2017年4月28日(金)~5月6日(土)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2017写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。
4月29日(土)に行われたソニーマーケティングのトークショーでは、東京カメラ部10選 井上浩輝氏に登壇いただき、「αが捉えた北海道の自然」というテーマでお話しいただきました。
木村「井上さんと一緒にトークショーを進めさせていただくソニーマーケティングの木村と申します。よろしくお願いいたします」
井上「今回、僕がいつも北海道で撮影しているキタキツネと動物たちの写真と、αシリーズで撮影している風景の写真を集めました。本日は皆さんに撮影の様子などを紹介できればと思っています。よろしくお願いいたします」
井上「僕の大好きな写真の一つです。僕は稜線の上を歩くキツネを撮るのが好きでよく探しているのですが、このキツネの足をよく見てみてください。一番最後の関節まで見えているんですね。実はこれって撮影するのがすごく難しいんですよ。キツネが歩く場所と自分がいる場所の高さが上手く合っていないと、足の先まで見えないんです」
井上「風景写真も好きでよく撮るのですが、基本的にくもり時々晴れの日に出かけるようにしています。なぜならこうやってスポットライトのように面白いものに光を当ててくれるときがあるんです。この写真を撮るときにはEVFを使いました」
木村「皆さんカメラの設定をカスタマイズすると思うんですが、その設定が反映された状態で撮影できるEVFは、我々SONYとして非常に自信を持っている機能です」
井上「EVFを覗きながら、一番明るい部分である建物の白い壁の部分を見るんです。そこが白飛びしないように撮れば日陰になっている部分はずっと暗くなるので、こうやって印象的な写真になるんです」
井上「上がカラマツ、下がシラカバです。白いシラカバの幹に陽が当たっていない瞬間にシャッターを切るのですが、EVFの中で幹が白く飛ばないようによく見ておくんです。そうするとシラカバのラインダンスが始まるような、そんな一枚になるんですね」
木村「井上さん、この写真は何のカメラで撮られたんですか?」
井上「これはα6000です。今だと10万円以内で買えるんじゃないでしょうか。α6000って今はとても安くなっていますが、ものすごく高画素・高精細のカメラなんです。でもインターネット上で写真を見せる場合、実はあんまり高画素なカメラでなくてもいいと思っているんです。使いやすいことときれいな色が出ることが一番だと思っていて、僕はそういう点でSONYさんを選んでいるんです」
井上「去年の夏に出会ったクマの写真です。カメラはα7RⅡで撮影しました。まだ陽が登る前で結構暗いのでノイズが出てしまうかと思っていたのですが、そんな心配は不要でした。レンズはFE 70-200mm F4 G OSSだったのですが、F2.8より軽いので片手で撮れちゃうんですよね。やはり小型で軽量というのがSONYさんのカメラの特徴だと思います。できるだけ身軽でいたいときに非常にありがたいですよね」
井上「こちらはダイヤモンドダストの写真です。TV番組『情熱大陸』でも紹介していただき、今非常に売れている写真です。この写真を撮影するときにもEVFが非常に役に立ちました。なぜかというと、氷の粒というのは人間の目ではこんなに大きく見えないんですよ。この写真で大きく見えている氷の粒は実は玉ボケなんですが、EVFを使えば氷の粒をそのまま玉ボケとして見ることができるんです。これはEVFの大きな強みですよね。ここで皆さん想像してみてください。真っ白な雪があたり一面にあって、強い太陽が向こうから刺してくる。そんな眩しいところで背面液晶を見ることができるでしょうか?多分見えないと思うんですよ。だからEVFってものすごくアドバンテージになるんですね。時間が非常に節約できます」
井上「これはRX10Ⅲで撮影した鶴の寝床の写真です。実はRX10Ⅲは凄いんですよ。次の写真をご覧ください」
井上「実は同じカメラで同じ場所から撮ってるんです。一枚目が望遠端、二枚目が広角で撮ったときの写真なんです。これが一台のカメラでできるというのが凄いんです。レンズ交換をする必要がないカメラなんですよね。600mmまでズームできる非常に使い勝手がいいカメラなのに、軽いから片手で撮れる。そして撮れた写真は高精細です。素晴らしいカメラだと思います」
井上「RX10Ⅲで撮ったキツネです。TV番組『情熱大陸』の中で、僕が雪の上でゴロゴロ転がるシーンがあったと思うのですが、あのシーンで撮った写真です。キツネ同士が出会ったときに口を開けるんですが、何をしているのか実はよくわからないんですよ。口の大きさ比べをしているのかもしれないし、気合いを確かめ合っているのかもしれない。でも少なくとも、負けた方がそこで伏せをして、勝った方は背中を地面に擦り付けるんです。このとき僕はほふく前進をしながらキツネに近づいていたので、キツネは僕が負けた格好をしたと思ったらしく、背中を擦り付けたんですよ。でも意外にすぐ立ち上がって去ろうとしたので、『撮影のチャンスがなくなってしまう!これはまずい』と思って、ひっくり返って勝った仕草をしてみたんです。そうするとキツネは『勝ったのは自分だ』と言わんばかりにもう一度転がったんですね。そのときの写真なんです。RX10ⅢはAF性能も非常に良くて、ちゃんとピントが合うんですよ。細かいところの描写も非常にきれいです」
井上「この写真はRX100Ⅳで撮影しました。この角を見てください。エゾシカは実は毎年春になると角を落とすってご存知ですか?ボキッと折れたり、木に当たって落ちたり…。それで、その角がまた生えてくるときって最初は袋の中に入っていて、秋になると袋を必死に木に擦り付けて剥くんです。この時期になるとエゾシカは気性が荒くなってときには突進してきたりするので、近くで撮影するのはやっぱり怖いですから、カメラをエゾシカの近くに置いて遠隔操作で撮影するんです。スマホにアプリをダウンロードすれば、スマホがリモコンになる。しかもカメラに写っている映像がスマホで確認できるんです。こうすれば、自分が危険にさらされることなく写真を撮ることができます」
井上「これはRX100Ⅳで撮影をした美瑛の池の写真なのですが、実はこの日ビクセンさんの赤道儀を使ったカメラのイベントに急遽呼ばれたのですが、実はRX100Ⅳしかカメラを持っていなくて。でもこのカメラの広角端は24mmで、天の川を撮るにはちょっと狭かったんですね。だからちょっとテクニックを使ったんです。カメラを横位置に構えて、上から下まで3枚撮ったものを、後からPhotoshopで合成したんです。ちなみに、星にピントを合わせるときはやっぱりEVFが便利です。EVFの中に明るい星がパアッと見えてきて、そこでピントを固定することができるんですね」
木村「実はRX100Ⅲ・Ⅳ・ⅤにはこのコンパクトなボディのなかにEVFが内蔵されていて、一眼レフカメラと同じような操作感でしっかり撮影できるコンパクトカメラなんです。実際にクオリティも非常に高いので、ぜひこのEVFを試していただければと思います」
井上「アンニュイで気だるそうな表情をしていると思いますが、実はまばたきの途中の1コマをセレクトしたんです。草を食べたあとに顔を上げた瞬間に連写をしました。カメラはα6000。秒間11コマの連写をできるので、あとからそういった面白い一枚をセレクトできる確率がグッと上がります。僕は動物の写真を撮るときに白目を意識しています。白目が見えるように撮ると、なんだか人間ぽさを感じるんですよね」
井上「僕の人生で今まで撮ってきたキツネのなかで、一番気に入ってるのがこの写真なんです。このキツネは毎日同じ時間にネズミを捕まえに行くんですが、下手で全然とれないで帰ってくるんですよ。僕は毎日こいつのあとを付いて歩いていたんですが、とれなかった日は『見てないよ』と敢えて視線を合わせないで、とれたときだけ『やったじゃん』と拍手して励ましていたんですね。そうするとこのキツネはどんどん僕になついてきて、ネズミをくれました。そしたら、また違うものを咥えて持ってきたんです。胆のうでした。キツネにとってみたら、多分それが一番大事なものだったと思うんです。そんなときに見せてくれたのがこの表情です。太陽の光がでてきたときに、キツネがスッと太陽の方を見上げたんです。僕がSONYさんのカメラを使っている理由の一つは、手に入れやすい価格のカメラにも非常に高い技術が投入されていること。このとき使っていたカメラだって10万円以下で買ったα6000なのに、この子をすごくきれいに写すことができたと思っています」
木村「井上さん、ありがとうございました。わたしたちは"α Universe"というwebサイトで写真家さんの様々な活動を紹介しています。どのような方法で撮影しているのかという裏話や作品集も公開させていただいており、週一回更新しています。本日は限られた時間でしたが、"α Universe"内では更に詳しいストーリーを読んでいただくことができますので、ぜひご覧になってください。本日はありがとうございました」