2015年2月14日(土) CP+2015のニコンブースで、東京カメラ部のトークイベントが行われました。

はじめに、司会者より東京カメラ部の紹介、そして登壇者の紹介がありました。

トークイベントのスタートです。

アキラ・タカウエ

まずは、アキラ・タカウエさんからです。

「こんにちは。タカウエと申します。メインのコンテンツは建築写真、シティスケープです。写真を始めたきっかけは、自身が設計したり、解析したり、橋梁や高層ビルなど海外との大きなプロジェクトに携わったときに現場の写真、業務写真を撮ることでした。そのときはアートに仕上げるといった考えはありませんでした。しかし、2009年にヨーロッパのある写真サイトを見たときに、アーキテクチャ、シティスケープといった人工構造物をアートにし、発表して個展を開催するということがメジャーなコンテンツと知りまして、これは日本にはないと感じ、私も勉強してみようかなと思ったのです。
しかし、最初はなかなかうまく行かず、試行錯誤しました。ニコンのCapture NX 2などの現像ソフトを使ったり、撮影手法を学びながら、今までやってきた次第です。
作品づくりで注意している点は、私も設計者ですので、技術者が決定した構造のコンセプトを想像し、そのコンセプトを極力写真の中に入れることを目指しています。」

ここで3枚の写真の説明に移ります。

「これは都庁の写真です。Nikon 1 V1で撮影しまして、ワイドコンバータを取りつけました。丹下氏の有名な作品ですね。もちろん都庁の方のコントラストを意識するということはあるのですが、都議会とのコントラスト、2つの一体化している部分を景観設計のコンセプトとして撮影しました。後ろの方は流れています。NDフィルターを使って構造物を浮き出しています。昼の撮影ですが、構造物のテクスチャに合わせたコントラストを出しました。」

「もうひとつは、たんすに見えるとSNSで言われましたが(笑)、構造物です。設計者が図面を起こすときに二次元で表現しますが、その設計者の頭の中をそのまま表現してみようというコンセプトで二次元のようなフラットイメージにしています。この『A』『B』『C』というのは、もっと手前にあるライトを被写界深度をより深く、2つ一緒に撮影しています。こちらもNDフィルターを付けまして、昼間ですけれども流してやる。そうすることによって、この『A』『B』『C』と構造物が浮き出てくるというコンセプトです。」

「最後は、遠景です。これはセスナに乗りまして、東京の隅田川の北先住の近くを撮影したものです。空撮の経験はないのですが、Nikon 1 V1の連写速度は強烈なものがありまして、ただボタンを押してれば撮れると(笑)
今回は近景と遠景、そして超遠景の3枚をNikon 1 V1で撮影しました。様々な用途で使えますね。」

司会者
SNSに投稿することで気を付けていること、または意識していることはありますか?

タカウエさん
「シティスケープ、建築というのは日本ではあまり見られないので、技術者の一人として発表して、技術者の頑張ってる部分やこうした世界があるんだということを見ていただきたいと思っています。」

司会者から最初の2枚の色味について質問がありました。

タカウエさん
「基本的に白黒にする理由は、建築写真においてはテクスチャのコントラストを大事にしたい、カラーにごまかされずにテクスチャの美しさを出したい、ということです。」

「今後の抱負ですが、引き続き世界中に無数にある建築の写真を撮っていきたいと思っています。現在トルコやイタリアの方の建築会社とのプロジェクトがあり、関連した撮影を行っていきます。基本は海外での発表となりますが、時間がありましたら日本でも個展などを開いて、皆さんにぜひとも作品を見ていただければと思います。」

内山 慎吾

続いて、内山慎吾さんです。

「主な被写体は、ワンちゃんです。私が写真を始めたきっかけは、ビーグル犬のマックス(6才)を飼い始めたことです。この子は実は2代目で、先代は6年前に天国にいってしまったのですが、その子の日常をきれいにかわいく撮りたいというところから写真を始めました。」

3枚の写真の説明に移ります。

「まず秤に目が行くと思うのですが、このシックな古い秤は、鎌倉のアンティークショップで見かけたものです。初めて秤を見たときに、マックスがご飯を見ているという、この絵が出来上がりました。この背景はこだわってまして、市販のものは合わないと思ったので、ベニヤを買ってきて自分でしっくいを塗り、その上にペンキを塗って汚したりして雰囲気を出しました。台もアンティークなものを使用しています。」

「次の写真は水を飲んでいるマックスです。お散歩中に撮りました。お散歩に似つかわしくないニコンのD3Sという(笑)がっつりした大きいカメラをぶらさげて、マックスにロングリードで遊ばせながら、たまたま水を飲んでいるところを撮影しました。しかも、70-200mmという大きめのレンズを使って撮っています。マックスのお散歩には常にカメラを持っていきます。」

「こちらは一枚め同様、スタジオでの撮影です。私は作品を作るにあたって、まずイメージをスケッチして、それを絵で描きためています。そして後で見返しておもしろそうな作品を小物を使って形作っていきます。これも以前に描いた絵を元に、パペットの人形を買ってきて作っています。
また、他のワンちゃんを撮るときもあるのですが、いずれの作品でも撮影時間は5分、長い時で10分掛からない程度にして、ワンちゃんに負担をかけないことを心がけています。」

司会者
動物を撮る際のワンポイントアドバイスはありますか?

内山さん
「ワンちゃんに限らず、動物はこちらの注文に応じることは難しいと思います。その点、ニコンのオートフォーカスは反応が速いので、予期しない動きも撮れます。」

司会者
SNSに投稿することで気を付けていること、または意識していることはありますか?

内山さん
「僕はSNSの投稿を意識することは少ないのですが、SNSに投稿することによって愛犬家の方や写真が好きな方にたくさん見ていただけるので、撮り溜めた作品の中で良いものができたら投稿して、皆さんに見ていただけるように心がけています。」

「これからですが、マックスだけではなく、いろんなワンちゃんのすてきな表情を切り取っていきたいと思ってます。作品の展示に関しては、国内だけではなく、台湾や中国などアジア圏での個展を検討しています。愛犬家や写真が好きなたくさんの方に見ていただけたらと思っています。」

福田 悟

最後は、福田悟さんです。

「僕ほどSNSによって人生が変わった人間もそういないのではないかと思っています。本当の素人なので、2、3年前にはこんな風にニコンさんのブースに立つことは想像すらできませんでした。
カメラ歴は長いのですがここ10年ぐらいは、年に数回桜などを撮りに行くだけで、特に人に見せたり、コンテストに応募するということはありませんでした。Facebookを数年前に始めまして、写真を少しアップしたりしていましたが、『いいね!』が2,3個つくぐらいでした。ある人に東京カメラ部を教えてもらい、試しに2枚写真を投稿してみたところ、その2枚が初代10選に入るという奇跡が起きました。それでまさに写真人生が変わったと言えると思います。それまで写真を撮るというのは、自分の気分転換や旅行が目的だったのですが、初めて10選の写真展に参加させていただいて、人に見てもらえる楽しさ、嬉しさ、感動してくれる素晴らしさに気が付きまして、それ以降は自分のためというよりは見てくれる人のために頑張って撮っています。
東京カメラ部に入ってから大きく変わったのは、カメラ関係の友人や仲間ができたことです。周囲にカメラ好きの人がいなかったので常に一人で撮っていたので、仲間と一緒に撮影に行く楽しさも知りました。ウェブの影響力は大きくて、撮影地で全く知らない方に『福田さんですか?』と尋ねられることもありました。」

3枚の写真の説明に移ります。

「これは奈良の吉野の桜です。有名な下千本、中千本、上千本という場所よりもかなり手前にあって、まだ桜もそんなにない場所なんですが、偶然通りがかりに見かけて慌てて撮りました。この作品は僕にとってはRAW現像の可能性を見つける最初のきっかけになったような作品です。ずいぶん昔に撮影したのでD70という古いカメラで撮っているんですが、オートのホワイトバランスでただ撮っていたので作品になるような絵ではなかったんです。ただすべてRAWで記録していましたので、しばらく経ってからRAW現像してホワイトバランスを大きく変えて、桜の色を出すということをやってみて、影とか光の関係をうまく出すことができました。それ以降、僕の作品はRAW現像を中心としています。当時はRAW現像ソフトも進化していなかったので、当時だとこういう絵はたぶん出せなかったと思います。最近のソフトの進歩によって、新しい表現ができるようになったと思います。」

「これは奥多摩にある有名なイロハカエデです。毎年秋に撮影していたのですが、毎年状況が違うんで楽しみに行っていました。このときは逆光の状態で、ちょうど光が差してきた時に撮りました。普通に撮ると黄色い紅葉の部分が白く飛んでしまって、他が暗くなってしまいます。現地では飛ばないように抑えて撮影して、RAW現像で色を出しています。これは東京カメラ部のカレンダーに入れていただきました。」

「これは今回このステージに立つことになりまして、D810をお借りして撮影しました。葉山の方で撮影しまして富士山は雲で見えなかったのですが、雲と夕日の光の感じがうまく出たと思います。これは目で見るとこういう風に見えるのですが、撮影すると逆光ですので岩が黒くつぶれて光は白く飛んでしまいます。そこでRAW現像で、現像時に露出補正でマイナスとゼロとプラスの3枚の絵を出して、それをワンショットHDRという手法で、専用のソフトで合成しました。現地ではとにかく光の情報を最大限漏れなく記録することを心がけて、作品は現像処理で『こういう風に持っていこうか』と考えながら作っています。」

司会者
風景写真を撮るコツなどはありますか?

福田さん
「風景は一瞬一瞬の光が大事。その情報を正確に記録することを重視しています。」

司会者
SNSに投稿することで気を付けていること、または意識していることはありますか?

福田さん
「僕はメインの活動がFacebookです。Facebookはきれいな写真が手軽に見られるのは素晴らしいのですが、画像を投稿するとすごく劣化してしまいます。非常に圧縮率が高いので、きれいなグラデーションが飛んでしまったり、コントラストが落ちてしまったり、色が鈍くなってしまったりします。ですので、自分のタイムラインに非公開でアップして確認してみます。Facebook向きの画像を投稿しているので、見てもらいたい画像でも、Facebookの特性できれいにアップできない画像は投稿するのを諦めます。」

「今後も風景をメインで撮っていこうと思っていますが、街のスナップ写真や人工物も撮っていきたいです。昨夏からモノクロも始めたのですが、光の表現が上手く出せるのでこれもやっていきたい。あと合成を使った、ファインアート系の独特の世界観やストーリーを感じるような作品を今年から始めたのですが、これからもやっていきたいと思っています。」

なぜニコンを選んだのか?

皆さんはなぜニコンを選ばれたのでしょうか?

福田さん
「大学を出るときにアルバイトをして最初にF3を買いました。ニコンのデザインや信頼性がすごくよかったんです。RAWデータのダイナミックレンジの広さをすごく信頼していて、後から自由な創造ができる、ということでニコンを選んでいます。それと建築の仕事で撮影するときもあるのですが、メインで使っているD800を生かせる高解像度のレンズがあるということも決め手です。」

タカウエさん
「私もレンズの解像度ですね。建築写真ですので、テクスチャのコントラストを重要視していかないといけない。それと、建築構造物というのは基本的にすべて直線ですから、レンズの周辺の歪曲がきっちり補正されていないといけない。ソフトで修正は可能ですが、細部にわたって自然に補正していくのは不可能ですから、レンズの方できちんと撮れるというのが大きな魅力です。ということで、やはりニコンベースを使わせていただいています。」

内山さん
「オートフォーカスの速さが魅力です。それと、わんちゃんの毛並み一本一本を細かく鮮明に描写するということが重視していますので、高解像度というところにアドバンテージがあり、ニコンを使わせていただいています。」

司会者
こちらで終了となります。皆さまぜひ作品ギャラリーにも足を運んでくださいね。


東京カメラ部の皆さんに、すばらしい作品とそれを生み出す手法を紹介していただきました。お三方それぞれの作品に向き合う姿勢や苦労、楽しみが十分に伝わってきたトークイベントでした。

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