トークショーレポート
Talk Show Report
2024年9月20日(金)~9月23日(月・祝)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2024写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。
9月21日(土)に行われたニコンイメージングジャパンのトークショーでは、東京カメラ部10選の石田卓士氏、野瀬大樹氏、Koichi氏、梶原憲之氏にご登壇いただき、「Z6IIIが写す表現の進化~Nikon Creatorsが描く『自分らしさ』~」というテーマでお話しいただきました。
石田「本日は野瀬大樹さん、Koichiさん、梶原憲之さんをお招きし、7月に発売されたばかりのZ6IIIで撮影した皆さんの素晴らしい作例を紹介させていただきながら、感想などを語っていきたいと思います。まず最初に簡単に自己紹介から始めたいと思います。私は普段、Z8とZ9を使いながら全国の風景写真を撮影しています。地元の棚田の美しさに惹かれて風景写真を始めたのがきっかけです。Z6IIIも使わせていただいたので私の写真もご紹介させていただきながら進めたいと思います。よろしくお願いいたします。では野瀬さんお願いします」
野瀬「フォトグラファーの野瀬大樹です。Z6IIIの新機能、フレキシブルカラーピクチャーコントロールのスペシャルコンテンツを今回担当させていただきました。昔D5300 を使っており、今回は久しぶりにニコンを触らせていただきました。今日はよろしくお願いします」
石田「よろしくお願いします。続いてKoichiさん」
Koichi「はい、こんにちは。フォトグラファーのKoichiです。普段は風景に人物を合わせて世界観を作り上げる風景ポートレートを撮っています。日本の四季を撮影しており、今の時期だと花火を追いかけて日本中をひたすらかけ回っていました。自分のブースを見ていただくと、大きいカメラが置いてあります。昔のフィルムカメラです。そういったカメラの文化や歴史、技術を次の世代に引き継いでいくような活動も同時にさせていただいています」
石田「ありがとうございます。本来なら私たちがやらなくてはならないような後世に伝える活動を、若いながらすでに始めているんですよね。非常に知識も豊富なので、色々なお話が聞けると思います。では梶原さん、お願いします」
梶原「梶原と申します。岡山から来ました。いまはZ8を使っていますが、昔はZ6を使っていたので、Z6とZ6IIIとの違いをお話しできればと思っています。よろしくお願いします」
石田「このなかで唯一Z6を使っていた方です。進化の度合いなども語っていただければと思います。よろしくお願いします。それでは普段撮影している作品をまずご紹介いただきたいと思います」
D5300 + AF-S NIKKOR 28mm f/1.8 G
野瀬「仕事ではジャンルを問わず撮影しているのですが、自分の好きな作品は、こういった風景です。風景×人物だったりとか、歴史や文化を感じるシーンや行事が好きなので、そういったものを撮影しています」
石田「この写真はD5300で撮っているんですね」
野瀬「はい。2016 年にD5300で撮った雲海富士山です」
石田「ニコンユーザーにまた戻ってきてくださいね笑 それではKoichiさん、よろしくお願いします」
Z7II + NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Koichi「普段は衣装を作り込んだり、小道具を使って世界観を作り上げていくスタイルで撮影をしています。こちらは日本最大の花火大会、大曲の花火大会です。花火大会の会場のすぐ真横にある病院の屋上を院長さんに貸してもらって撮影をしています。この病院には重い病気の方も入院しており、窓の外で花火の音がしていても窓の外の景色を見ることができない方々が多いなか、院長さんがその方々に花火大会の写真を見せてあげたいという思いを持っていました。こちらは実際に病院に飾っていただいている写真です」
Koichi「小さい提灯が手前に4つ並んでいて、その手前は鏡です。100円ショップで買った大きめの鏡を3つ敷き詰めて、その後ろに提灯を並べて遠近法を使っています」
石田「大きい提灯を置いているのではなくて、鏡と提灯が手前にあって遠近法で撮っているんですね」
Koichi「提灯は本当に小さいんです。手に持てるもので、豆電球が入っています」
石田「さすがですね。撮るまでのストーリーがとても素敵で、すごくいい写真だと思います。次の写真もお願いします」
Z9 + NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Koichi「地元である岐阜県の飛騨高山でNIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaの作例を撮影しました。
手に持っている笠にもこだわりがあって、線のような柄が入っていると思うんですね。蝉笠と呼ばれるもので、地元のおじさんたちが手で編んでいるもので、この地域の特産品なんです。背中に背負っているカゴは白川郷でおばあちゃんたちが作ったものです。白川郷でそれを買って、岐阜市の職人さんが作った和傘を背中にさしています。」
石田「そういう深い意味があったんですね」
Koichi「地域のものを備えて作り込んだ作品です」
石田「すごく地元愛が詰まった一枚ですね。また雪が降っているところがいいですね」
Koichi「直前まで青空だったんですけど、5分くらいで大雪になりました」
石田「Z6IIIは結構濡れても大丈夫で、頑丈ですよね。ありがとうございます。では、梶原さんよろしくお願いします」
Z6III + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
梶原「私は風景写真の中にポツンと人を入れる写真を撮っています。写っているのは私の娘です。ジャンル的に言えば風景ポートレートになるかなと思っています。どちらかというと風景写真の方に比重を置いています」
石田「海外みたいな場所ですね」
梶原「岡山の王子が岳という場所なのですが、『岡山でどこに行けばいい?』と聞かれたらおすすめしている場所です」
石田「素晴らしいロケーションですね。梶原さんのInstagramをフォローされている方はわかると思うのですが、撮影の様子が写っていたりして、お子さんが楽しそうに走っていたりする場面が見られて、本当に家族で写真を楽しんでることが伝わってきます。その数日後にこういうバチッとした写真が上がってくるんですよね。いつも拝見しています」
Z6III + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
梶原「ありがとうございます。次の写真は北海道の美瑛の写真です。北海道の存在感を出しつつ、空がきれいだったので撮りました。私は空を広く画面に入れて撮ることが多いので、雲があるほどテンションが上がりますね。広角レンズを使うことが多いです。こちらも14-24mmF2.8を使用していて、だいたいこのレンズを使っています」
石田「開放感と北海道らしさが詰まった一枚ですよね。お子さんも大人になってこの写真を見たらすごく嬉しいと思います」
Z6III + NIKKOR Z 17-28mm f/2.8
石田「私の作品も紹介させていただきます。地元の棚田を撮るのをライフワークにしています。新潟は花火が盛んなので、長岡花火などを人と違う視点の花火を撮っています」
石田「それでは続きまして、Z6IIIのどんなところに期待したかというところと、実際使用してみての感想を伺いたいと思います。野瀬さんからお願いします」
Z6III + NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR
野瀬「写真を撮る上で大事な瞬間は逃したくないと思うので、オートフォーカスの性能だったり、暗所での高速連写といった機能に注目しました。こちらの写真は新潟県の出雲崎というレトロな街並みです。夕方で少し暗めの時間帯なのですが、路地の真ん中を子どもが三輪車で横断しています。いきなりの瞬間にもオートフォーカスがしっかり食いついてくれました。誰かが出てきてもいいように常にアンテナを張っているので撮れた一枚なのですが、やっぱりZ6IIIの機能のおかげです。全くぶれていないので、ある程度シャッタースピードも上げて、その分感度も上げて、でもノイズは少ないという状況ですね」
Z6III + NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
野瀬「福島から新潟に帰ってくるばんえつ物語というSLです。煙のディテールをしっかり出したかったのでシャッタースピードを上げていて、周りが少し暗い状態でも問題なく撮影ができました」
石田「シャッタースピードも感度も上げて、SLが黒潰れしそうなところだけれども現像で上げればちゃんときれいにディテールが残っていたということですね。続きまして、Koichiさんお願いします」
Z6III + NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z6III + NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Koichi「大曲の花火大会で今年撮影した写真です。暗所におけるAF性能がすごく期待したところで、この真っ暗な状況でオートフォーカスがバチッと決まってくれて、常に外さずにしっかり被写体を追いかけてくれるかというところに注目しました。私の場合、逆光で撮ることが多いんです。被写体がシルエットになっているところにピントを合わせ続けなければならない状況下で、オートフォーカスがどれだけ食いついてくれるかが大事になってきます。後ろでたくさん花火が上がっている状態で、花火の玉の方にピントが行きがちだと思うのですが、全くズレることなくしっかりと被写体にピントが合っている状態で撮影ができました」
石田「動画も撮影していただいたということで。手持ち撮影でしょうか?」
Koichi「今回の作例はすべて手持ちで撮影しています。背面液晶を横に出した状態です。手ブレ補正をオンにしているので全くブレていないですよね。AFCの3Dトラッキングで最初は右側の小さいランタンにピントを合わせておくんです。モデルさんが歩いてきて、画角に入った瞬間に浴衣をタッチする。そうするとそこからひたすら浴衣を追いかけ続けてくれるんです。NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaで撮影をしています」
石田「NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaは花火の丸ボケが全部きれいな丸ですよね。画角の端がレモン形になってしまうレンズもあるのですが、こちらはまん丸です」
Koichi「周辺まできれいでした。暗いところでのAF性能は、写真においても動画においても一番驚いたところでした」
石田「ありがとうございます。続いてこちら」
Z6III + NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Koichi「山形県で撮影した写真です。Z6IIIはお借りしていたのでリスキーな撮影は避けたかったのですが、目の前に絶景があってどうしても撮りたくて、かなりローアングルで攻めています。水準器を背面液晶に出すことができるので、それを使って画角を決めました。この場所に着いたときには他の写真家がたくさんいたのですが、そのあとこの奥の撮影スポットに全員が移動してしまったので、私たちだけでじっくり撮影できました」
石田「赤い差し色がいいですね。小物がいつもすごいですね。毎回小物が変わっていていつも感心しています」
Z6III + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 S
Koichi「今度はハイアングルでの撮影ですね。脚立の上に乗って、さらに手を上げて撮影をしています。この状態でファインダーを覗くことはできないので、背面液晶を回転させて撮影しています。あとはAFを半押しすればモデルさんにピントが行ったので、そのまま連写しました」
石田「Z8もZ9もチルトが使えますが、やっぱりZ6IIIは自由度と素早さが違います。あとは軽いので、ハイアングルもローアングルも片手で撮影できるのが本当に強いですね。ありがとうございました。では梶原さんお願いします」
Z6III + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
梶原「Z6IIIが発売されたときに性能が気になったのですが、値段にびっくりして。でも実際使ってみたらすごくよくて。いい写真が撮りたいのでZ8とZ6IIIの2台体制だったのですが、途中からZ6IIIばかり使ってしまうほどしっくりきました」
石田「機動性重視でZ6IIIというのもありですよね。確かにもう少しお金を出せばZ8ではあるのですが、このZ8にも迫る性能には驚きますよね」
Z6III + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
梶原「続いては先ほどの北海道の別アングルです。普段道をセンターにすることが多いのですが、空を見たら青い鳥みたいに見えて。少し斜めにして子どもが見上げる構図にしました。北海道ではレンタカーを使っており脚立を使うことができなかったので、背面液晶を回転させて上から撮って、少しでも奥の方の景色を入れようとしました」
石田「軽いのでハイアングルは撮りやすいですよね」
Z6III + NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
石田「続いて私の作品も発表させていただきます。紫陽花なのですが結構背が高くて、こちらもハイアングルで撮影しています。普段はZ9にNIKKOR Z 50mm f/1.2 Sと組み合わせてよく使うのですが、重さを調べたら約2,400gありました。このZ6IIIと新発売のNIKKOR Z 50mm f/1.4の組み合わせは約1,180gしかなくて。ほぼ倍違うんですね。なので上にあげたときに軽いだけでも安定するし、その上で手ブレ補正もかなり強力です。実はこの写真はシャッタースピードが1/3秒ですが、三脚なしで全くブレずに撮れています」
Z6III + NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
石田「現像前はこちらです。空の明るさをベースにして露出を決めていますが、現像でアンダーを持ち上げても全くノイズもないし、きれいに上がってきます。使い勝手がよくてすごいカメラだなと思っています」
Z6III + NIKKOR Z 17-28mm f/2.8
石田「今度はローアングルです。シャッタースピードは1/10秒で、ISO3200まで上げていますが全くノイズを感じない写りです。暗所やハイアングル、ローアングルなど厳しい条件でも重宝するカメラだなと思います」
石田「続いて、Z6IIIで想像を超えた表現ができたと感じたことについて語っていただきたいと思います。野瀬さんからよろしくお願いします」
野瀬「Z6IIIはEVFがきれいだと伺っていました。覗いた瞬間は本当に驚きました。きれいな映像を見ているような感覚に陥りました。実際Z6IIIのEVFを試したことがある方はいらっしゃいますか?」
石田「あ、意外と少ないですね。私たちこの写真展の期間中Z6IIIを持ち歩いてますので、覗いてみたい方がいればお気軽に声をかけてください。普段Z8、Z9を使っていてもびっくりするくらい輝度が高くて。EVFで見た感覚で露出を合わせて撮影すると、取り込んだときに結構アンダーだったりすることがあったりして、ヒストグラムを見ながらやらないと、逆にこの輝度に慣れちゃうと大変だと思います。ぜひ体験してみてほしいです」
Z6III + NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
野瀬「昼もきれいなんですけど、夜もすごく撮りやすいんです。この写真は私の地元の青龍祭という雨乞いのお祭りです。暗所での撮影なのですが、炎のディテールをしっかり出したいので、シャッタースピードをかなり上げています。ですが、ノイズが全然出ない。全く問題なく撮影ができて素晴らしいと感じました。あと、今回撮影した写真はすべて三脚を使用していないんです」
石田「私も三脚なしですべて撮っていました」
Z6III + NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
野瀬「吉野山の千本桜の写真です。土砂降りの雨のなか10時間耐えてやっと晴れてきて、山霧が立ち上がってきたときにやっと撮れた写真です。この写真はフレキシブルカラーピクチャーコントロールのレシピを使って現像しました」
石田「フレキシブルカラーピクチャーコントロールはZ6IIIから搭載された機能です。いままでもピクチャーコントロールで自分なりの調整をして記録させることができたのですが、今回はNX Studioを使ってかなり詳細に自分の好きな色合いだったり、明るさだったりを調整できる機能です。野瀬さんのこのレシピの名前はなんでしたっけ?」
野瀬「モイスチャーグリーンという名前をつけました」
石田「これはホームページ上で会員登録すると自由にダウンロードでき、同じレシピを使えるようになっています」
Z6III + NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
野瀬「この写真もモイスチャーグリーンを使い、少しだけ手を加えたものになります。当然その場でカメラでも色合いが確認できるので、撮っているときも自分が作成した色を目の前の景色にあてることができます。写真家はやはり色が大事だと思っていて、写真の色 = 写真家だと思っています。完成のイメージをしながら撮影できるのはメリットですよね」
Z6III + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
石田「続いて私の作例です。岡山の倉敷に行ったときに撮った写真で、これもフレキシブルカラーピクチャーコントロールを使ったものがこちらです。私の場合は色合いをあまり変えていなくて、シャドウを上げるようなレシピです。自分なりにシャドウの上げ度合いを変えてレシピを作って、その場であてています。現像でシャドウを上げるよりも、その場でシャドウが上がった画像が確認できるし、こういった使い方もできてすごくいいと思ってます」
Koichi「私も使ってみたんですけど、シャドウを上げる、ハイライトを下げるって皆さんやると思うんですね。この写真も明るいところと暗いところの輝度差が大きいですよね。現像でハイライトを抑えたとき、シャドウを持ち上げたときの感覚が、ファインダーで覗いたときにその場で確認できます。自分がレタッチをしたときの完成系や雰囲気を先にイメージできるので、かなり便利な機能だと思います」
石田「ちょっと補正を加えるだけで作品として出せますよね」
Z6III + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
Koichi「こちらの写真は、日の出前から朝焼けにかけて撮影をしました。千葉県の九十九里浜です。よく作品を撮りに行く大好きなスポットです。波がきて引いたあとになかなか次の波が来ないので、しばらくリフレクションの状態で撮影ができるんですね。今回はやっぱりAF性能に期待していた部分もあり、空の色、輝度が移り変わっていくこの時間を、時間ごとに全く違った感じで撮影をしていきました。あくまでもこのシーンにおいてもモデルさんがメインなので、そこにピントを合わせ続けたいという前提で写真を撮っています。手に持っている花火や提灯など、輝度差がある小道具を使いつつ、どれくらいAFが追いかけ続けてくれるかを試しました。このときはまだ朝の4時半で太陽が昇ってくる全然前なので、目視だとどこにモデルさんがいるかもわからないくらいの暗さでした。でも半押しするとちゃんとピントが合って、びっくりしましたね」
Z6III + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
Koichi「そこから15分後くらいかな。どんどん空に色が入ってきて、まさに大きな輝度差が生まれてくる時間帯です。背景の雲に色が入ってきて、どんどん明るくなっていきます。このシーンでもモデルさんは目視で見るとほとんど見えないくらい暗いところにいます。普通こういうシーンでオートフォーカスを効かせると、後ろの輝度が高いところにピントが行きがちですよね。そのなかで自分が狙いたいところにピントを合わせ続けてくれことに驚きました。私が撮っている作品群の8〜9割がこのレンズ、NIKKOR Z 50mm f/1.2 Sです。色々なところで使いすぎてボロボロなのですが。このレンズはF1.2の開放で、この距離感で撮ったときの描写がもう最高で。モデルさんより後ろに見えている背景のディテールや立体感を損なわずに、でもモデルさんにカチッとピントが合って浮かび上がって見える。私のなかでは一番気持ちいい瞬間です。これもバリアングルを使って水面ギリギリです。モデルさんもずぶ濡れで、自分もサンダルで短パンでした。写り込みを狙ってしゃがんで撮りました」
Z6III + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
Koichi「さらにそこから10〜15分が経過しているんですけれど、ここまで来ると空がものすごい明るさです。こうなったときは自分は空の露光に合わせてシャッターを切るので、空が飛ばないようにアンダーめに撮影をすることが多いです。そうするとオートフォーカスを合わせるタイミングでは、モデルさんは真っ黒になっている状態なんですね。オートフォーカスを効かせよう思うと、普通後ろに持ってかれるんです。でもこのシーンでも大丈夫でした。今回の作例は色々な角度から撮影をしているのですが、一度もピントが後ろに持っていかれることがなかったので、そこは自分が期待していた以上に性能がすごかったですね」
石田「ちなみに日中、逆光のときにスターライトビューをオンにすると、シャドウを上げるからモデルさんが見えるんですよ。名前の通り夜景を見やすくするモードなんですけど、日中でも逆光の部分が見えやすくなります。意外とポートレートの方にもその機能はおすすめですね。ありがとうございました。では梶原さんお願いします」
Z6III + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
梶原「北海道のひまわりです。フレキシブルカラーピクチャーコントロールを使用して撮りました。
自分の場合はできるだけ見た目に近い色合いを作りました。設定次第ではフィルム調にできたりダークな雰囲気にもできます。最後にレタッチで明るさだけ調整して、というのもファインダーがきれいに見えすぎて、実際の見ている画面と、写真を撮り込んだときの誤差が少し出るからです」
石田「先ほどはモイスチャーグリーンとかっこいい名前がついていましたが、こちらは?」
梶原「うーん、思いつかないんですけど、ザ・シンプルで」
石田「自分の中ではシンプルな仕上げということですね」
梶原「そうですね。見た目に近い」
石田「自分の好きな名前で登録できるので、ぜひぜひ活用してほしい機能ですね」
Z6III + NIKKOR Z 35mm f/1.4
梶原「続いても北海道です。白飛びや黒潰れの恐れがある明暗差が強いシーンでもしっかり捉えてくれて、いい色を出してくれます。こちらはNIKKOR Z 35mm f/1.4の開放で撮っています。ピントが迷いがちになると思うのですが、これもしっかりと合ってくれました」
石田「確かに木がたくさんあるなかで、どの木に合うのか不安があるけど、バッチリ前ボケも後ろボケもきれいな一枚ですね。続きまして、こちら」
Z6III + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
梶原「雲が動いている状況で、いいタイミングで撮りたいし、でもしっかりセンターも合わせたいんですよね。そのときに三脚を使いますね。場所は長野県の木崎湖です。Z6IIIですごく思ったのがファインダーの見え方がきれい。この写真のモデルは、実は娘じゃなくて奥さんなんですね。奥さんは普段Z7を使っていて、ファインダーを見比べてすごく感動していました。初めてZシリーズのファインダーを覗いたときも感動したのですが、それでもさらに感動しましたね」
Z6III + NIKKOR Z 70-180mm f/2.8
Z6III + NIKKOR Z 70-180mm f/2.8
石田「続いて私も写真を紹介させていただきます。通ってる棚田です。NIKKOR Z 70-180mm f/2.8というSラインではないレンズなのですが、どちらも180mmでどちらも開放で、左の写真は普通に構えて遠くを撮っています。右の写真は足元の草にフォーカスを当てて撮っており、全く移動していないんですね。その場で上から撮るか下から撮るか、どちらにフォーカスを合わせるかという写真です。三脚を使わないとこういった下からのアングルという発想が生まれます。三脚を否定しいてるわけではなくて、Z6IIIのような軽い機材でアングルを探りやすい環境になると、構図の自由度が上がり、表現の幅が広がると感じています」
Z6III + NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S
石田「地元のアルビレックスの試合です。プリキャプチャーという機能を使っていて、連射でシャッターボタンを押す1秒前からすでに記録が始まっているという機能です。例えばシュートのタイミングでシャッター切っても実際に残っている画像は振りかぶっているところからなんですね」
野瀬「これはすごい機能ですよね」
石田「そろそろ時間も迫ってきましたので、今後の表現についてどんなことを考えているかお聞きしたいと思います」
野瀬「Z6IIIのAIのさらなる解析や、フレキシブルカラーピクチャーコントロールのようなリアルタイムの画像処理進化に期待したいなと思っています。撮影の段階ですべて画を完成させられると、表現者としての作品のクオリティを高められるし、私たちフォトグラファーにとってはとても魅力的なことだと思います。そこの進化はお仕事の品質やスピードにも関わるので大事だと感じます」
石田「お仕事をされてる方にとって、現場で完成できるというのはかなり魅力ですよね。ありがとうございます。Koichiさんはいかがでしょうか」
Koichi「作例で白川郷の写真があったと思うのですが、ああいった雪や雨がすごい勢いで降ってくるような環境というのは、オートフォーカスやカメラの性能がどれだけ進化していくかというところで撮れる画のクオリティが変わってくると思うんです。ロケーション重視で撮影をする場合、天気が自分の思い通りにいかない場面も多いので、自分の限界をカメラが補ってくれるということは期待をしている部分です。これからさらにカメラが進化していくのが楽しみですね」
石田「期待が高まりますね。これからも作品を楽しみにしています。梶原さんはいかがでしょうか」
梶原「カメラの性能がいい=大きいカメラというイメージがあると思います。そのイメージを変えていく先駆けになるカメラだと思っています。登山をする際にもこの軽量さは大きな武器になると感じています。画質や出てくる画も妥協した感じがまったくないんですよね」
石田「私は普段Z9を使っていて、もちろん画質に十分満足しているのですが、Z6IIIはすごく軽くて、かつ画質も素晴らしいんですね。特にSNSにアップする写真、スマホの画面で見る程度だったらまったく問題がない。フラッグシップ機とほぼ同じ機能が入っているので、手軽にフラッグシップ並みの高機能が使えるというところで、みんながいい写真を撮りやすくなってきますよね。写真表現の底上げをしてくれるカメラだと思います。みんなの表現力が上がっていくことに期待があります。今後はこの軽くて撮り回しがしやすいカメラを使って流し撮りに挑戦したいですね。あとは暗所での性能がすごくいいので、夜のスナップも撮ってみたいなと思います。皆さんは今後どんな写真が撮りたいなど具体的なイメージはありますか?」
野瀬「自然や動物の瞬間を撮るのが好きなので、そこを追求していきたいと思います。あとは暗所に強いので夜のストリートスナップにも挑戦してみたいです」
石田「ありがとうございます。Koichiさんはどうですか?」
Koichi「日本って四季がすごく美しいので、これから秋も始まりますし、今までの作風と大きくは変わらずに撮っていきたいと思います。あとはもっと色々なご当地ものの小道具にこだわって、それがゆくゆく地方創生につながっていったらいいなと思います。もっと日本の良さを海外に伝えていくことにも力を入れたいです」
石田「梶原さんは、今後どこに行きたいなど旅行の予定はあるんですか?」
梶原「東北行ったことないので行きたいですね」
石田「ありがとうございます。時間も迫ってきましたので、最後に皆さんから一言ずつお願いします」
野瀬「私は自分の感性を信じて表現するということを大事にしています。有名な方の撮り方が絶対に正しいとか、こうしなきゃいけないということはないと思っています。皆さんひとりひとり与えられた感性を信じてください。感性を信じてやるから楽しいですし、まだ見たことがない素敵な作品が生まれてくると思っています。このZ6IIIはそういった表現の可能性を広げてくれるカメラだと思います。写真だけではなく動画の性能も優れているので、私たちのビジョンをより正確に形にしてくれると思っています。このカメラを通じて自分だけの視点やスタイルをより深く追求し続けていきたいですし、皆さんもそうしていただけたらもっと写真が楽しくなると思います。本日はありがとうございました」
Koichi「Z6IIIもそうですし、今のカメラって撮れないものはないと思っています。私一番最初は野鳥を撮っていたんです。1本目に買ったレンズが超望遠レンズ。カワセミを追いかけていました。そのなかで色々な出会いがあって、色々な写真仲間と出会っていって、『こんな写真の撮り方もあるんだな』と様々な表現方法に出会っていきました。そんななかで自分の好きな作風、撮りたい作風に変わっていきました。ここにいる方々も、展示している作品も、たくさんあります。それを見て刺激を得て、本当に自分が撮りたいもの、好きなものをだんだん見つけていっていただけたら面白いと思いますし、それがきっかけで多くの方がひとつの場所に集まっているわけなので、カメラで作られた縁を大事にして、次の自分の作品に繋げていっていただけたらと思います。ありがとうございました」
梶原「私はD3100からカメラを始めました。そのときはちょっとでもISOを上げるとノイズが出ていましたが、Z6IIIはISOを上げても全然きれいに撮れるんですね。表現の自由が広がったというのはすごく大きいと思います。カメラが良くなると写真が上手い方も増えてくるので、それに負けないように頑張っていきたいと思います。ありがとうございました」
石田「いい画が撮れるということもありますし、使いやすいということはシャッターチャンスが増えるので、いい作品が生まれる頻度も上がるし、チャンスも上がると思っております。ぜひ手にして使っていただきたいカメラです。これは他メーカーのユーザーもそうですけど、今Z8やZ9を使っている方も、もしサブ機を考えている方はこれほど優秀なサブ機はないと思いますので、ぜひ触っていただきたいと思います。今ニコンがミラーレスのモニターキャンペーンというのを行なっています。どなたでも応募できまして、無料で体験ができます。ニコンユーザーじゃなくてもOKです。インスタグラムの指定のハッシュタグをつけて投稿していただければ応募できます。参加された方には、上田晃司先生をお招きしての無料のオンライン講習会もありますので、ぜひ応募してみてください(※現在は募集を終了しております)では以上を持ちましてトークショーを終了したいと思います。ご清聴いただきありがとうございました」
登壇者プロフィール
Speaker Profile
石田卓士
新潟県上越市在住。勤務医として働く傍ら花火や自然風景を撮影している。その土地に対する想いと独自性を大切にしている。
野瀬大樹
独学で培った写真編集技術や撮影スタイルを武器に、⼤⼿企業から観光省や広告までの撮影を、国内外かつ幅広いジャンルで活動中。
Koichi
岐阜県高山市出身のフォトグラファー。心に響く写真をコンセプトに日本中の四季を切り取る。フィルムカメラを使って写真の楽しさを伝える活動もしている。
梶原憲之
岡山県在住 子どもの日常的な写真を撮る傍ら風景写真を撮り始め写真の魅力に惹かれる。現在は風景ポートレートという撮影スタイルで活動している。