トークショーレポート
Talk Show Report
2025年9月12日(金)~9月15日(月・祝)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2025写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選、自治体の首長などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。
9月14日(日)に行われた「東川町・ひがしかわ観光協会」のトークショーでは、東川町町長 菊地伸氏、日本郵便株式会社 梶恵理氏、東京カメラ部10選 写真家 井上浩輝氏にご登壇いただき、「オクルヒガシカワ」というテーマでお話しいただきました。
東京カメラ部運営 塚崎(司会)「東京カメラ部代表の塚崎です。本日は東川町のステージにお越しいただきありがとうございます。本日のテーマは『オクルヒガシカワ』、こちらでお届けしたいと思います。今回の登壇者は豪華な三名です。まずは東川町長の菊地さんです。続きまして、東川町役場、そして日本郵便にもお勤めの梶さんです。そして写真家であり東京カメラ部10選でもあり、早稲田大学でも教鞭をとられている井上さんです。よろしくお願いします。このステージは最後に恒例のじゃんけん大会があります。素晴らしいプレゼントもありますので、ぜひ最後までお聞きいただければ幸いです。
それではまず、町長。東川オフィシャルパートナーという制度について、ご紹介いただけますか?」
菊地「東川町は今日のテーマにもあるように『写真の町』です。1985年に『写真の町』を宣言し、写真文化を中心としたまちづくりを進めてきました。そのなかで、写真業界やカメラ業界の方々など、いまで言う『関係人口』の構築を40年続けてきた町でもあります。その後ふるさと納税制度が始まりましたが、東川らしい仕組みとしてどう活かせるかを考え、企業や自治体などと連携し、まちづくりや企業活動に双方が活かせるような仕組みを作りました。この仕組みは慶應義塾大学の先生方に計画していただき、2019年からスタートしました」
塚崎「ふるさと納税の前に始めたのですか?」
菊地「いえ、ふるさと納税の後です。その前にふるさと納税制度として『株主制度』を実施していました。これは個人とのつながりを関係人口として広げる仕組みで、そこで培ったノウハウを企業や団体向けの仕組みとして発展させたのです」
塚崎「なるほど。そして現在はどのくらいの企業が?」
菊地「2019年から5〜6年経ちますが、現在54社まで増えています。東京カメラ部さんももちろん入っていますし、今日ご一緒している梶さんの日本郵便さんも入っています」
塚崎「他にもアマナさん、日本生命さん、キヤノンさんなどすごい企業が並んでいますね」
菊地「はい。写真に限らず様々な分野の企業が参画しています。最近ではセレッソ大阪さんが来年夏に東川でキャンプを行うことになり、ここに参画いただきました」
塚崎「スポーツまで!なんでもありですね」
菊地「そうですね。我々は『共創』という言葉を使っています。企業にとっても町にとっても双方にメリットがある仕組みでなければなりません。一方的なメリットではなく、両方に利益があることが唯一の約束事です」
塚崎「その活動のなかで、東京カメラ部としても日本郵便さん、東川町さんと三者で共同開発プロジェクトを進めてきました。こうしたマルチな繋がりからさまざまなことが生まれているので、ぜひ紹介したいと思います。そこで登場するのが梶さん。改めて自己紹介をお願いします」
梶「改めまして、梶恵理と申します。私は日本郵便の社員ですが、2023年4月から総務省の『地域活性化起業人制度』を利用して東川町に出向しています。同年9月からは慶應義塾大学の政策・メディア研究科に進学し、現在は日本郵便社員・東川町役場職員・大学院生という三つの肩書きで活動しています。加えて、東京の杉並区と北海道東川町の二拠点生活をしていますので、いろいろな顔を持って活動している者です」
塚崎「すごく『いまどき』な感じですね」
菊地「属性が多彩すぎて面白いですね。ここから先が楽しみです」
塚崎「梶さんは杉並区にお住まいなんですよね。そしてフォトコンにも応募されて、東京カメラ部のフォトコンテストに入選されたとか」
梶「そうなんです。私はもともと写真に特別な知識があったわけではないのですが、写真の町・東川町で暮らすようになってから写真がとても身近になりました。そんななかで東京カメラ部さんとも接点を持たせていただき、お話を伺っている時に『杉並でこんなフォトコンテストがあるよ』と教えていただいたんです。私は普段、月の半分以上は東川町に住んでいますが、西荻窪に戻ったときに『地元で写真を撮ってみよう』と思って撮った一枚が、なんと入選してしまいました」
塚崎「やらせと思う方がいるかもしれませんが、カメラ部は幸いにも応募数が非常に多く、ひとりひとりのプロフィールを見て選ぶことはしていません。写真を見て選び、後からプロフィール欄で気づくことがあるくらいです。例えば『梶恵理・日本郵便・東川町』と書いてあれば気づきますが、個人情報を公開する方は少ないので、普通は分からないんですね。選んでみたら梶さんだったと気づくわけですが、最終的には杉並区さんが決定していることなので、大丈夫です。やらせではありません」
梶「なるほど。自信を持っていいということですね」
塚崎「もちろんです」
梶「ありがとうございます」
塚崎「さて、そんな梶さんですが、現在東川町で新しい取り組みをされていると伺いました。ご紹介いただけますか?」
梶「私が東川町で取り組んでいるのは『リビングラボ』という活動です。聞き慣れない方も多いと思いますが、東川町・慶應義塾大学・日本郵便が共同で行っているプロジェクトです。リビングラボとは『暮らしのなかの研究開発所』という意味で、生活に根ざした視点を大切にしながら、地域に必要な事業やサービスはなにかを探っていく取り組みです。企業、住民、町役場、大学の先生方が定期的に集まり、対話を重ねながら地域を豊かにする事業やサービスを一緒に考え、開発しています。具体的な活動のひとつとしては、町の一等地にある東川郵便局を活用しました。夏の写真イベントに合わせて、郵便局舎を写真でラッピングし、町全体を盛り上げる取り組みを行いました。また郵便局の二階ではカレーを食べながら『郵便局にこんな機能があったら面白い』『町にこんなサービスがあったらいいね』といったアイデアを住民と語り合っています。その結果として『東川町をもっとアピールしたい』という声が住民から上がり、日本郵便が行っている全国ネットのラジオ番組『SUNDAY'S POST』に町民の方が出演し、東川町を全国にPRするという活動にもつながりました」
塚崎「町長、どうしてこうした取り組みを始められたんですか?」
菊地「理由は簡単で、梶さんが来たからです」
塚崎「そうだったんですね。人ベースなんですね」
菊地「慶應の先生方からリビングラボの発想をいただき、私自身も郵便局との連携を模索していました。郵便局が町民の居場所として活性化できれば素晴らしいと思っていたところ、梶さんが様々な発想で取り組みを進めてくれています。ちなみに東川郵便局の局長は、私の小中学校時代の先輩なんです。その先輩にお願いしました」
塚崎「こうして取り組みが始まり、そのなかから新しい商品が生まれたんですね」
梶「はい。こちらに『一人米』と書かれているお米がありますが、東川町はお米の町で、東川米がとても美味しいんです。私は日本郵便の社員として地域に来て『自分に何ができるのだろう』と考えたときに、日本郵便のアイデンティティを見つめ直しました。郵便といえば手紙ですが、今の時代の手紙とはなにか。それは『想いを届けること』だと考えました。その想いを形にしたいと考え、東川町が大切にしている東川米を想いと一緒に届けられる仕組みを作ろうとしました。成人式や新社会人になる人に向けて、一合、つまり一人前のお米を『おめでとう』の気持ちと一緒に贈れるようにしたのです。裏に320円分の切手を貼れば、メッセージとともにそのまま郵送できるギフトになります。この商品は東川町とJAさんと一緒に開発しました」
塚崎「これ、ポストに入れられるんですね」
梶「はい、入れられます」
塚崎「素晴らしい商品ですね。そしてさらに第2弾が登場したとか」
梶「はい。『ご当地レターパック』です。井上浩輝さんの写真を使わせていただき、東川町の魅力を表現しました。開発の背景には、写真の町として40年活動を続けてきたということがあります。町民の多くは自分の町を大切にし、良さを伝えたいという思いを持っていますが、それを自然に表現できる人もいれば、そうでない人もいます。誰でも自然に参加できる方法はないかと考えたときに、郵便というインフラが面白いと思いました。レターパックは大変多く流通しており、誰にとっても身近な商品です。そこに東川町の魅力を載せることで、地域を離れた人にも懐かしさを届けたり、町の推し活として活用できると考えました。東京カメラ部さんや井上さんの協力を得て、この商品が完成しました」
井上「このご当地レターパックの話を伺った時、『本当に実現するのだろうか』と思いました。規制もあるなかで、どこまで突破できるのかは全て梶さんにかかっている、という緊張感と期待がありました。ですが少しずつ道が見えてきて、宛名面や裏面に写真を入れる形で実現できたのです。どの写真を選ぶかについては、まず東川はお米の町なので、豊かに実った稲穂の風景は必須でした。そして町民にとって大切なキトウシ森林公園の森を一緒に収めました。さらに、この地域を象徴する動物たちとして、森を守るフクロウ、その下で暮らすモモンガ、そして私の大好きなキタキツネを配置しました。デザインを担当してくれたのは、東京カメラ部10選であり、同じく東川在住の佐藤くんです」
塚崎「町長、こうした取り組みを町として進めるにあたり、ハードルはなかったのですか?」
菊地「町としては全くありませんでした。『ぜひやってほしい』という思いだけです。しかも写真入りのレターパックは初めての取り組みでしたから、いろいろハードルもありました。ただ、ハードルがある方が逆に燃えるんです。『これは絶対に実現しないといけない』と思ったことを覚えています」
塚崎「日本初なんですよね?」
梶「そう、初めてなんです。」
塚崎「自治体などでこの話をすると『え、初なの?』と驚かれるんですが、これまでなかったまったく新しい取り組みなんですよね。
本当にすごいことだと思います。でも、その時に井上さんのような方がいてくださったのは大きかったのでは?」
梶「そうですね。井上さんや東京カメラ部さんと対話するなかで、レターパックに地域の写真を載せることでこんな価値が生まれる、こんな広がりがあると気づかされました。レターパックは社内では『配送の手段』というイメージが強いのですが、こうした付加価値を持たせることで、社内の説得にもつながりました。だからこそ、社内だけでは決して生まれなかった商品だと思います」
塚崎「まさに今年の写真展のテーマ『つながる世界』ですよね。想いを届けることで人と人が繋がる。その方法はいろいろありますが、井上さんの素敵な写真と共に『自分の町はこんなにいい場所なんだ』と届けられるのが郵便なんです」
梶「本当にその通りだと思います。実際に6月に販売を開始したのですが、一か月で売り切れてしまうほどの人気でした。窓口で販売している社員に聞いても、お客様に勧めると全く嫌がられず、『じゃあそれで』と自然に受け入れていただける商品でした。事業者の方も、本州の企業へ地域の魅力をさりげなく伝えたいときなどに活用され、地域の思いに寄り添うツールとしてとても良いプロダクトになったと思います」
塚崎「売り切れてしまったんですよね」
梶「はい。ありがたいことにすぐに完売しました。いま増刷の準備を進めています」
菊池「次は前回の10倍でいっちゃいましょう」
塚崎「発売されたらぜひ購入したいと思うのですが、どこで買えるんですか?」
菊地「現在は東川町内の郵便局と、隣の旭川市内の一部の郵便局で販売しています。ただ、新しい展開として、このご当地レターパックをふるさと納税の返礼品として扱いたいと考えています。そうすれば全国の方にお届けでき、地域への貢献にもつながります。日本郵便は全国に拠点があるため、特定の地域に肩入れしにくい面がありましたが、こうした仕組みならその課題もクリアできると感じています」
塚崎「そして今回、東京カメラ部も井上さんと一緒にこの発表の場に立たせていただきました。さらに、先ほどご紹介した『一人米』も梶さんが企画されたもの。次々と新しいアイデアを生み出されていますね」
お米レター 一人米
梶「ありがとうございます。今後やりたいと思っているのは、日本郵便の『思いを届ける』というコンセプトをさらに商品展開に活かすことです。例えばふるさと納税で5kgや10kgのお米を選んでいただいたときに、この『一人米』を添える。東川米を美味しいと思った方が、大切な誰かに『東川米は美味しいよ』と送ってくださる。そうした“送る連鎖”を作りたいと考えています」
塚崎「町長、素晴らしいアイデアですね」
菊地「本当に素晴らしいと思います」
塚崎「ふるさと納税をご利用の方も多いと思いますが、東川米は本当にお得なんです。我が家はすっかり東川米に切り替えてしまいました。それくらい美味しいんです。定期便もありますよね、町長」
菊地「そうです。毎月少しずつ届く半年間の定期便などもあり、今はそれが一番人気です」
塚崎「昨年はお米が早々に品切れになってしまいましたが、今年はどうですか?」
菊地「昨年は農家さんから仕入れられる量が限られていたため、早い段階で在庫切れになってしまいました。お米不足の影響もあって一時的に供給が厳しかったのですが、今年は十分に農家さんからお米が届いているので大丈夫です」
塚崎「ぜひ皆さん、たくさん注文してください」
菊地「実はこの商品はすべて東川で完結しています。印刷やパッケージングまで町内で行い、ふるさと納税でお届けするお米も収穫から乾燥、精米、袋詰めまで東川町内の施設で完結しています。ですから精米したてのお米をお届けできるのです。昨年から始めました」
塚崎「通常はどこかに集められてから精米されるので、届くころには少し時間が経ってしまうこともありますが、これは違うんですね」
井上「そうです。ほとんどタイムラグがありません」
オクルヒガシカワ 美しいモノたち
塚崎「ということで、ぜひ挑戦いただければと思います。さて、ここから展示についてご紹介します。東川のブースがこの会場の奥にあります。ぜひご覧いただきたいのですが、ここからは「オクルヒガシカワ、美しいモノたち」ということで東川町の風景とふるさと納税返礼品の展示です。東川町はグルメも魅力で、東川米がふるさと納税では人気がありますが、それ以外にも、素敵なモノがたくさんあるんですね。井上さん、今回の展示写真も素敵ですね」
井上「はい。今回展示している四枚の写真のうちのひとつは『東川ペリカン』という新しいフレンチビストロのお店です。地元の食材をふんだんに使った料理はもちろん、窓からの景色も最高で、本当に素敵なお店でした」
東川町に豊かな水をもたらす大雪山旭岳の山頂付近にて
塚崎「こんな美しい景色が楽しめるのですね」
井上「そうです。例えばこちらはいまの時期の旭岳の山頂部分。下に見えるのは『姿見の池』と呼ばれる池です。上には噴煙を上げる生きた山の雰囲気が見えます。ちなみにこの写真はドローンで撮影しましたので、実際に現地で同じ距離感で見られるわけではありません。ただ、『こんな景色があるんだ』と思って歩くのも一つの楽しみ方だと思います」
塚崎「町長、この写真すごいですね」
菊地「先ほど拝見しましたが、本当に素晴らしい写真だと思います」
塚崎「『東川町の山』と言えるってすごく贅沢ですよね」
井上「いいですよね。ちなみにドローンを飛ばす場合、尾根よりこちら側であれば東川町をはじめとした関係各所と調整することで飛ばせます」
晩秋の森のエゾフクロウ
塚崎「そして山だけでなく、美しい森もあります」
井上「はい。こちらは私の家から車で5分ほどの森です。毎年『そろそろ帰ってくるかな』と楽しみにしているのですが、なかなか子育てまではうまくいかず、一羽だけで過ごしていることも多いですね。今年は二羽でいてほしいなと思っています」
塚崎「町長、本当にキトウシの森は素敵な場所ですよね」
菊地「そうですね。いろいろな動物が見られる場所で、写真家の方々もよく撮影に訪れています」
塚崎「車ですぐ行けるのも便利ですよね」
井上「そうですね。私の撮影のモットーは『車から撮れる』『車から5分以内で撮れる』なので、まさにぴったりの場所です」
塚崎「空港からも近いですしね。朝一のAIRDOの飛行機で来て、撮影して、最終便で帰るという方もいるそうで、一時は150〜200人がフクロウを見に集まり、大騒ぎになったこともあったとか」
井上「それくらい気軽に行けるんですよね」
鈴なりのクルミを運ぶエゾリス
塚崎「そしてこちらも素敵な写真です」
井上「一か月ほど前に、青いクルミをたくさん木から降ろしていました。その後どこかに埋めて隠すのですが、クルミを100個埋めたら98個忘れるとも言われています。そのおかげで新しい森が育まれているそうです」
塚崎「この写真はプリントでブースに展示していますので、ぜひご覧ください。そして東川町といえば、この風景ですよね、井上さん」
米の収穫期をむかえて黄金色に染まる東川町
井上「はい。レターパックの裏面に使われた写真もそうですが、これはキトウシ森林公園の展望台の上からドローンで撮ったものです。ただ展望台からも似た景色を見ることができます。特に美しい時期は2回あります。ひとつ目は田んぼに水が入ったばかりのときで、町全体が鏡のようになります。道路を走っていると水の上を走っているような感覚になるほどです。ふたつ目はいまの時期、稲穂が実った豊穣のとき。町が黄色い絨毯に包まれたようになります。先ほどから話題に出ている東川米ですが、旭川空港では私が撮影したキツネの写真入りパッケージも販売されています。ぜひチェックしてください」
塚崎「田んぼに水が張られた時期は、まるでウユニ塩湖のようですよね。東川町は区画整理されているので田んぼが大きく、一つ一つが池のようです。それが一面に広がり、豊穣の時期はナウシカの世界のよう。金色の野を歩いている気分になります。梶さん、住んでみていかがですか?」
梶「本当に住みやすい町だと思います。自然が身近にあるのはもちろんですが、美味しい食べ物があり、こだわりを持って暮らしている方が多い。お腹も心も豊かになりますし、東京にいたときよりも人との出会いが増えるのも魅力だと思います」
塚崎「町全体が平らなので自転車で移動しやすいですよね」
梶「そうですね。ただ旭岳に向かう時は少し上り坂になります」
撮影者 井上浩輝氏
ワインオーベルジュ 東川ペリカン
塚崎「そしてここからはふるさと納税品ですね」
井上「先ほど紹介した『東川ペリカン』さんで食べたトマトがとても美味しかったんです。こんなに美味しいトマトがあるのか、と驚きました。写真を撮る仕事をしていてよかったなと思います。ここはワインオーベルジュなので、ふるさと納税でお食事と宿泊のセットが楽しめるんです」
撮影者 佐藤悠大氏 (東京カメラ部10選2019)
純米吟醸酒 三千櫻酒造
撮影者 佐藤悠大氏 (東京カメラ部10選2019)
東川米 ゆめぴりか・ななつぼし
井上「こちらは同じ東川町に住んで活躍されていて、東京カメラ部10選でもある佐藤さんに撮ってもらったお米と、岐阜から移住してきた三千櫻酒造さんのお酒ですね」
塚崎「いま何度か『佐藤さん』と名前が出ましたが、実は佐藤さんは東京カメラ部10選のおひとり。九州に住んでいたころに東京カメラ部10選に選ばれ、その後『写真の町で暮らしたい』と東川町に地域おこし協力隊として赴任し、いままさに活躍されています。東川町に移住予定とのことです。町長、嬉しいですね」
菊地「昨日その話を聞いたばかりなんです。『佐藤くんが東川に残るよ』と。すごく気になっていたので、本当に嬉しいですね」
塚崎「写真で夢を叶えたいと若者が東川に来て、こうして成功していく。佐藤さん以外にもいらっしゃいますよね、井上さん」
井上「ええ。私の写真事務所に最初にアシスタントして来てくれた清水愛里さんがいます。いまは独立して同じ東川町で写真家として活躍し、企業CMや広告の撮影も手がけています。人生を変えてしまったという罪悪感も少しありますが、独立後も仕事があり、さらにお子さんも生まれて住民がひとり増えた。とても嬉しいことです」
塚崎「町長、なぜ東川町は若者を引き付けるんでしょうか?」
菊地「やっぱり『面白い町』だからだと思います。自然環境が豊かで暮らしやすく、面白い人がいて、その人たちと交流したり、一緒に事業をしたりできる環境がある。町としても後押しをしていますので、気付けば若い人が根付いてくれているんです」
塚崎「住民の半分以上が移住者ですよね」
菊地「そうなんです。この20〜25年で、東川にルーツを持たない方が55〜60%にまで増えました」
塚崎「驚きますよね。本来なら移住者と地元住民の間に軋轢が生まれそうですが……」
菊地「東川は35年かけて人口が約1,500〜1,700人、20%ほど増えました。年間平均で50人程度の増加なので、急激ではなく、気付けば増えていた。だから少しずつ理解し合い、古くからの住民と新しい移住者が混ざり合って新しい動きが生まれる。その背景には『写真』という町の軸があったからこそだと思います」
塚崎「まさに共生社会の答えが東川町にあると感じます」
撮影者 佐藤悠大氏 (東京カメラ部10選2019)
acwアームチェア 東10号工房
菊地「こちらは東10号工房さんが作っている椅子です。こちらも移住者の方が立ち上げたものです。東川家具は非常にデザイン力が優れていて、技術も高い。日本の三大家具、五大家具のひとつと言われるのですが、そのうちの三割は東川の事業者が生産をしています。旭川市は約32万人の都市で東川町は約8,700人。町にとって非常に大きな割合だと想像ができます。約40事業所がありまして、様々な家具が生産されています」
温浴型複合リゾート キトウシの森きとろん
東川暮らし体験館
塚崎「そして町長、こちらは?」
菊地「これらの施設は体験型のふるさと納税の返礼品なんですね。キトウシの森にある『きとろん』はお風呂やサウナが人気の施設で、レストランも併設されています。新築から二年ほどですが、ここで使える入浴券などを返礼品として提供しています。また、『東川暮らし体験館』という町営のゲストハウスでの宿泊と組み合わせ、体験とセットで楽しんでいただけるようにしています」
塚崎「梶さん、行かれたことはありますか?」
梶「もちろんです。お湯が本当に気持ちいいですし、東川町の田んぼや山並みを見下ろせる絶景が広がっていて、とても開放的です。こんなお風呂はなかなかないと思います」
塚崎「住民の方も通ってるんですか?」
梶「はい。お湯も景色も素晴らしいので、皆さんよく通っています」
井上「僕も時々行きます。寒い日にはやっぱり行きたくなりますね。家の中でちょっととげとげしい雰囲気になった時も、『今日は温泉行こうか』と言えば丸く収まります。別々の時間を過ごせますからね」
塚崎「私も何度か利用しましたが、とても快適ですね。サウナもあって、外風呂からの眺めも最高です。二階にくつろげる場所があって、一階でできる食事もおいしいですよね、町長」
菊地「そうなんです。とても人気で、お昼には売り切れてしまうことも多いんです。ご迷惑をおかけしているので改善したいのですが……」
塚崎「確かに12時を過ぎると売り切れもありますよね。早めに行った方がよさそうです」
菊池「もし食べられなくても町内にはおしゃれな飲食店がたくさんありますので、そちらに出かけてみて下さい。」
塚崎「ちなみに、梶さんや井上さんは『暮らし体験館』に泊まったことは……?」
梶「実はあります。出向で東川に来た際、空き物件がなくて。東川は人気で、移住したくても賃貸が空いていないという状態なんですね。町からこの体験館を二か月間も提供していただきました。その間に住む場所を探したんです。部屋は三部屋あって、すべて『東川家具』で揃えられていて、とても贅沢でした」
塚崎「調理器具や家具が揃っているので、すぐ生活できますよね。洗剤もあるとか」
梶「はい。洗濯機もあって、本当に暮らすように滞在できました」
菊地「はい。北海道が持っていた職員住宅を町が民間を通して取得・改修したものです。外観は団地風ですが、なかは驚くほど快適です。お客さまを何も言わずにお連れすると最初は外観を見て『えっ?』という顔をされるのですが、一歩入ると皆さん感動していただけますね」
塚崎「ぜひふるさと納税を通して体験していただきたいですね。それでは最後に、本日のテーマ『オクルヒガシカワ』について伺いたいと思います。『オクル』には色々な意味が含まれています。まず梶さん、お願いします」
梶「私は日本郵便の社員ですので、『何を贈るか』というより『贈る仕掛けをどう作るか』に力を入れています。例えばレターパックの活用や、ふるさと納税でお米を贈る仕組みづくりなど。贈ることで町の魅力を広げる仕掛けを、これからも増やしていきたいと思います」
塚崎「ありがとうございました」
井上「私もこのレターパックを購入して、請求書などを送るときに使っています。また、大学の講義で東川の魅力を学生に伝えたところ、今年の夏には卒業生たちが合宿で訪れて、三日三晩彼らに付き合って一緒に写真を撮り歩くことができました。こうして『楽しさを送る』ことができたのはとても良い経験でした」
塚崎「ありがとうございます。最後に町長、お願いいたします」
菊地「『オクル』という言葉には多様な意味があります。東川町では写真の町としての活動をはじめ、さまざまな取り組みを通じて、町の魅力や温かさを『贈る』ことを大切にしています。関係人口や応援してくださる方々が増えていることも大きいと思います。住民はもちろんですが、東川町に関わってくださった方々が東京や全国で町のことを伝えてくださっています。いわば伝書鳩のように広めてくださることで、新しい方々がまた東川町を訪れ、そこからさらに繋がりが広がっていく。この循環こそが、町が大切にしていることだと思います。これからも、この『オクル』という言葉に込められた想いを大事にしながら、東川町の魅力を発信していきたい。そして全国のさまざまな地域と一緒に取り組みを進めることで、互いに楽しくなったり、新しい可能性を広げたりしながら、東川町自身もさらに良くなっていく。そんな循環を作っていきたいと思っています」
塚崎「町長のお話を伺っていると、『共生社会』の答えが東川町にあるのではないかと感じます。決してひとり勝ちを目指すのではなく、皆で分かち合い、繋がり合い、その想いを次世代へと受け継いでいく。本当に大好きな町です。これからもぜひ頑張っていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました」
トークショーの最後には井上浩輝さんの2025年度のイヤープレート、2枚1セットのプリントをかけたじゃんけん大会がおこなわれました。
