夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」



2016年6月23日(木)~26日(日)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2016写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。

6月26日(日)に行われたニコンイメージングジャパンのトークショーでは、夜景フォトグラファー・丸田あつし氏にご出演いただき、夜景の魅力についてお話しいただきました。

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「私は20年以上夜景を撮影し続けています。まず夜景撮影の際に、最低限持っていく機材についてお話ししたいと思います。レンズはAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR IIの三本と、ボディはD810を使っています。それぞれのレンズで気に入っているのは、ナノクリスタルコーティングがされていることです。レンズの内面反射を抑えてくれるので、黒の締まりがよくなるなど階調を豊かに表現してくれます」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「夜景を撮る上で使う機材もご紹介します。三脚にワンタッチでカメラを取り付けられるクイックシューを使用しています。イメージが湧いた瞬間にすぐ撮影したいときなどに便利です。また、カメラのストラップは風が強い日になびいてしまいやすく、ぶれの原因になるんじゃないかと心配ですよね。ですから、ストラップの一部が取り外しできるものを使っています。その分、風の抵抗が弱くなるんです」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「写真を見る前に、私にとっての夜景の魅力を語らせていただきます。20年以上前のある日、撮影の帰りに暗い山道を走っていて非常に不安になってしまったのですが、あるカーブで遠くの方に街の灯りが見えて、そのときすごく安心しました。私は、光というものに無意識に人間の存在を重ね合わせていたと気付いたんです」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「この写真に写っている光は漁火です。姿が見えなくても、海の上には人がいるんだということがわかりますよね。私は光は人間の生きている証や象徴、命の灯火なのではないかと思っています」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「これは宇宙から夜の地球を撮った写真。命の灯火が輝いている夜景に魅力を感じていて、世界中に存在する光ある景色を撮影したいとう気持ちで活動しています。アフリカのこんな内陸にも街の灯りがあるんです」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「ここからはテーマを4つに分けてお話していきます。まず一つ目は『撮影を始める時間帯』です。夜景撮影をする上で、夕方から空が真っ暗になるまでの時間帯を必ず撮影します。空が徐々に暗くなって街の灯りが点いていくのは、夕景から夜景に生まれ変わる瞬間だと思っています」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」 夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「こちらの写真はチェコのプラハです。カレル橋の奥にあるプラハ城がライトアップされています。左の写真は空がピンク色に染まった夕方のきれいな時間帯。真ん中の写真は歴史的建造物や橋にも光が灯って、夜景に生まれ変わっている印象を受けます。右の写真の時間帯では、暗部や川の部分、空の部分が黒く落ちて階調がない分単調になります。露出の差も激しいのでライトアップも飛び気味になってしまいます。写真的に魅力があるのは真ん中で、夜景に生まれ変わっている瞬間だと思います」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「次の写真はニュージーランドの北の島のマウンガヌイというところです。一番左の写真は夕方の写真ですね。真ん中の写真は空・雲の表情、海の雰囲気、浜辺に押し寄せる波の状況などがわかります。このくらいの時間帯から夜景に生まれ変わってると思います。右の写真になると左の海がどうなっているかわからなくて、山並みも空とは同化していますよね。このように、夕方から撮影場所に行ってみると違った表情の写真が撮れると思います」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「二つ目は『高感度撮影で広がる表現』というテーマです。近年では感度を上げても画質がきれいなので、動いているものを止めて写せるようになりました。この写真は、エストニア共和国のタリンという都市の旧市街です。昔は歩いている人がぶれて幽霊のようになってしまいましたが、今では高感度撮影ができるようになったことで、人の往来を止めて写すことができるようになりました。この写真では、左下の二人の関係性が気になりませんか?このように、作品のエッセンスとして、見る人に想像力を働かせるような表現が可能になりました」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

高感度撮影の恩恵を受けた作品の数々がスライドで上映されました。電車もお好きということで、電車が写った夜景写真もあります。

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「三つ目は『被写体からヒントを得る作品作り』というテーマです。こちらは青森県の釜臥山から撮ったむつ市の夜景です。通称アゲハチョウの夜景と言われています。風が強い日でしたので、シャッタースピードを長めにとれば、雲が流れて空にもアゲハチョウが表現できるのではないかと思いました。自分なりのアイディアを加えた一枚です」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「写真を撮っていると晴れの日ばかりではありません。雨が降ることもあるけれど、だから撮影できないというわけではありません。例えば雨の日は、ライトアップの光が地面に反射し、幻想的な写真を撮ることができます。諦めないで被写体を探し、視線を変えると撮れるものがあるんです」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「最後は『デジタル処理』というテーマです。デジタルカメラで撮った写真は、自分の感じた臨場感を伝えるために、撮影した後にデジタル処理をすることがあります。こちらはNYのタイムズスクエアの写真なのですが、世界中の広告が集まっている色鮮やかな場所なんですね。全体の彩度を上げて、色飽和を起こしたマクドナルドの赤い看板を元に戻しています」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「次の写真、姫路にある工場の夜景です。煙突から吹き上がる水蒸気の煙が燃え盛る炎のように見えたので、大きく色を変えています。水蒸気がかなり強く描写しています。やはり肉眼で見ているものと出来上がったものの臨場感の印象の差が大きいので、人に伝えるためにデジタル処理をするのは有効だと思っています」

夜景フォトグラファー・丸田あつし氏「夜を彩る光の世界」

「最後に。夜景撮影のときは三脚を持っていくので、風景に自分を入れて、いわゆる自分撮りを楽しむことができるんですね。先々月、ペルーの砂漠の街で美しいシーンに出会い、この中にいる自分を撮ってみました。一緒に素晴らしい風景を写して自分の姿を見せていくと、SNSなどでも反応がいいのかなと思います」

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