【観光資源の開発TIPS②】資源を集客・収益につなげる実践ノウハウ4つ
地元に人を呼び、活気を高めるために日々頭を悩ませている方も多いと思います。
地域の活性化は、「今地元にある環境を、見方を変えることで価値あるものに変える」ことでも叶います。この記事では、発見した地域資源を集客・収益・シビックプライドにつなげる4つの実践ポイントについてご紹介します。
※「地元に今ある資源を活かす」の考え方のヒントは、こちらの記事で紹介しています:
→「【観光資源の開発TIPS①】「今ある資源を活かす」考え方のヒント」
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まず結果から:見方を変えて、0円が22,000円になった例
東京カメラ部が関わった「令和2年度大山隠岐国立公園大山地域写真映えコンテンツ造成業務」の例をご紹介します。
鳥取県にある大山(だいせん)の標高1,000メートル地点の「元谷(もとだに)」は、美しい星空と雄大な山肌を望むことができるスポットですが、軽登山が必要というハードルから、「怖い、アクセス困難な場所」として観光資源としての価値は無いに等しい場所でした。
ここに環境省・大山観光局・LANDSCAPE DESIGNと東京カメラ部が協力し、登山ガイドによる安全管理つきで星空を鑑賞・撮影できるツアー「大山×星空を観る、最も美しい場所での観賞&撮影ツアー」を企画しました。

大山を撮り続ける地元写真家が絶賛!大山×星空を観る、最も美しい場所での観賞&撮影ツアー
山を知り尽くした地元ガイドが同行して「安心」を提供し、プロの写真家が星空撮影の技術を直接レクチャーする。さらに参加者を星空と一緒に撮影するという、安全と教育と思い出をセットにしたパッケージです。「鑑賞」にとどまらず、「自分だけの作品を撮れる」「特別な場所で品質の高い写真を撮ってもらえる」の価値も追加されている点が独自ポイントです。
「夜の危険な山」が「プロと一緒に絶景を撮りに行く体験」として編集しなおされたことで価値のつく場所に変化しました。開始当初の価格は参加費16,500円でしたが、すぐに満席となり、ツアーはその後も続いており現在は22,000円の商品として定着しています。
注目したいのは人数です。開始から5回で参加者は約30人です。SNSのフォロワー数の観点では小さな数字ですが、16,500円を払う30人は、無料イベントの3,000人とは性質が異なります。「何人集めるか」ではなく「どれだけ滞在し、どれだけ支払ってもらえるか」に物差しを変えたことでこれだけの価格的価値のあるコンテンツとなりました。
地域にある材料に観光資源としての価値を見出していくには、「独自性(その土地にしかないもの)」と「再現性」の担保が重要です。大山の例では、「プロによる撮影」と「ガイド」によってそれを実現しました。
フォトジェニックな場所の条件
「発見した資源」を人が訪れる場所として育てるには、いわゆる「映えスポット」を狙うのとは少し異なるアプローチが必要です。一過性のバズを狙うのではなく、「再現性」に関する次の3条件を満たす場所を意識して育てることが重要です。
- 誰でも撮れる:特別な機材やスキルを必要としない
- 構図をまねできる:見た人が「自分も同じように撮れる」とイメージできる
- 撮影場所が特定できる:どこで撮ったのか分かる、または調べられる
「映え狙いは軽薄ではないか」という見方もあるかもしれません。ただし、入口の敷居を下げることと、中身を薄くすることは別の話です。まず来訪のきっかけを作り、そこから地域の物語に触れてもらう、という2段階で設計するとよいと考えています。
ノウハウ1 「愛される名前」をつける
どれほど良い場所でも、名前がなければ検索されず、SNSでも共有されません。TIPS①の記事で登場した滋賀県の「メタセコイア並木」のように、通称は単なる愛称ではなく、その場所を検索可能にする“タグ”としての役割を果たします。
行政資料にありがちな正式名称(例:「〇〇地区農村公園」)は、正確ではあるものの “タグ”は機能しにくくなります。覚えてもらいやすさや想像のしやすさを考えると、他の場所と被らず、印象に残り、思わず検索窓に打ち込みたくなる名前をつけることがおすすめです。公募という形でもよいですし、訪れた人が自然に呼び始めた通称を、後から公式が採用する形でも良いと思います。
ノウハウ2 バズらせるより、UGCを「ストック」として運用する
観光プロモーションのSNS施策というと「バズらせたい」という発想になりがちですが、ここで区別しておきたいのが「フロー」と「ストック」です。
バズは、タイムラインを一瞬流れて数日で消えるフロー(一時的な情報)です。一方、検索結果に残り続ける写真や情報はストック(蓄積する情報)にあたります。旅行を検討している人が地名で検索したとき、魅力的な写真が撮影地情報つきで表示されるかどうか。来訪の意思決定を左右するのは、3年前のバズではなく、いま検索して出てくるストックだといえます。
このストックの主な原資となるのが、住民や来訪者が投稿するUGC(ユーザー生成コンテンツ)です。静岡県浜松市の例が分かりやすいでしょう。フォトコンテストに集まった2,042枚の写真(市が自前で集めていた年の約5倍)を、表彰式で終わらせず、撮影場所を地図に落とし込んだ常設の「フォトスポットサイト」に、撮影者クレジットつきで収蔵しました。一過性のコンテストが、検索され続ける資産に変換された例です。

運用のコツは地味ですが重要です。応募規約に使用範囲を明記し、撮影者のクレジットを必ず添え、新しい用途で使う際は改めて連絡します。ストックとは「写真の枚数」ではなく、「権利が整理され、撮影者と良い関係が続いているUGCの枚数」だと捉えるとよいでしょう。
ノウハウ3 「民」が種を見つけ、「官」が支える体制をつくる
大山のツアーを企画したのは、写真家など民間側でした。ただし、これを一度きりで終わらせず商品として定着させたのは、地元の旅館や登山ガイドを集めた意見交換会と、モニターツアーによる改良を重ねる、官・地域側の下支えがあったためです。
「民」が売れる商品の種を見つけ、「官」や地域のとりまとめ役が、地元の理解と協力という土台を用意する。この二人三脚がどちらか一方でも欠けると、企画は一度きりのイベントで終わりやすくなります。行政・代理店の立場からは、自ら新しい目玉を作ろうとするより、すでに動き出している民間の小さな取り組みを見つけ、後方支援に回る方が近道になるケースが多くあります。
ノウハウ4 体験には、正しく値段をつける
「うちの町でそんな値段は取れない」という声もよく聞かれますが、安売りは必ずしも親切とはいえません。価格は品質のシグナルであり、最初に提示した安値は基準点として固定されやすく、後から適正価格に戻すのは難しくなります。安値で集めた集客は現場を疲弊させ、利益が残らないため、次への再投資もしにくくなります。
一方、適正な価格には、来訪者を選別する働きがあります。大山のツアーに集まったのは、体験の価値を理解し、マナーを守り、リピートしてくれる客層でした。ガイドの専門性や安全管理といった付加価値がある体験には、相応の対価をつけてよいと考えられます。公園や展望台など誰もがアクセスできる無料の領域と、専門性が乗る有料の体験は、対立するものではなく役割分担だといえます。
まとめ:発見の先に、資産化の設計を
名づけ、UGCのストック運用、官民の二人三脚、適正な値付け。この4つは、いずれも「新しい観光資源を無理に作る」話ではありません。すでに見つけた素材を、いかに長く使える資産として育てるかという、運用面の工夫です。
この先には、集めた写真の権利処理や、来訪者と住民の軋轢を防ぐ環境設計、次世代への還元といったテーマも続きます。まずはこの4点を、進行中の企画や提案の中でチェックリストとして当てはめてみることをおすすめします。
※「地元に今ある資源を活かす」の考え方のヒントは、こちらの記事で紹介しています:
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