開催日 : 2020年12月3日
協力 岩手県
岩手県では、2019年から毎年“岩手のいいところ「#iiiwate ”いい岩手”」”をテーマとしたフォトコンテストを開催、コロナ禍の2020年においても応募枚数を増やすことに成功されています。東京カメラ部株式会社は、本フォトコンテストの運営全般をサポートしています。
今回は、岩手県 政策企画部 広聴広報課 主事の金田一氏に、本フォトコンテストの目的や実施結果、東京カメラ部を活用いただいたご評価などをお伺いしました。
登壇者
岩手県 政策企画部 広聴広報課 主事
金田一 勉氏
- 2011年4月~ 岩手県庁入庁 東日本大震災の被災企業支援や観光振興の業務に従事
- 2017年4月~ 広聴広報課勤務 主にSNSを活用した情報発信を担当
- 2019年4月~11月 #iiiwate教えて広めてキャンペーン実施/SNSフォトコンテストに加え、SNSキャンペーンやデジタルスタンプラリーなどWeb上での重層的なキャンペーンを展開
- 2020年7月~ #iiiwate見つけて教えてキャンペーン2020実施/SNSに特化した投稿促進キャンペーンを展開
聞き手 : 東京カメラ部株式会社 執行役員 高山有仁
自己紹介
自己紹介をお願いします。
金田一氏:岩手県政策企画部広聴広報課の金田一(きんだいち)と申します。岩手県らしい名字でございます。
私は、東日本大震災直後に大学新卒で岩手県庁に入庁しました。東日本大震災の被災企業の支援・観光復興の業務に何年か従事した後、2017年から現在の広聴広報課に勤務しております。
広聴広報課では、主に SNSを活用した情報発信を担当をしておりまして、2019年度から東京カメラ部と一緒に「#iiiwate“いい岩手”教えて広めてキャンペーン」という企画で、フォトコンテストに加えてSNS全体でのキャンペーンやデジタルスタンプラリーなど、Web 上で重層的なキャンペーンを展開しました。
2020年も2019年と同じように「#iiiwate“いい岩手”見つけて教えてキャンペーン2020」ということで、SNSに特化した投稿促進キャンペーンを実施、その一環としてこのフォトコンテストも引き続き東京カメラ部と一緒に進めております。
私自身のSNS活用は、自分自身のアカウントにはあまり多くの投稿はしていないタイプで、仕事や趣味・情報検索でSNSをよく使っている、という感じです。
東京カメラ部を知ったきっかけ
東京カメラ部をお知りになったきっかけについて、教えてください。
金田一氏:2018年5月のセミナーで東京カメラ部を知り非常に興味を持ち、具体的な話を聞きたいなと思って、2018年10月にイベントに出展していた東京カメラ部の高山さん(=聞き手)と初めてお会いし、そこから丸2年くらいのお付き合いになっているところです。
岩手県#iiiwateフォトコンテストの開催目的
フォトコンテスト開催の目的をご説明いただけますか。
金田一氏:「岩手県全体に関するSNSの投稿が少ない」ということが課題としてありました。SNSの中で岩手の話題をいかに発信していくかということを考えた際、まず県民の方あるいは岩手にいらっしゃった観光客やビジネスの方にSNSで岩手の情報をたくさん発信していただこう、ということでその取り組みとして、先ほど申し上げた「#iiiwate“いい岩手”見つけて教えてキャンペーン」を2019年度開催しました。
また2019年度は県を挙げて、東日本大震災の風化防止、魅力ある三陸沿岸を形成することを目的とした三陸防災復興プロジェクトも動き、その2つのプロジェクトは、このキャンペーンといいタイミングで合わさったというところがありまして、この企画を実施いたしました。
岩手県#iiiwateフォトコンテストを実施して
この岩手県#iiiwateフォトコンテストは、応募枚数6,847枚と非常に多くの作品が集まりました。東京カメラ部アカウントでフォトコンテスト募集告知投稿を行い、延べ52万人超の方にリーチをしたことも、これだけの数が集まった結果につながりました。
フォトコンテストは、これまでにも実施されていましたか。
金田一氏:確か7~8年くらい前に、観光部門が実施したことはありました。その時は1,000枚ちょっとの応募枚数だったかと記憶しています。
フォトコンテストの運営について、貴自治体のみで運営されるか民間企業に依頼されるかについては、どのようにお考えになりましたでしょうか。
金田一氏:「拡散力」を考えると、なかなか岩手県単体でやるというのは難しいと思っておりましたので、まず基本的にはその専門知識やノウハウがある民間企業さんに委託をしてお願いをしたいと考えて、企画コンペの形を取らせていただき、東京カメラ部の評価が高かったので依頼しました。
2019年のフォトコンテストは、枚数が多かっただけではなく、入賞した作品を拝見しても分かるとおり非常にレベルの高い作品が集まりましたね。
金田一氏:ありがたいことに、いずれの部門(風景部門、食部門、三陸復興部門)も高いレベルの作品が集まりました。受賞作品を撮影された方は、県外の方ももちろんいらっしゃったのですが、大半は県内の方でした。こんなにいい写真をたくさんの県民の方が撮っていらっしゃるということにまずびっくりし、そして県の広報の人間として非常にありがたいなと思いました。
#iiiwate フォトコンテスト2019 審査結果発表ページ
フォトコンテストを実施する前に、不安に思っておられた点はありますか。
金田一氏:「拡散力」というところですね。いろんな人に話を聞きながら事業を組み立てていったのですが、そのなかで聞いたのは、フォトコンテストは初回はあまり認知されないので応募が少ないよ、何年か実施して初めてコンテストとして参加者に認知される、ということでした。私はその「拡散力」の課題をクリアして、1年目からある程度の結果を出さなければいけないな、ということを考えていました。
今回は、東京カメラ部のSNSアカウントで、フォトコンテスト募集の告知投稿を実施しました。東京カメラ部のSNSアカウントのファン・フォロワーさんは、写真好きなセグメントの方々ですので、岩手県で撮影をされている方/撮影されていた方など多くの方にリーチできたと思います。
金田一氏:東京カメラ部と一緒にやることで、自分たちだけでやるのとは拡散力のスタートラインが全然違ったと思います。一緒にやらせていただいて良かったと感じています。
ありがとうございます。もし、毎年フォトコンテストを実施される自治体様・企業様がいらっしゃったら是非ご検討をお勧めしたいのが、フォトコンテストに応募してくださるであろう方々をInstagramなどのSNSでコミュニティ化しておくことです。
毎年ゼロから募集告知をするのではなく、興味を持ってくださった方をコミュニティ化して積み上げていく。次回以降はその方々に今年も実施しますよ、と案内をしつつ新たな層にも告知していくことで、回を重ねるごとに拡げていくことができます。
コロナ禍でできること
コロナ禍では、大勢の方を集めてはいけない、三密は避けよう、などということでなかなかリアルイベントを実施しにくく、また、COVID-19はいつ収束するか目途がつきにくい状況です。そのような環境下では、何もしないのではなく、旅行先として忘れられないようにオンライン施策でお客さまとつながっておくというのが大事なポイントになります。
オンライン施策はいくつかありますが、私どものお勧めはSNSを使った施策です。他社様が実施された「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う消費者のSNS利用実態調査」※では、コロナ禍でSNSの利用時間が増えた・すごく増えた、という回答者が約3割弱、また、最も利用頻度が増えたSNSを利用する目的への回答では、Instagramの場合、趣味/好きなことに関する情報収集やコミュニケーションを目的とする方が多いという結果が出ておりまして、観光情報の発信はInstagramを活用したオンライン施策が向いていると言えます。
※アライドアーキテクツ株式会社調べ。 調査名称 :新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う外出自粛に関するアンケートご協力のお願い
https://service.aainc.co.jp/product/echoes/voices/0028
コロナ禍で実施したこと:岩手県の場合
実際に岩手県さんは、2020年は春夏に1回、秋冬に1回と計2回「#iiiwate ”いい岩手”」フォトコンテストを実施されました。まずは、2020年7月に募集開始されたフォトコンテストの開催目的をご説明いただけますか。
金田一氏:前年2019年と同様、 “岩手のいいところ「#iiiwate ”いい岩手”」”で岩手の魅力をSNS上で発信してもらうことが開催目的でした。2019年に実施して手ごたえがありましたので、2020年はSNSに特化したキャンペーンとして展開しました。
※1回目:7月募集開始。テーマは、岩手の春、夏、三陸復興。2回目:10月募集開始。テーマは、岩手の秋、冬、三陸復興。
1回目はできればゴールデンウィークあたりからスタートさせたかったのですが、コロナ禍におけるフォトコンテストということで、実施内容を再検討する期間を要しまして、7月スタートとなりました。
#iiiwate フォトコンテスト2020 Spring & Summer
#iiiwate フォトコンテスト2020 Autumn & Winter
2020年7月募集開始のこのフォトコンテストは、総応募枚数9,002枚と、前回2019年の6,847枚を大幅に超える作品が集まりましたね。
金田一氏:そうですね。先ほども話しがありましたとおり、フォトコンテストの「継続」がひとつ大きなポイントだったのかな、と思っています。昨年2019年に「#iiiwate ”いい岩手”」でフォトコンテストを認知してもらった上で、今年2020年もやります、ということで、#iiiwate で投稿することを楽しみにしてくださっているファンの方もできてきました。そのようなファンの方がついてきてくださったということが大きいと思います。
応募が増えたことについては、2020年のフォトコンテストは、テーマ設定もよかったのかな、と考えています。春夏秋冬というテーマは幅広く、いろんな写真を応募できますので。また、コロナ禍でSNSに触れる時間が増えた、ということも応募作品数が増えることにつながったのではないかと考えています。
2020年の2回目の、10月に募集開始されたフォトコンテストはまだ募集期間中(本セミナー実施時点で)ですが、現時点で9,444枚集まっています。自治体さんのフォトコンテストで1万作品近くの応募作品数はトップクラスかと思います。
どのようなことが応募枚数につながったのかを、金田一さんとともに紐解いていきたいと思います。
まずその前に、そもそもなぜフォトコンテストを開催するのか、という「フォトコンテストの目的」を整理します。フォトコンテストの目的は、主に4つございます。
「1.受賞作品の2次利用」、「2.ユーザーからの魅力発信」、「3.ブランディング施策」、「4.SNS盛り上げ施策」の4つです。
岩手県さんの場合、フォトコンテストの目的は「2.ユーザーからの魅力発信」と「4.SNS盛り上げ施策」でしたね。
金田一氏:SNSの良さは、誰でも発信者になれることです。岩手県だけでは発信力を飛躍的に上げていくことは難しく、SNSを使って県民の皆様そして県にいらっしゃった観光客の皆様など県外の皆様のお力を借りて、岩手県の魅力を発信する仕組みを構築したいということが目的のひとつです。
また、キャンペーン全体を通して、岩手のファンのエンゲージメントを高めていって、岩手をもっと好きになってもらい、好きになったからより発信したい、というサイクルを作ることで「2.ユーザーからの魅力発信」と「4.SNS盛り上げ施策」の2つが好循環していくことを目指して、事業を組み立てました。
フォトコンテストの目的が定まりましたら、次のステップとして企画設計に入ります。フォトコンテスト全体の概ねの流れとスケジュールは、以下をご参照ください。
なお、東京カメラ部では、「審査~入賞者確定」のプロセスで、炎上リスク対策として入賞候補作品の本人確認作業を行っています。
応募写真を集めるには、応募者の参加ハードルを低くし、参加したくなるような設計をし、多くの写真好きにリーチすることがポイントです。フォトコンテストの認知・拡散はもちろんですがそればかりでなく、企画設計が重要です。
東京カメラ部は企画設計から認知・拡散までサポートいたします。
企画設計段階で大事なポイントはいくつかありますが、岩手県さんは、特にハッシュタグが大事とお考えになって工夫されましたね。
金田一氏:はい。参加したくなるフォトコンテストの設計として、ハッシュタグを重要視しました。フォトコンテストを実施する場合は、ハッシュタグを設定することが必須ですが、ハッシュタグがあまりかっこよくないと、ご自身のSNSのアカウントに応募作品を投稿するというインセンティブが働かない可能性があります。今回設定した「#iiiwate」は、iwateに「i」が二つ足し合わさっていてすっきり見えますし、意味としても非常にポジティブなメッセージになっているかなと。
フォトコンテストだけではなく、岩手の魅力を発信するプロモーションとしても、何でも使えるキーワードになっているかと思います。ハッシュタグの設計はキモになる部分で、私も事業を組み立てる上で一番考えた部分と言っても過言ではありませんので、今後フォトコンテストなどでハッシュタグをご検討される方は、ご参考にしていただければ。
ハッシュタグを検討する上では、いくつかポイントがあります。まずは、応募者がつけやすい言葉/入力しやすい短いものであること、そして金田一さんがおっしゃったように、自分のSNSアカウントのタイムラインに投稿するものですので、かっこよくないものは避けること。
また、そのハッシュタグが「何かわかるもの(理解できるもの)」。そのハッシュタグが何を意味しているのかよくわからないものは、後で検索すらされないのでわかりやすいものにすること。
加えて、もし年間のプロモーションプランがおありでしたら、そこでお使いのキャッチコピーなど共通で使える/使い続けられるようなものにすること。
そして、応募に必要なハッシュタグを多くしすぎない(3つ以上)、ということも大事です。
#iiiwateは、フォトコンテスト終了後もこのハッシュタグで投稿してくださる方がいらっしゃいましたね。
金田一氏:そうですね。終わった後もウォッチしていましたが、ハッシュタグでの投稿が伸びていましたね。ありがたいことです。
そうすると、フォトコンテストを実施していない期間も、そのハッシュタグでみなさんがPRしてくださるという非常にありがたい状況になりますね。
続きまして、フォトコンテストの賞品についてのポイントです。フォトコンテストの賞品欄も自治体様や企業様のPRの場になります。
岩手県さんの場合は、例えばお米のように、通販やふるさと納税返礼品などオンラインで購入できるものを賞品として設定してPRされました。
金田一氏:こちらは全て通信販売で買えるものです。岩手県の場合、県土が北海道の次に広いこともあり、農産品・水産品・加工品など食べ物だけでも様々で魅力的な特産品があります。これらをフォトコンテストを通じてPRしたいという思いがありました。
また、今回はオリジナルのクオカードも作りました。岩手県としてもコロナの収束を願うということもありまして、クオカードのデザインは、岩手県のキャラクターわんこきょうだいに、アマビエやねまろーなどを加え、かわいいデザインにして大変評判の良いものになりました。
フォトコンテストの賞品は、品物やギフト券だけでなく、入賞作品を多くの方にご覧いただける場所で展示する(写真展会場、電車の中吊り広告など)、表彰式、なども参加者の応募のモチベーションとなります。
今回、審査プロセスで、東京カメラ部が開発した「審査システム」をお使いいただきました。東京カメラ部の審査システムをお使いになっていかがでしたか。
金田一氏:とても使いやすかったです。私個人として良かったのは、審査システムから撮影者さんのSNSのリンクにとべるので、その方がどのような作品をお撮りになっているのかなどを拝見できることでした。
本日は、貴重なお話しをお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
関連リンク
岩手県の事例
https://iiiwate.tokyocameraclub.com/contest2019/フォトコンテスト実績一覧
https://tokyocameraclub.com/photocontest/フォトコンテストサービス
https://tokyocameraclub.com/photoconsupport/地域創生事例
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