ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」



2016年6月23日(木)~26日(日)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2016写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。

6月25日(土)に行われたヨシダナギ氏と旅する鈴木氏のトークショーでは、お二方にご登壇いただき、今まで旅した世界各地での出来事についてお話しいただきました。

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

ヨシダ「アフリカの少数民族を撮っています。アフリカの東側によく行きます」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

ヨシダ「この写真は、エチオピアの南西部にいるスリ族という民族。世界一ファッショナブルな少数民族と言われています。その日の気分でボディペイントを変えていて、自分たちの髪飾りを作ったりもしているんですよ。主に満月の時のダンスパーティーとウェディングとご機嫌なときにオシャレをしています」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

ヨシダ「こちらはエチオピアの北部の方々です。アファール族はエチオピア以外にもいるんです。噂で、『本当のアッファル族はアフロだよ』って。でも、日本で侍を探すような感じで見ることはできないと思ってたんですが、スリ族のガイドが少数民族を大好きで、ロン毛のアフロを見つけたと言っていて、会いに行ったら彼らが本当にいて、交渉して二日間車で移動して、一緒に写真を撮りました。これは彼らの正装で、牛脂を頭につけて白くしているんですが、すごく臭くて匂いだけで胃もたれします(笑)」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

鈴木「わたしは嫁と世界中を旅しながら、毎日Youtubeに動画をUPしています」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

鈴木「こちらの写真はウユニ塩湖ですね。嫁に『なにかポーズしてみて』と言ったら困ってしまっているところです(笑)」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

鈴木「ヨシダさんは世界遺産に魅力を感じないから、そういう場所にはカメラを持って行かないと聞きました。興味があるのは人だけなんですよね」

ヨシダ「わたしは興味の幅がすごく狭いんです。人というか、少数民族ですね。服をあまり着ていない人に興味深々。自分の姿と違ければ違うだけ面白いと思っていて、裸なのにセクシャルじゃないのもすごいな、と感じますね」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

司会「鈴木さんとヨシダさんはどのように知り合ったのですか?馴れ初めを教えて欲しいのですが」

鈴木「南アフリカのケープタウンの安宿にいた旅人から、ヨシダさんのことを紹介されたのがきっかけでした。『鈴木さん、いい子がいるんですよ』って言われて(笑)」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

鈴木「その時見せてもらった写真がこちらです。写真を見てすぐにFacebookでヨシダさんにメッセージを送りました」

司会「ここに写っているのは何族ですか?」

ヨシダ「ナミビアのヒンバ族です。赤土を肌に塗っているんです。日焼け止めの効果があるのと、おしゃれのために塗っているんだそうです」

鈴木「この方達はお風呂に入らないのですが、土には殺菌効果もあるようです。赤土を売りに来る泥売りも存在しているんですよ」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

鈴木「ヨシダさんはわたしのこと知ってました?」

ヨシダ「知人に『面白い動画を撮る人がいるよ』と紹介されて、こちらの動画を見たんです。普段映像や景色には興味がないんですが、ここに映っている窓がすごくおしゃれだなと思って。枕もきれいだし、いい場所に泊まっているんだなぁと思いました」

鈴木「モロッコのワルザザードという砂漠地帯の人の家に泊まったんですが、その窓がとてもおしゃれで。タイムラプス撮影で24時間カメラを回していたので、カメラに映らないようにベッドの下で雑魚寝したんですよ」

ヨシダ「撮影のためにホテルの部屋を余分に取っていると思っていたから、なんて贅沢な人なんだろうって」

鈴木「ギリギリで旅しているので、こんな豪華な窓のあるホテルに泊まったことないですよ」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

鈴木「僕が撮影する映像の軸は、人と伝統産業です。こちらの動画は、モロッコの南部にしか生えない植物から作られるアルガンオイルという高級なオイルを作っているところ。ベルベル族の産業で、道路も走っていない、水も湧き水しかないような田舎の村です。しばらく滞在して仲良くなって撮らせてもらいました。これがアルガンという木の実の胚珠を手作業で出して、絞って油を出しているところです」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

司会「景色と共に伝統産業も映すんですね」

鈴木「衣装もカラフルですし、女性は華があって画になります。お囃子のようなものを歌って順番に作業していくんですが、とてもきれいでした。ただ、ちょっと生っぽい話になりますが、撮らせてもらえるまで時間がかかりますね」

司会「ヨシダさんも常にポケットに小銭を入れていますよね」

ヨシダ「あるだけばら撒きますね(笑)」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

鈴木「マサイ族は値段が高いんですよね」

ヨシダ「マサイ族はビジネスが上手。ちょっと安くしてよと交渉してみても、全て一律料金だからって断られてしまいました。だから洋服を脱いでマサイ族のお母さんと仲良くなったんです。金額は変わらなかったけれど、本来は集落内でしか撮影できないところを車で移動した場所で撮らせてもらいました」

司会「洋服を脱ぐと効果があるんですか?」

ヨシダ「その民族と同じ格好をすると『本当に私たちの文化が好きなのね』と思ってもらえるので、交渉はしやすくなるのかなと思います。私、小さい頃からマサイの戦士になりたかったんです。5歳の時にテレビでたまたま見て憧れたんです。でも、マサイが外国人だとは思わなくて、職業だと思っていました。それで将来マサイ族になろうと。母親に『いつあれになれるの?』って聞いたら、『あなたは日本人だよ』って言われて、その時に初めて日本以外の国があることを知りました。挫折ですよ。最初で最期の挫折。それ以来、いつか会いに行きたいなという思いになったんです。2014年にタンザニアで一泊した時にガイドに誘われてバーに行ったんです。そうしたらシティマサイといわれるBボーイのようなマサイ族にどこから来たのか聞かれたんです。日本から来たと答えると、『俺、知ってるよ。南側の少数民族とすっぽんぽんになって赤い肌になって、すごい俺たちの文化をリスペクトしているクレイジーな日本の女がいるんだ』って。ヒンバ族の写真を見せたら、『俺らめっちゃお前のことをリスペクトしてるんだ』って言われて感動しました。マサイがSNSを通して私を知っていたんですよ!?」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

ヨシダ「これはチャドという国に2012年ごろ行ったときの写真。日本ではチャド大使館がなくて、ビザが下りないんです。なので隣のカメルーンに行って、むりやりガイドを探してカメルーンでビザを取りました。『死んでもいいなら入れる』と言われましたね。テレビで日本に来るチャド人は毎年1人らしいと言っていて、その一人に日本で会うのは難しいなと思って行きました。少数民族の情報もなかったので、どんな人たちがいるのかも分からない状態でしたね」

司会「危なくないんですか?」

ヨシダ「いつ戦争が起こるかわからないから、常にピリピリした空気です。10~15時しか街を歩けないし、泊まる宿も襲撃される可能性があるから1日ごとに変えてくださいと言われました。シャッター切った後にすぐ逃げていってしまったんで名前もわからないんです。この撮影をする1~2日前に兵隊さんにつかまって、車から引き出されてホールドアップされましたよ。威嚇したいんでしょうね。隣を見たら、大柄のガイドと通訳が命乞いしてるんです。そんなんやったら長引いちゃう。兵隊さんたちがいい気になるから。ドライバーは肩震わせて笑ってるし。すごくカオスな状態でした。この件の後にガイドと通訳は同行するのを止めてしまって、ドライバーと二人で向かいました。ドライバーはフランス語しかしゃべれなかったから不安は大きかったですね」

司会「鈴木さんは危ない目にあったことはありますか?」

鈴木「僕は安全旅行を心がけているので危険な目にあったことはありませんが、グアテマラでスリ被害に遭いそうにはなりました。いきなり嫁が背の高い男と手をつないで歩き始めたのでどうしたんだろうと思ったら、奪われそうになったデジカメを取り返そうとしている図だったんですけど(笑)」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

司会「ここには虫がいるんですよね」

ヨシダ「私は虫にご縁があって、今まで体に色んな物ができた経験があります。この撮影をした後、背中に手のひら大のコブができて、1日1日増えていきました。お尻にもできた時に病院に行ったら水を抜いてくれたんですが、翌日になったらまた増えている。ガイドに針を渡して水を抜いていたんですが、数日経っても増え続けるので再び病院に行ったら、『アフリカンアレルギーだから帰りなさい』と言われて。確かに帰ってきたら治りましたね」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

ヨシダ「エチオピアでは卵産みつけられちゃって。指にイクラみたいなものができました。病院に行ったらお医者さんも触りたくないって嫌な顔して。遠目からピンセットでピンピン取れられました」

司会「嫌じゃなかったの?」

ヨシダ「いや、子持ちになったと思って(笑)。性行為してないのに子持ちになったんですよ。すごいですよね。日本ではこんな経験できないからいいかなって思っています。命かけて撮ってるんです」

ヨシダナギ × 旅する鈴木トークショー「撮りたい。という衝動 ~ヨシダ、裸でアフリカをゆく出版記念~」

最後に、ヨシダナギさんの書籍に紹介がされました。

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