開催日 : 2021年12月22日
協力 : 豊岡市、日本航空株式会社
コロナ禍で深刻な影響を受けた観光業・観光関連業支援のために「新たな観光スポットを見つけたい」、「既にある観光スポットにたくさんの人に来てほしい」、「より消費単価をあげたい」などの課題をお持ちの自治体様にご参考になればと、東京カメラ部では「SNS時代の観光支援!フォトスポットの見つけ方からツアー化まで」と題したオンラインセミナーを企画しました。
今回は、コウノトリ但馬空港の利用促進を担当され、フォトスポット開発事業の予算確保やフォトスポット整備のご判断などを推進された豊岡市のご担当者さま、ツアー造成やプロモーションを推進された日本航空宣伝部のご担当者さまをお招きし、フォトスポット開発やアドバイス、SNS上でのプロモーションをサポートした東京カメラ部が聞き手となり、本事業の具体例やポイント・考察をお話しいただきました。
詳細な対談の様子は以下のとおりです。皆様の参考になれば幸いです。
登壇者
豊岡市 都市整備課
山本 龍馬氏
- 兵庫県豊岡市出身
- 2001年入社、2005年市町合併により現在の豊岡市としてリスタート
- 2018年から都市整備課交通政策係に在職。主に但馬空港の利用促進を担当
日本航空株式会社 宣伝部 企画媒体グループ
大島 宗士氏
- 2016年に大学卒業後、岐阜県の市役所に就職
- 2019年から、日本航空へ出向となり、宣伝部に配属
- 宣伝部では、JAL国内線のプロモーション・PR業務を担当
- 主に、自治体や他企業と協業し、地域創生や観光誘客を目的としたプロモーションの企画・進行管理をしている
聞き手:東京カメラ部株式会社
企画営業部 執行役員/企画営業部長 高山 有仁
出演者紹介
まず、聞き手の東京カメラ部株式会社 執行役員の高山から自己紹介いたします。
大学時代は、自治体経営について現場で働きながら勉強、自治体の自治基本条例制定のサポートを経験いたしました。卒業後は一社を経て、2015年に東京カメラ部株式会社に転職、現在は主に省庁・自治体様・大手企業様のSNS企画運営やインバウンド施策、フォトスポット開発、ナイトタイムエコノミー、関係人口増加などを企図したプロモーションをご支援しています。
山本さん、自己紹介をお願いします。
山本氏:豊岡市 都市整備課の山本と申します。私は地元豊岡市出身で、2018年から都市整備課交通政策係に在職し、主にコウノトリ但馬空港の利用促進を担当しています。どうぞよろしくお願いします。
大島さん、自己紹介をお願いします。
大島氏:日本航空株式会社 宣伝部の大島と申します。大学卒業後に岐阜県の市役所に就職し、2019年から日本航空に出向、宣伝部に所属しています。宣伝部では、JAL国内線のプロモーション・PR業務を担当しています。主に、自治体や他企業と協業し、地域創生や観光誘客を目的としたプロモーションの企画・進行管理をしています。どうぞよろしくお願い申し上げます。
東京カメラ部株式会社のご紹介
今回の施策のお話をする前に、東京カメラ部をご存じない方に向けて、まず簡単に東京カメラ部株式会社をご紹介します。弊社が運営する「東京カメラ部」は日本最大級の写真好きが集まるコミュニティ、審査制の写真投稿サイトです。
主な特徴は、以下のとおりです。
- 世界中の写真愛好家の方から、毎日約4万作品をご投稿いただいている「東京カメラ部」アカウント。その中から素晴らしい作品を選び、毎日7作品を東京カメラ部のSNSアカウントでご紹介、年間延べ11億人の方が閲覧。延べファン数は530万人
- この運営ノウハウを活かし、日本政府観光局様、環境省様、浜松市様など地方自治体様、大手企業様の世界に向けた情報発信を支援。また、Twitter Japan様などSNSプラットフォーマー様からの仕事も受託
- 投稿写真は、日経ナショナル ジオグラフィック社様から写真集が発売されるほど、レベルの高い作品
- 幅広い業界でのフォトコンテストの実績多数。一括(企画、募集告知、運営事務局、審査/選定、賞品発送)で受託したフォトコンテストは160件超
兵庫県豊岡市のご紹介
山本さん、豊岡市のご紹介をお願いします。
山本氏:豊岡市は、兵庫県の北部に位置し北は日本海に面しています。面積は、東京23区と同じくらいで、その約8割を森林が占める自然豊かな場所です。
豊岡市は、日本から絶滅したコウノトリを繁殖し野生に復帰させる取り組みで有名になったこともありますし、観光として城崎温泉やお蕎麦で有名な城下町の出石市、それから先ほど日本海に面していると申し上げた竹野海岸、そして神鍋高原でスキーができるなど、本当に自然豊かな地域です。
また、食べ物もとても美味しく、但馬牛やこの時期は松葉ガニが有名で、毎年たくさんの方にお越しいただいております。
新型コロナ感染拡大前は、だいたい観光客のご来訪が年間430万人ほど、インバウンドのお客様も非常に伸びておりました。
豊岡市は観光地として城崎温泉を筆頭にたくさんの魅力がある地域ですね。どの地域からの観光客が多いのでしょうか。
山本氏:大阪や近郊関西圏の方が多いですけれども、最近は少しずつ首都圏などいろいろなところからのご来訪も多くなってまいりました。
兵庫県の海岸側ということで豊岡市は遠いのかな、と思う方もいらっしゃるでしょうが、実は首都圏からのアクセスは便利ですよね。
大島さん、伊丹空港からコウノトリ但馬空港までは日本航空が運航していますね。
大島氏:はい、コウノトリ但馬空港はJALグループの単独路線です。関西圏からは伊丹空港から約35分で非常にアクセスがよく、関東圏からは羽田空港から伊丹空港経由で約2時間ですので、関東圏からも非常にアクセスが良い場所だと思います。
ただ、関東圏での豊岡市の認知度がまだあまり高くないのが課題で、この地域の魅力やアクセスの良さを訴求していきたいと考えております。
私はこれまで2度豊岡市にお伺いしていますが、羽田空港からあっという間に乗り継ぎで、乗り継ぎも気楽にできてストレスなく現地に着いたという印象です。
観光客のニーズ把握
具体的な事業の話の前に、一般論として「観光客のニーズ把握」について少しお話しします。大前提として、「写真」と「旅行」は非常に相性が良いということは、改めて申し上げるまでもありません。「写真」は人を動かす・動かせる、ということです。
観光客のみなさんが旅行先で撮った写真をSNSで共有し、その写真をご覧になった方がその場所に行きたくなり、実際に行って写真を撮ってSNSで共有して、と良い循環になりやすい、と言えます。調査データでも「旅行先をどのように検索していますか」という質問への回答は「SNSで検索」、特に10〜40代はInstagramでの検索・情報収集をして観光先を決める、というのが圧倒的に多いです。
また、「Instagramでどこが見られているか」についてメタ社(旧フェイスブック社)の発表によると、5割以上が投稿文よりもビジュアルに注目しており、Instagramでは圧倒的に写真力がものを言うということがデータで裏付けられています。
よって、ビジュアルメインのInstagramでは高品質な写真を拡散させる必要があり、それによって観光地として選択していただけることが観光誘致策として効果的だと言えるのです。
実際に、SNS上で写真を見て人が来るようになった観光地は多く、魅力的な写真を投稿することは極めて重要です。
豊岡市でも安国寺(あんこくじ)が、SNS上の拡散によって有名になりましたね。
山本氏:はい。豊岡市には安国寺というお寺があります。秋になるとドウダンツツジが紅葉してとても綺麗なお寺です。もともとこのお寺のご住職がカメラがお好きで、ご自身でずっとお寺を撮影されていました。このお寺の写真がSNS上で拡散され、お越しになるお客様が増えたと伺っております。秋になると、行列ができるぐらいです。夜にライトアップもされていて、写真を撮る良いスポットがありますので、紅葉の時期にはいつも行列ができていると聞いております。
この写真のモデルは、ご住職ですよね。
山本氏:そうです。何パターンかポーズを撮ってもらい撮影しました。
先ほどの写真の部屋が明るい時に撮ったのが、この写真です。
みなさんお分かりでしょうか。窓枠がありません。写真のために窓枠を外しています。
また、写真上部に写っております電球は、写真映えのために上に上がるように、移動式になっています。写真がお好きなご住職ですので、写真のことを考えた絵作りをされています。その結果、先ほどのような写真を撮ることができるのです。
このようにフォトスポットを意識した対応をされているので、SNS上で話題になり、行列ができるまでになっているのです。
ここまで、Instagramできれいな写真を拡散するのが大事だということをご説明してまいりました。
例えば、東京カメラ部のSNSアカウントの場合「#東京カメラ部」と「#tokyocameraclub」の合計投稿数は2,324万件以上(2021年12月17日時点)と非常に多くの写真が投稿されています。どれくらい多いかを他のハッシュタグと比較しますと、#visitjapanjpが180万件
#tokyodisneylandが650万件ですので、その投稿数の多さをご理解いただけるかと思います。
みなさまの自治体の写真も、このようにハッシュタグで検索いただくと、Instagramに投稿されている写真をご確認いただけるかと思いますので、ぜひ検索してみてください。
東京カメラ部はSNS上の画像を管理する独自のシステムを構築しておりまして、毎日4万作品追加される最新かつ写真枚数最大級の写真データベースを持っています。
各地域のフォトスポット開発においては、このシステムとデータベースを活用し、過去〜現在#投稿されている写真を検察し、どんな写真が撮られている(人気になっている、なりつつある)のかをリサーチします。
このような、観光客によるマスの情報は非常に重要です。その地域で長く観光業に携わっていらっしゃる方が、この場所が良いよと仰っても、実はその場所の写真はSNSに投稿されていない可能性もあります。実際に観光客が撮影してSNSに投稿しているマスの情報を確認することは今の時代、とても大事になってきているのです。
フォトスポット開発事業
次に、今回のフォトスポット開発事業について具体的に話を進めてまいります。
山本さん、今回の事業の概要についてご説明いただけますか。
山本氏:本事業は、豊岡市・日本航空・東京カメラ部による共同プロモーション事業です。もともとは2016年度から国の地方創生予算を使って、日本航空と継続して豊岡市のPRを行ってきたのですが、そのなかで何かコンセプトを絞ってやっていきたいと、この3年間は「写真」というテーマで取り組んでまいりました。
プロモーションの最大の目的は、「コウノトリ但馬空港の利用促進」。いかに飛行機を使ってお客様に来ていただけるか、を考えながら事業を行っています。事業の期間は、2020年11月から2021年の10月まで。この期間は、東京カメラ部が現地に行ってフォトスポットに関するアドバイスをしたり、そのフォトスポットを拡散したりということを行ってまいりました。
東京カメラ部は本事業に1年間携わってまいりました。大島さん、日本航空は3年間携わってこられたのですよね。
大島氏:豊岡市とは、写真を切り口にしたプロモーションを3年にわたって実施させていただきました。今回のメインターゲットは、「関東圏のお客様」でした。豊岡市は城崎温泉など魅力的な観光地はたくさんあるのですが、関東圏から約2時間圏内と考えたとき他にも魅力的な温泉地があるなかで豊岡を選択いただくためには、今ある素材プラスアルファの新しい観光需要の掘り起こしが必要なのではと考えました。そこで今回、新しい挑戦でしたが「写真」という切り口でプロモーションを実施しました。
写真を使うといろいろなところに拡がって、認知拡大につながりますし、写真好きの方の特性上、四季や気候によってその瞬間を狙いたいと何度も足を運んでくださると思いますので、リピーターを獲得するという意味でも「写真」をテーマに実施してまいりました。
今回のプロモーションのターゲットを「カメラ好き」「写真好き」に絞られたのですね。
山本氏:豊岡市の観光の特性として、繁忙期と閑散期の差がとても大きく、閑散期にいかに人を呼び込むか、ということをずっと考えてきました。年間を通して来ていただけるものとして、いろいろなアイデアがあがったのですが、今回は「カメラ・写真好きの愛好家」をターゲットとしてプロモーションを実施しました。
「カメラ・写真好き」のターゲットを狙って、三者がどのような役割を担ったかをご説明します。
豊岡市には、施策実施予算をご用意いただき、東京カメラ部のアドバイスのなかから、各スポットでの整備を行うかどうかをご判断いただきました。
日本航空は、事業全体の進捗管理、プロモーション、ツアー化を担当されました。
東京カメラ部は、観光客のニーズ把握、魅力的なフォトスポット開発、そしてSNS上での拡散を担当しました。
大島さん、今回のプロモーションについて、具体的にお話しいただけますか。
大島氏:3年にわたってのプロモーションを、その年度ごとに目的を決めて実施してきました。
当初はまず豊岡市の認知を上げる、という目的で、雑誌やテレビなどのマスメディアや屋外広告を中心に展開しました。そして今回の東京カメラ部との取り組みについては、豊岡に誘客することを目的に、撮影ツアーを造成し、Web中心のプロモーションを実施しました。東京カメラ部のSNSアカウントを使った情報発信や、オンラインイベントを共同で実施しました。
続きまして、今回の事業の実施プロセスの流れをご説明します。
今回は、「企画」→「下見」→「ツアー化」→「現地指導」→「販売」→「ライブ配信」の流れで進めました。
「ツアー化」のプロセスでは、現地のガイドさんに案内していただくことを考えておりましたので、「下見」の段階では現地のガイドさんに、こんなふうにご案内すると良いよ、ということを現地で指導しました。
また、「ライブ配信」では、東京カメラ部のYouTubeチャンネルで写真が好きな方々にツアーをご紹介して訴求しました。
最初のプロセスの「企画」段階でどのように検討したかをご説明します。
東京カメラ部は写真のデータベースを持っており、その場所でどのような写真が撮られているか/いないかを事前に把握できます。
把握した後、写真が撮られている場所は、「お金が落ちているか」、「より単価を上げられないか」を下見で確かめています。
写真が撮られていない場所あるいは質の低い写真しかない場所については、「撮りにくいのか」「行きにくいのか」「知られていないのか」というような仮説を持って下見します。
なお、ご参考までに、全然写真が撮られていないのでわかりません、とおっしゃる自治体には、東京カメラ部はフォトコンテストの実施をお勧めしています。
例えば、フォトコンテストで入賞するレベルの写真が撮られている場所は、よく撮られていて、既に発信されていて、撮りやすい場所なのだと言えます。その場所については、先ほどお話ししたように「お金が落ちているか」、「より単価を上げられないか」を確認・検討いただくと良いでしょう。
入賞するレベルの写真ではないが、フォトコンテストには応募がある、あるいは応募されない場所は、何が原因なのか現地で探っていただく、そのような調査目的でもフォトコンテストはご活用できます。
「下見」のプロセスでは、現地には写真家さんと一緒に伺うことが多いです。
写真家は、もちろん写真に残すという力もありますが、「被写体を見つける」、つまりどんなところが写真映えするのか見つける力に秀でていますので、観光資源となる撮影スポットを見つける可能性が高いと言えます。
ちなみに東京カメラ部は、全国各地の写真家約800人とつながっていますので、この方々に依頼して全国自治体の撮影の仕事を承っています。
下見の時に、場所ごとに何を考えているか。まずは、「見せたいものは何か」。主題の被写体を決め、主題がわかりにくいのか、主題のインパクトが足りないのかによって、「引き算コース」と「足し算コース」の2つで検討していきます。
「主題がわかりにくい」、例えば周りがごちゃごちゃしてわかりにくい場合は、主役を弱めるものを外す(例:景観伐採で雑草を刈る)、「主題のインパクトが足りない」場合は、主役を引き立てるものを足す、例えば人を足す、小物を足すなど、その場所が写真映えするように工夫します。
大事なのは、「産業化につながること」で、「お金を落としてもらう仕組みを作ること」です。そうでないとその場所が持続しません。東京カメラ部はこのような考え方で、「下見」をしながら、アドバイスを差し上げます。
現地で下見をご一緒くださいました山本さん、いかがでしたしょうか。
山本氏:実際に一緒に現地を下見して、東京カメラ部はとにかく的確に問題点を見つけられるな、ということ、そしてアドバイスがちょっとした工夫で改善できる取り組みやすいものであることが多かったな、と思いました。下見の後に、そのアドバイスを観光協会に提案したところ、すんなり聞いていただき、共感してもらいました。本当に参考になるアドバイスでした。
東京カメラ部では、他の自治体で実際に既に取り組まれている改善内容に基づいてアドバイスしますので、取り組みやすかったのだろうと思います。
大島さん、下見はいかがでしたでしょうか。
大島氏:私も山本さんと同感です。東京カメラ部は、フォトスポットに行くとその瞬間に的確なアドバイスをしてくれるのが印象的でした。あるフォトスポットに行って、ここでリフレクションを撮りたいとなったら、ここに反射板を置くともっと美しくなる、とか、ここにこの格好をしたモデルさんを配置したらもっと見栄えの良いスポットになる、などのアドバイスが瞬時に出てきました。東京カメラ部には、毎日4万件ほどの作品が投稿されており、日々膨大な量を評価されているので、引き出しが多く、的確なアドバイスにつながっているのかな、と思います。
ありがとうございます。東京カメラ部は、まさにたくさんの写真を拝見していますので、写真を撮る人のお気持ちがわかるんですね。きっとこんな写真を撮りたいだろうな、だからこんな風にして欲しい、という写真家目線でアドバイスしています。 「下見」の後に、「ツアー化」を検討します。ツアー化検討のポイントをご説明します。
豊岡市にしかないもの「1. オリジナリティ」、続けられるもの「2. 持続可能」収益化が可能なもので、地元の資産(例えば地元のガイドさん)でできるもの、また、「参加者の満足が高く」「SNSで発信したくなるもの」であることが重要です。 現状ですと、これらに加えて「3. コロナ対策」。この3つの観点でツアー化をご提案しています。
豊岡市では、具体的にどのようなアドバイスをしたのか、その一部をご紹介します。
山本さん、永楽館のご説明をお願いできますか。
山本氏:永楽館は、豊岡市の出石にある芝居小屋です。明治時代に建てられた、近畿地方で一番古い芝居小屋です。取り壊しの危機にさらされましたが再建され、現在は歌舞伎や公演など、それがない日は一般開館されています。
大島さん、永楽館はとても良かったですよね。
大島氏:歴史的な建物がこんなに美しく現存しているということに驚きました。この写真のとおり、壇上からの景色はなかなか見ることができない特別な体験ですね、と視察時にお話ししたところでした。このアングルは、写真家の皆さまにも喜んでいただけるのではないか、と東京カメラ部からアドバイスがあり、屋内でも視点を変えるだけでフォトスポットになり得るんだというのが、発見でした。
永楽館のような場所は、だいたい撮影禁止になっている場合が多いのですが、永楽館は気軽に入れて写真を撮れる、そして壇上に上がれる、ととても良い場所です。更にもうひと工夫するのでしたら、例えば、噺家の格好をして写真を撮れるというような衣装の貸出サービスがあっても良いでしょうし、参加者の写真を撮って差し上げるサービスがあっても良い、というようなことをアドバイスしました。
山本さん、温泉寺をご紹介いただけますか。
山本氏:この写真は、城崎温泉にある温泉寺の参道を登る山道です。温泉寺は、本来ロープウェイで登っていくような小高い山の中腹にあります。その脇道に、この写真のような上り段があります。この日は残念ながら天気が悪く雨も降っていて、写真撮影にはタイミングが悪かったなと思ったのですが、撮影してみると思いの外、緑が美しく良い写真が撮影できたことにとても驚きました。
写真を撮影する方々は、一般的な観光客とは異なる時間帯に行動します。
朝日、夕日、夜が活動時間で、日中はほとんど活動しません。また、天気が悪い時、喜んで外に出て写真を撮ります。雨の日は、このような場所は葉っぱに光が反射して美しく撮れますし、靄がでていると幻想的な雰囲気になります。温泉寺までの山道のような場所は、天気の良い日よりも雨上がりのほうが美しい写真が撮れます。太陽が照っている日だけでなく、雨の日も美しいですよ、と訴求できる場所は観光アピールもやりやすいのではないかと思います。
続きまして城崎温泉です。
山本氏:城崎温泉の中心地付近の写真です。城崎温泉は平安時代にお湯が出て、現在は7つの外湯を巡るというコンセプトで多くの方がご来訪くださっています。この写真にありますとおり、街の中心に大谿川(おおたにがわ)が流れています。たくさんの方々がお越しになる場所です。
この場所は一大観光地で景観もとても美しく、たくさんの人が歩いています。
ただ、事前に東京カメラ部の写真データベースで確認すると、この場所の夜の写真がほとんどなく、みなさんがこの場所で写真を撮っていないか、撮ってもSNSに投稿していないことがわかりました。この場所で撮られているのは、花火が上がっている写真が数枚だけです。
現地に行ってわかったことは、明暗の差が激しく、色が混在しているため撮りにくいこと。また、観光客の方の動きを観察していると、橋の上で自撮りをされている方を何組か見かけました。ただ、橋の上で自撮りしようとすると、橋そのものは明るいのですが、自分の顔は暗いため、良い思い出写真を撮りにくいことがわかりました。
今後の対策をご検討中と伺っています。
山本氏:自撮り用の台の設置や、街の照明の色に関しては地元の方々もなるほどと納得してくださったので、今後何らかの対策がなされる予定です。
東京カメラ部では、ここで撮るときれいに自撮りを撮影できるという場所を作り、その場所に自撮り台を設置しましょうと各自治体にご提案、各地で設置いただいています。
続きまして、来日山です。
山本氏:来日山は、城崎温泉から車で15分ぐらい登った小高い山です。山のふもとに円山川という大きな川が流れていて、雲海の一大スポットになっています。だいたい秋頃、10月以降になるとこのような雲海が見られる事が多く、最近少しずつお客様が増えてきています。
素晴らしい雲海ですね。東京カメラ部もこの場所に伺い、この感動的な景色を拝見しました。
この場所には展望台があり、こちらの写真はそこから見た景色です。目で見ると雲海きれいだなと思うのですが、写真を撮ろうとすると、展望台が木に囲まれすぎて、木の枝々が写真に写ってしまいます。そこだけでも景観伐採していただくと良いのかなと思います。加えて、人が立っている場所の下草、雑草も刈っていただくとより良い写真が撮れるのではないかと思います。
そして、監視カメラを設置して、雲海観測配信を行えば雲海の状況がわかって写真家が行きやすいのかな、とも考えました。
山本さん、ここは車で近くまで行けて、駐車場から50メートルぐらいですよね。
山本氏:はい、この場所は駐車場から見えていますね。
場所が魅力的で駐車場もあって駐車場もすぐという、観光資源としてすぐにお金が取れそうな場所ですので、ぜひツアー化をご検討いただければと思います。
最後に、コウノトリ但馬空港です。
この写真は飛行機を降りてすぐに撮影したもので、JAL機をかっこよく撮れました。
大島さん、JAL機をたくさん撮影して欲しいですよね。
大島氏:そうですね。撮って欲しいです。もちろん、係員の指示に従って安全第一で撮っていただくのが大前提ですが、この写真のように、コウノトリ但馬空港は飛行機から降りて間近で写真が撮れる空港です。この写真も、高山さんが飛行機から降りてすぐ撮影されたんですよね。
そうです。こんなに近くで飛行機を撮れる場所は他にはないんじゃないかと思います。
大島氏:はい、珍しいと思います。
この写真は、飛行機を降りると水溜りがあったので、ローアングルでリフレクションを撮りました。このような場所も観光資源になりますので、今後ツアー化の際にご検討いただければと考えています。
ここでお示しした内容は一部ですが、このように豊岡市のいろいろな場所を巡ってアドバイスし、今回JALPAKと共同でツアーを造成しました。
大島さん、ツアーの販売サイトを制作されたのですよね。
大島氏:東京カメラ部にアドバイスいただいたフォトスポットをとりまとめて、ページを制作しました。ターゲットの写真愛好家の方に閲覧していただけるように、写真とともに位置情報や撮影時間や機材、撮影テクニックなどを、東京カメラ部監修でまとめました。興味を持ってくださった方にはそのままツアー購入できるように、購入ページへの導線も作りました。
ツアーの内容について、ご説明をお願いします。
山本氏:出石を巡るツアーとして、現地の観光ガイドに案内してもらってぐるっと街なかを歩くのですが、特に写真に注目していて、各スポットで、ここからこういうふうに撮ると良い写真が撮れますよ、というツアーを造成しました。
そして、東京カメラ部のYouTubeアカウントでライブ配信しました。
大島氏:今回のターゲットの写真愛好家の皆さまに、非常に効果的な訴求ができたと考えています。コロナ禍ですので、今回はオンライン配信で実施しました。東京カメラ部の代表や写真家の藤原嘉騎(ふじわらよしき)さんにも登壇いただき、プロの視点から現地での撮影体験秘話やリアルな感想を伝えることができ、豊岡市の撮影地としての魅力が伝わったのではないかと思います。
このライブ配信のアーカイブは、東京カメラ部YouTubeアカウントにアップされていますので、ぜひご覧ください。
「ベストショット!豊岡市 supported by JAL」東京カメラ部10選トークライブ
山本さん、大島さん、最後に一言お願いします。
山本氏:コロナ禍という難しい環境下、東京カメラ部には、私たちが考えていなかった「SNSに主軸を置いた見方」を教わりました。また、先ほどもお話ししたとおり、東京カメラ部からのアドバイスは実現が難しいものではなく、気をつけていれば少しずつ改善していける内容で手の届く提案が多かったので、これからは地元の方々とそういったところに力を入れてPRしていきたいと考えています。
大島氏:プロモーションの観点から、東京カメラ部と一緒にお仕事をして良かったと思う点が2点ありました。
一つめは、東京カメラ部のSNSアカウントのフォロワーが延べ530万人と、今回のターゲット層に非常に効果的にリーチでき、拡散できたこと。
二つめは、東京カメラ部は全国に写真家約800名とのつながりがあるということで、今回は、東京カメラ部10選の藤原嘉騎(ふじわらよしき)さんにご協力いただいて撮影いただいたのですが、プライベートでも何度もお越しくださったり、執筆活動のなかでも豊岡市を取り上げてくださったり、副次的にも良い結果が生まれたと思います。
豊岡市はとても魅力的な地域ですのでぜひお越しください。そして、お越しになる際は、ぜひ日本航空をご利用いただけると嬉しいです。
本日はありがとうございました。
関連リンク
ベストショット!豊岡市 4つの撮影スポットで狙う写真旅!
https://ontrip.jal.co.jp/toyooka-bestshot東京カメラ部監修 出石城下町と永楽館フォトツアー
https://www.tbj.jal.co.jp/info/contents/HTML/JALT/B2C/MZ/21DP/KAS/MZ2180BC0001.html「ベストショット!豊岡市 supported by JAL」東京カメラ部10選トークライブ
https://youtu.be/N7Jt4sSYBE4地域創生事例
https://tokyocameraclub.com/localgov/日本写真100景〈四季〉2021フォトコンテスト
https://tokyocameraclub.com/special/contest_2021/日本写真100景
https://japanphotospot.tokyocameraclub.com/