点、山田さんのお考えをお聞かせいただけますか。
山田氏:フォトコンテストしかり、観光系のプロモーション系業務というのは具体的な成果を求められるのはもちろん、トラブルがない、ということが大前提です。特に悪い情報というのはすぐ組織内でも伝わりますし、メディアさんにも取り上げられてしまうので、せっかくいい成果が出ても些細なトラブルで台無しになってしまうことは一番気を付けなければならないことだと思っています。ですので、審査プロセスの本人確認作業に時間が掛かっても、盗作やリスクを回避させるということは非常に大事かなと思っております。
フォトコンテスト入賞作品の活用方法
作品だけでなく撮影者とのつながりも価値
フォトコンテスト入賞作品の活用は、「オンライン」での活用と「オフライン」での活用があります。
入賞作品の活用として、SNS投稿や広告配信などオンラインでの活用、写真展やポスター、交通広告などのオフラインでの活用があります。
また、入賞「作品」だけでなく、「入賞者」とのつながりを是非大事にご活用されることをお勧めします。山田さん、入賞者とのつながりに関して、大津市としてすでに実施されたもの、これから検討されているものについて教えていただけますか。
山田氏:公式Instagramのフォロワーさまの中でも写真の技術が高かったり情報発信能力の高い方にお願いして、市のイベント、特に施設のライトアップなど内覧会にお呼びして、アドバイス、情報発信にご協力いただいています。
鳥取大山や長浜盆梅展の番傘をイメージして我々も設置を試みました。試験点灯の際にご協力頂いた写真家さんから、番傘がこの間隔だと携帯の縦構図で入らないよというアドバイスをいただいて即座に修正できたという例もあります。
また、入賞作品の活用については、今年度初めて東京カメラ部主催の写真展の出展を検討しています。開催・出展の場合は、今回のフォトコンテストの入賞作品をぜひ活用したいと思っております。
入選した写真家とのつながりができていくと、入賞者にもプロモーションに協力していただけたり、あるいは撮影のお仕事をご依頼するということもできるので、今後のプロモーション活動を強化していくことができます。
また、もちろん入賞作品をSNSで投稿するという活用方法もあります。約3,500枚の中から入賞する非常にレベルが高い作品を使って、魅力的な大津市を情報発信できます。
写真と撮影スポットが紐づいている「フォトスポットサイト」
フォトコンテスト入選作品などを活用して「フォトスポットサイト」を構築できます。
岐阜市では、市内外の観光客向けに岐阜市のフォトスポットを、写真が好きな皆さまが好む4つのジャンルでご紹介しています。「東京カメラ部10選」の写真家を現地に派遣して撮影した写真を地図上にマッピングし、写真とともに撮影のポイントや撮影マナーを記載したサイトです。
浜松市では、フォトコンテストの作品を活用した「フォトスポットサイト」を構築しました。地図上のポイントをマウスオーバーして対象写真を表示させ、拡大表示すると、観光情報などが表示されます。非常に質の高い作品で厳選されたフォトスポットを紹介していますので、写真撮影の初心者にも、「あ、ここでこんな写真が撮れるんだ」というのを伝えることができ、「行って撮影してみよう」という気持ちになります。
フォトコンテスト入賞作品の活用の事例として動画をご紹介します。
東京カメラ部主催の「日本写真100景」フォトコンテストの入賞作品をスライドショーでつないで動画を作成しました。
一般的に動画の制作は、費用と工数の観点からハードルが高くなりがちですが、このようにフォトコンテストで入賞した作品を静止画でスライドショー的に動画を作ることで、YouTubeのコンテンツとしての活用などフォトコンテスト結果ページとは異なる形でのコンテンツ作り・情報発信ができます。この動画のように高品質な写真で構成すれば、見ごたえのある動画を作ることができます。
大津市より主に自治体さま向けに情報提供
山田氏:今回東京カメラ部の力を借りてフォトコンテストを開催するに当たり、われわれが苦労してきたところを、ご視聴いただいている自治体さまにも情報提供したいと思っています。3つございます。
- まず、こういった情報発信業務、究極は地域の魅力向上や来訪者の増加というところなのですが、やはり単発、一発花火では効果は出ないので、継続した事業にするというのが非常に大事かなと思っております。
- そうすると、予算の確保というのが次の課題になってまいります。最初から多額の予算を掛けてラージスケールでやるのではなくて、スモールスケールのトライアルで始めて実績を拡大しつつ事業を拡大していくというのが一番効果的かなと感じております。
- 最後の3つめ。これも大事なことで、人材や後任の育成。観光系の情報発信業務というのは法に基づいた業務ではありませんので、究極のところ、予算取りや事業の効果というのは担当者個人の熱意に委ねられるところも多分にあると思っています。僕ももともとカメラをやってたわけではなくて、前任の担当、カメラ好きの子にこの世界に引き込んでいただいたのです。そして、今非常にカメラを楽しんでおります。ただ一般の方々に対しては、一眼レフ高いねとか、レンズなんかも買わなあかんなとか、ハードルが高く思えると思うのですが、例えばこういったコンパクトデジタルカメラ、携帯とは違ってファインダーで撮れたり、センサーサイズも結構大きいので、ボケがうまいこと写ったり、こういった、門戸はどんどん広がっているので、ぜひご視聴いただいている担当者の方もカメラの世界を楽しんでいただければなと思います。
本日は貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
FAQ
Q. 入賞作品の二次利用に関し、権利関係について
A. 原則、著作権は撮影者に帰属、著作者人格権は主張しない、となります。
なぜなら、ほとんどの場合、自治体のプロモーションにおいて著作権まで持っておくことのメリットはない、と言えるからです。仮に、作品の著作権をフォトコンテスト主催者側が持ってしまった場合、著作権を取られた側の撮影者は自分の作品として発表することができないので、ご自身でその作品を使って情報発信ができなくなり、主催者側のプロモーション/コミュニケーションとしては、むしろデメリットとなります。よって、著作権は撮影者に帰属、ただし著作者人格権は主張しないという立て付けでお願いをしております。
(入賞作品のみ)
Q. 入賞作品の二次利用に関し、汎用性を高くする方法について
A. 募集要項にあらかじめ、なるべく具体的に広範囲で活用できるように明記しておくことをお勧めします。また、実際に作品を使用した際には、ファンの方との大事なコンタクトポイントだとお考えいただいて、入賞者にお知らせする、こともお勧めです。あくまでも自主的になりますが、ここに私の作品が使われていますと入賞者が告知をしてくれる可能性もありますので、お互いにとってメリットになります。
Q. 応募作品全体を活用したい
A. 原則として入賞作品のみの活用をお勧めします。入賞作品以外の応募作品は、本人確認作業を行っていないため、先ほど申し上げたような盗作リスクがあります。また、活用にあたっては、許可取りをしたほうが安心です。
Q. インバウンド向けのメニュー
A. 海外在住の方を参加者としたキャンペーン(フォトコンテスト、プレゼント、モニター)は、GDPR:一般データ保護規則対応や景品法が各地異なるなどの事情があり、原則実施しておりません。フォトコンテストに関して、インバウンド向けの考え方としては、国内のいい写真を撮る人とつながり、高い品質の写真を投稿していただき、その写真で海外プロモーションにつなげるという考え方で行っています。そのような考え方で、インバウンド向けのアカウントで、海外発信用の作品収集のための国内向けのフォトコンテストを開催した実績がございます。
Q. 被写体の権利や施設の許可について
A. フォトコンテストの入賞候補になられたタイミングで、撮影者ご本人から確認をいただくようにしています。応募規約上は、被写体や施設の許可をクリアした上で投稿してもらうことを原則としております。
Q. フォトコンテストのKPIの設定について
A. 実施目的、内容やテーマに応じてご相談、となります。一般的には、応募枚数、また、目的がSNS上での拡散を狙う場合は、先ほど申し上げた投稿数や東京カメラ部で告知をしたときのリーチ数をKPIに設定するケースが多いです。
Q. フォトコンテストへの集客の仕組みについて
A. 東京カメラ部SNSアカウントは写真好きが非常に多く集まっていますので、このアカウントでの告知がメインになります。
Q. 膨大な写真の管理方法について
A. 東京カメラ部は、独自に開発した画像管理システムを持っております。画像管理システムは、各SNSからAPI経由で画像を収集、写真のデータのタグ付け、検索機能、お気に入り機能、ユーザー登録機能、あるいは投稿のテキスト検索機能などがあり、必要に応じて新たな機能を自社で開発しつつ、仕様をアップデートして膨大な写真を管理しています。なお、フォトコンテストの審査システムはこのシステムをベースにして開発し、クライアントにご提供しています。
Q. 例えば大津市内で撮影されたものという条件のフォトコンテストで、実際に大津市内で撮影された写真なのか判断が難しいものがあった場合について(例:空や花のアップ)
A. クライアントにご相談します。条件を満たしているか不明なものは、入賞を見送ります。この例え話で申し上げると、大津市さまでも分からないような写真やそこが大津市かどうか分からない写真は、大津市のプロモーションとしてはたぶん使えないものだと考えますので。
審査システムは、動画にも対応していますか。
A. 個別にご相談ください。
関連リンク
大津市観光振興課 公式Instagramアカウント (@hello.otsu.japan)
https://www.instagram.com/hello.otsu.japan/大津市フォトコンテスト「#hellootsu」フォトコンテスト
https://otsu.tokyocameraclub.com/contest2020/フォトコンテストサービス
https://tokyocameraclub.com/photoconsupport/地域創生事例
https://tokyocameraclub.com/localgov/日本写真100景〈四季〉2021フォトコンテスト
https://tokyocameraclub.com/special/contest_2021/日本写真100景
https://japanphotospot.tokyocameraclub.com/