トークショーレポート

Talk Show Report

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

2024年9月20日(金)~9月23日(月・祝)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2024写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。

9月21日(土)に行われた美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)のトークショーでは、美瑛町長 角和浩幸氏、特定非営利活動法人 美瑛町写真映像協会 副会長 菊地晴夫氏にご登壇いただき、「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」というテーマでお話しいただきました。

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

塚崎「みなさんこんにちは。東京カメラ部代表の塚崎と申します。本日はよろしくお願いいたします。そして本日は特別なお二人をお迎えしております。まずお一人は菊地晴夫先生です。そしてもうお一人は北海道美瑛町長の角和浩幸さんです。菊地先生を簡単にご紹介させていただきます。山形県のご出身で、いま美瑛町にお住まいになられてもう30年になるそうです」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

菊地「その前にも10年ほど通っていますので、美瑛町に関わってもう40年になります」

塚崎「町長も美瑛に移住されたんですよね」

角和「はい、私も移住して来年で20年になります。私の実家は東横沿線の東白楽駅で、写真展の会場でもある渋谷は常に生活圏でした。たくさん思い出もあります。でも変わってしまったなと思うところもたくさんありますね」

塚崎「町長は京都に行かれて、それから農家として美瑛町に移住されたそうですね」

角和「出身は横浜で、大学から京都に行きました。京都で新聞記者の仕事をしていまして、新聞記者ではなく農業をやらねば、と思いたち、新規就農で美瑛町へ行きました。いまも農業を営んでおります」

塚崎「農業を営みながら町議になられて町長になったんですよね」

角和「そうですね。地域の方々も応援してくれて、今のこの職に就いております」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

塚崎「ということで今回はゲストがお二人とも移住者ということですね。では菊地先生の作品を拝見しながらお話を伺っていきたいと思います。まずはこちらの作品。これはなんでしょうか?」

菊地「かなとこ雲の写真ですね。私も知らなかったのですが、鍛冶屋さんが鉄を叩くときに下に敷く台を金床というらしいんですよ。金床は上の方が広がっていて、その上で刀を叩いて細くする。それに似ているからかなとこ雲というらしいんです。美瑛町で撮影したものです。巨大な入道雲はたくさん見たことはありますが、このかなとこ雲を撮ったのは40年間通っていて初めてです」

角和「私もあまり目にしたことがありません。色々な形の大きい雲はよく出る町ですけれども、このようにはっきりとした見事なかなとこ雲 は見たことがありません」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

塚崎「こんな絶景が見られるんですね。こちらはプリントでも展示されていますので、ぜひご覧いただければと思います。そして次の作品です」

菊地「作品をポストカードにしたものをお配りしています。スタッフの方が配っておりますので、みなさんぜひ持ち帰ってください」

塚崎「見事な夕焼けですね」

菊地「風景写真を撮るんだったら、一度は夕焼けを撮ってみたいですよね。美瑛町は気象の変化が激しくて、夕焼け朝焼けのメッカと言っても過言ではないと思います。下の方に小さな並木があるんですよね。だから空全体が真っ赤なんですよ。通常ですと西の空が少し焼けるくらいなのですが、西から東まで真っ赤になるということもあるんですよね」

塚崎「町長は農家さんとしてこういう景色を見ていたんですか?」

角和「一日の仕事終わりにこんなにきれいな夕焼けが出たら癒されますよね」

塚崎「ここで働いていて良かったな、という思いですよね。農家として働こうと思ったときに、こういう景観に憧れたんでしょうか」

角和「後ほどまた先生からお話があると思いますが、丘の景観が美瑛の特徴のひとつでもあります。その景観を作っているのは農家や生産者の営みあってのことです。畑がきれいに見える丘、そのなかで自分も農家として働くことができたら、こんなにいい人生はないだろうなと思ったのが一番の出発点ですね」

塚崎「だから美瑛だったんですね。就農だったらたくさん場所はありますもんね」

角和「色々な場所を考えたのですが、やはり自分もこの丘の景観のなかで農家をするひとりになりたいと思いました」

塚崎「木がシルエットになっているんですね。下からというのは丘だから撮れるんですよね。平地だったらこうはならない」

角和「やはりロケーションが違いますよね。これが並木だけでなく一本の木だったりするんですよね。ですからスマホでもきれいに撮影できる。美瑛町というのは一種の大きなスタジオみたいですよね」

塚崎「風景写真業界のなかでは美瑛マジックという言葉がありますよね。要は誰でも絶景が撮れてしまうので、写真が上手いと勘違いしてしまう。僕が行ってもすごい写真が撮れるんですよ。普通の場所に行くとやっぱり撮れなくて、結局美瑛町のおかげだったんですよね。風景写真の勉強をしたかったら、美瑛に行くのは本当におすすめです。自信がついてくるので」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

塚崎「そして次の作品です。こちらもきれいですね」

菊地「これからの季節、ちょうど9〜10月は霧の季節なんですよ。秋晴れになる確率が高く、晴れると必ずと言っていいほど霧が出ますね。また美瑛の霧は特別なんです。背景に2000m級の山々があって、手前には丘陵。その中間を霧が流れるというシチュエーションなんですよね。絵に書いたような風景ですね。朝霧というともやっとしたイメージがあるじゃないですか。でも美瑛の霧ははっきりとしているんですよね。メリハリがすごいです」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

塚崎「そしてさらに太陽が上がってくると?」

菊地「一変して黄金色になるんですよね。夏は3時くらいに起きないと日の出が撮れないのですが、今の時期は日が昇るのが遅いので比較的楽なんですよ。まだ間に合いますので、霧を撮りたい方は絶対お越しください。裏切らないと思いますよ」

塚崎「町長、農家をやっているとこういう景色が見られるんですね」

角和「農家は霧の下にいるんです。上から俯瞰した状態は見ないで下で働いているんですよね。朝霧は9月から増えてきます。ちょうどジャガイモの収穫時期になると朝霧が出るんですよね。霧が出たあとは不思議と晴れて暑くなるんですね。朝霧が出ると朝は寒いな、と思うのですが、昼を過ぎてくると暑いなかでジャガイモを毎日毎日拾う。それが私の時間です」

塚崎「いやー、これね、皆さん見たくないですか?撮りたくないですか?これ一生に 1 回はね。美瑛は観光のピークシーズンは7〜8月でしょうか?」

菊地「実はおすすめはこれからなんです。7〜8月はラベンダーも咲きますから、最も彩り豊かになるのですが、フォトジェニックな風景というのはこれからなんですよ」

塚崎「一年の後半は作物が獲れるので、美味しい時期になりますよね」

角和「作物が獲れてくるのがこれから、やはり秋が一番美味しい季節になってきます」

塚崎「お米もありますし、ジャガイモもあります。だから本当の美瑛の絶景はこれから。そしてご飯がますます美味しくなるのがこれからということですね。7〜8月も決して悪い時期ではないですけれども、9〜10月を逃すのはもったいない。そしてさらにこちら、すごいですね」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

菊地「先ほどのカットを望遠で狙ったものです。望遠で狙ってもいいし、広角でもどちらでも美しく撮れるというのが美瑛の特徴でしょうね」

塚崎「それぞれその丘の高いところにポプラの1本の木とか、並木が残っているんですよね。以前から比べるとだいぶ減りましたけれども、アクセントにしてこういう写真を撮れるわけですよね。この木はなんのためにあるんですか?」

角和「一つは畑と畑の境界の目印としてです。昔の方が植えた木がそのまま大きくなっています。もう一つは、農耕時代に一緒に畑を耕してくれた馬が死んでしまったとき、その馬を埋めて、墓標として木を植えたと言われています。畑のなかにポツンと立っている木には二つの由来があります。墓標としての木というのは、なんだかこう、美瑛の歴史というか、開拓してきた方々の気持ちもそこに現れる気がして、素敵だなと思いますね」

塚崎「そんな思いを込めながら見るとまた一味風景も変わってきますよね。一生に一度は見たいですね。晴れたら必ず見られますから、皆さん今から飛行機を予約しましょう。次ですね、これも朝霧ですか?」

菊地「必ず同じような条件になるわけではなくて、美瑛はまさに生き物なんですよね。毎日朝霧が出たとしても、出方が毎日違うんですよ。多い日もあれば少ない日もあるし、こちらは日の出前の青いイメージの写真ですね」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

塚崎「小麦と一緒に撮るとこうなるんですかね?」

菊地「望遠レンズで撮るよりは、広角をうまく使って手前の作物も一緒に画面に入れると特徴が出ると思います。霧そのものをモチーフにするケースが多いんですが、もう少し引いてどういうところに霧が湧いてるのか、全体の雰囲気をうまく伝えるというのも大事だと思うんですよね」

塚崎「最近のカメラなら逆光でも大丈夫ですよね」

菊地「そうですね、押せば撮れますから」

塚崎「フレアもかなり抑えられていますし、現像でシャドウを持ち上げることもできる。そして黄金色の大豆がきれいですね」

角和「大豆も多いです。畑がメインの町ですので。大豆を含めた豆、じゃがいも、甜菜糖になるビートが主な作付けになっています。一つの畑に毎年違うものを植えていく輪作。それを繰り返すことによって土もよくなる、そんな作り方をしています」

塚崎「つまり毎年同じ場所に行っても作物が変わっているということですね」

角和「毎年植えるものが違い、隣の農家もそれぞれが違いますので、今年見た風景は今年限り、来年以降は同じ風景が見られない。それが美瑛の特徴かなと思います」

塚崎「今年ぜひ行って見たことのない風景を見るとか、一回行ったことがある人でもまた違った風景が見られるかもしれないですよね。実際それぞれ畑の色が違いますよね」

菊地「昨年の秋に撮れたから今年も狙ってみようと思っても、まったく同じ写真は撮れないんです。まず作物が違うので、飽きないというのが最大の特徴ですよね。今年はどのような風景になるのかが楽しみのひとつですよね」

塚崎「30年住んでも飽きませんか?」

菊地「まったく飽きないですね」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

塚崎「本当にすごい!きれいな虹ですね」

菊地「下の黄色はひまわりなんです。観賞用ではなくて、土壌改良とか肥料にするために植えているんですよね。なので実は大抵は実が入る前にトラクターですき取ってしまうんです。その前の瞬間に撮影できて、虹も出てくれましたからよかったのですが、昨日ひまわりがあったから今日行こうと思っても、行ったら全然ない、ということもあります」

塚崎「虹はこんなに出るんですか?」

菊地「雲といい夕焼けといい、気象の変化がすごく激しいんですよね。ずっと雨が降ったと思ったら急に晴れたり、その逆もあります。気象予報士泣かせの場所だと思います。2000m級の山々が連なっているので、予報は本当に当たらないですね。私は丘の町というのですが、虹も頻繁に出るので虹の町でもいい。あとはダイヤモンドダストの町というのもいいですね」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

塚崎「そして霧の町でもありますよね。風景写真といえばここですね。風景写真の聖地といわれる所以がここにありますね」

菊地「これはトラクターですき取っているんですよね。もったいないとも思うのですが、ひまわりの種に実が入ってからトラクターですき取ると、次の年に芽がでてきたりするので、やはり咲いているときにすき取らないとだめなんですよね。背景は真っ暗なのですが、暗雲があるんです。雲なんですよね。だからそういうところも面白いんですよね。こっちは日が差してるんですけど、背景は真っ暗とかそういうシチュエーションですね」

塚崎「奥は空なんですね。コントラストが見事で、また丘のカーブが美しいですね」

菊地「この緩やかな動きがリズミカルでいいですよね」

塚崎「農家の方にとっては丘ではなくて平地の方が作業しやすいと思うのですが、この風景を守ってきているということですか?」

角和「そうですね。美瑛の農家にトラクターを運転させたら世界一だといわれています。それは自慢でもあるのですが、条件的には不利な場所で農業しているということの表れでもあります。平らな場所だったら、トラクターのハンドルを手放してもまっすぐ走っていきます。けれども、上にも行く、横にも曲がっている、そういう丘でまっすぐな畝を切っていくのが効率的な農業なので、それをやっていく苦労、大変さはありますね。しかし逆にプライドでもありますし、『俺しかこの丘を耕すことはできない』と誇りを持っているのも美瑛の農家だと思います」

塚崎「今だとここを平らにしたり、埋めたり、削ったりすることもあると思うのですが、美瑛ではしないんですね」

角和「あまりにも急なところを少しなだらかにする基盤整備事業はありますけれども、当然真っ平にすることは物理的に不可能です。そんななかでも農業ができるんだ、という、プライドでしょうかね。今はスマート農業と言って、GPSを使った自動操縦でトラクターをまっすぐ走らせることはできるのですが、美瑛の場合は傾斜があるので、完全にはまっすぐ行きません。両方うまく駆使しながら農業をやっているんですね」

塚崎「なるほど。おかげで我々は写真が撮れるんですよね」

菊地「まさしく撮らせていただいているんですよね。農家の方には感謝しかないですね」

塚崎「景色や自然を撮っているわけではなくて、農地を撮らせていただいてるわけですから。感謝をしながら撮らなきゃいけないですね。そして秋になるとこういった景色も撮れるんですね」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

菊地「美瑛ではもう紅葉が始まりますからね。この上のあたりにホテルがあるのですが、Facebookを見たら初冠雪があったと言っていました。昨日はすごく寒くてね。昨日まで最高気温が15℃だったんですよ。それで東京に来たら、35℃ですよ。20℃違いますからね。紅葉もまたすごいですよね」

塚崎「十勝岳の紅葉はすごいですよね。いろいろな色があります」

菊地「そうですね。これがもし関東の紅葉スポットだったら、大渋滞で紅葉を見るどころじゃないですよね。北海道はゆったり堪能できます。ガラガラとまでは言えませんが、平日は比較的見やすいです」 

塚崎「そしてさらに季節が進むとこうなってくるわけですね」

菊地「紅葉に降雪というのも珍しくないですから。本州ではなかなかこういった景色を見られるチャンスはないと思うのですが、北海道では結構あるんですよね。これがまた美しいんですよ」

塚崎「そしてご飯が美味しい時期。美瑛の秋はいいんですよね。新米もありますし、ジャガイモも、カボチャもあるんですよね。町長はカボチャも育ててらしたんですよね?」

角和「今は忙しくなってしまいやっていないのですが、農業を始めたころにやっていました。今くらいに収穫が始まりまして、2週間くらい乾かすと甘味も乗ってきますし、保存もきくようになってきますので、冬まで楽しめますね」

塚崎「カボチャスープが本当に美味しいですよ。砂糖が入っているんじゃないかと思うくらい甘い。ぜひ試していただければと思います。続いてこちら」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

菊地「みなさん興味津々だと思うのですが、サンピラー現象なんですよ。ダイヤモンドダストの集まり、太陽柱を撮影しました。肉眼でこういう風に見えるんですよ。ダイヤモンドダストの集まりです」

塚崎「天国みたいですね。ダイヤモンドダストって逆光状態で背景が暗い方がよく見えますので、見える場所が限られます。有名な場所は何箇所かあるのですが、有名じゃない場所でも見ることができます」

菊地「家の前で見えることもありますね」

塚崎「有名スポットで駐車場が混むことがあるのですが、実は有名スポットではなくてもダイヤモンドダストが出たりしますよね」

菊地「その代わり20℃くらいですから。あっ、北海道の人はマイナス20℃のことを普通に『20℃』と言うんです。マイナスってつけないんですよね。春先になると『プラス3℃だったね』という表現をするんですよね」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

菊地「青い池をドローンで撮影したものです。冬の初めのころは水が流れないので結氷するのですが、その模様です。このときはすごく珍しい模様ができました。大抵木の周りに円形状に凍ってくるのですが、これは初めてです。珍しい結氷の模様だと思います」

塚崎「ドローンは勝手に飛ばしてはいけないんですよね」

菊地「美瑛町は基本はドローン禁止で、青い池ももちろんそうですね。町の許可や地権者の許可が必要なので注意ですね」

塚崎「あくまで農地であって、作物を栽培している場所ですし、ご遠慮願いたいということですかね」

角和「だいぶ理解は進んできていまして、勝手に撮影する方は減ってはきているのですが、やはり農地であれば許可をとっていただくのが大前提ですね」

塚崎「ビニールハウスの上を飛んでいたドローンが落ちて、ビニールが破れてしまった事故も現に起きていますので、マナーは守っていただきたいなと思います」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

塚崎「続いてはこちら」

菊地「先日も中秋の名月はSNSでも話題になっていました。冬場の月がまたきれいなんですよね。丘陵地帯の上に月だけが上るのですが、日本海側なので満月の日に晴れることは少ないんですよ。本当に珍しい瞬間ですよね」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

塚崎「そして美瑛というとこういった話題もあります」

菊地「青い池の駐車場に入る車の列が大渋滞になってしまっています。たくさんの車が連なっているともう駐車場に入れなくて、観光バスは特に次に回る時間がありますから、途中でUターンなんですよね。丘の上に有名なクリスマスツリーの木があって、そこも冬ではもう車が通れないんです」

菊地「町にある普通のレストランも、要は団体客を受け入れているレストランではないんですね。そこに観光バスが降り立って、それが1台いなくなったら次、またいなくなったら次、という感じで、住民はランチ難民なんですよね」

塚崎「7〜8月はこういった状況なので、やはり祭日や連休になると大変なことになってしまいます」

角和「美瑛町にとって観光は大変大事な産業でありますし、僕自身美瑛に移住したくらい美瑛が好きなので、遊びに行ってみたいという気持ちはもちろんわかります。ぜひお越しいただきたいと思っています。ただ美瑛の人口は約9,300人。年間の観光客は約200万人。人口の200倍の人数が小さな町に訪れるとどうしてもこういった問題が起こります。なので見るところはたくさんありますので、一箇所に集中せず、混んでいないところにも行っていただけると助かります」

塚崎「年間で約3000万人くらいの方が日本にお越しいただいていて、オーバーツーリズムは問題になっています。日本の人口は1億2000万人。美瑛は人口に対して200倍の観光客。話が違いますよね。例えば平日に行くとか、そういうことですよね」

角和「そうですね。あとは青い池なら早朝。朝早い時間なら空いていますので、そういう時間を狙うとおいでいただく方も楽しんでいただけると思います」

塚崎「先生、早朝の青い池はいいですよね」

菊地「逆に早朝が好きですね。風もないのでリフレクションもありますし。写真好きな方は多分わかるんじゃないかなと思います」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

塚崎「秋になるとさらにこういった写真も撮れます」

菊地「白ひげの滝です。人気があってやはり行列になってしまうのですが、早朝や夕方だと狙いやすいですね。10月の上旬〜中旬に撮影しました。見どころのピークは10月の下旬ですね」

塚崎「みなさん覚えておきましょう。そして美瑛といえばこういった問題もあります」

角和「名誉なのか不名誉なのかわからないのですが、オーバーツーリズムで課題を抱えてる町としても先進地域になってしまっています。観光庁からオーバーリズム対策を積極的に先進的にやっているということで、道内で二箇所選んでいただきました。美瑛町もオーバーツーリズムのモデル地域として、国と協力しながら、どうしたら防げるかということを考えております」

角和「さまざまな対策があるのですが、青い池もクリスマスツリーも車が通れないほど道が混雑してしまうことがありますので、カメラから音声で『そこに入らないでください』と知らせる取り組みをしています。あの手この手で知恵を絞っています」

塚崎「以前青い池で泳いだ方の動画がありましたよね」

角和「冬の青い池は凍るので上を歩けるのですが、危険ですし、足跡がついて見栄えも悪くなるので、絶対に入らないでくださいとお伝えしています。この冬、音声で『入らないでください』と流したところ、ほぼ立ち入りはなくなりました。畑の立ち入りもそうなのですが、それがわからなくて入ってしまっているということがあると思いますので、どうしていけないのかということをもっと私たちが説明を尽くして、理解してもらうことが大切なのかなと思います」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

塚崎「『白金温泉 増やせ長期滞在』といった見出しの新聞記事もあります。これはどういうことでしょうか?」

角和「コロナが終わり観光が復活してきて、美瑛にとってこれはチャンスでもありますし、観光産業をもっと盛り上げていかねばと思っております。そのなかで国の予算を使わせていただきながら白金温泉地区がリニューアルして、より新しい形の観光に則した宿泊施設にしていこうということです。より多くの観光客にきてもらうための工夫を凝らしているところです」

塚崎「ちなみにこのなかで美瑛町に泊まったことがある方は?すごい、たくさんいらっしゃいますね。白金温泉に泊まった方は?あれ、少ないですよ、町長」

角和「美瑛の観光の出発点は白金温泉です。丘や青い池が有名になる遥か前に白金温泉から始まりました。少し濁った源泉掛け流しのお湯ですのでぜひ楽しんでいただきたいです」

塚崎「写真家が美瑛の絶景に気づき、そこから観光がさらに有名になっていったのですが、その前は温泉地だったんですよね。私も行ったことがありますがすごくよかったです。菊地先生は入られたことはありますか?」

菊地「もちろんです。シーズンのときは混みますから行けないのですが、町民はいつ行くべきか知っているので、私も結構行っていますよ」

塚崎「なるほど。もうリニューアルは終わったんでしょうか?」

角和「もう終わりました。昔ながらの団体客を迎えるホテルだったのですが、個人客や家族の方々が楽しめるような個室タイプになりました。新しい観光の形に合わせているということですね」

塚崎「美瑛に泊まった方は民泊ですか?どこに泊まられたんでしょうか」

菊地「富良野とか近隣ではないでしょうか」

塚崎「美瑛町に泊まった方は少ないんですね。町長、これはやはり問題ですね」

角和「昔からの美瑛の課題で、通過型観光といわれています。旭川市と富良野市という代表的な観光地の間にあるのでどちらから行っても通過されてしまう点が弱いところかなと思います。なるべく滞在をしていただくという工夫作りをしているところです」

塚崎「なかなか予約が取れないのですがザワザワ村というコテージが個人的におすすめです。調べてみてください。ご飯も美味しくて、美瑛の宿泊は本当にいいですよ。そして先生からお知らせです」

美瑛町(NPO法人 美瑛町写真映像協会)「日本で最もフォトジェニックな大地-美瑛」&「オーバーツーリズム」

菊地「来年の2月に六本木の富⼠フイルムフォトサロンで写真展を開催することが決定しています。『日本で最もフォトジェニックな大地』というタイトルで、本日のスライドでお見せした写真も展示する予定です。
ぜひいらしてください。富士フイルムさんの銀塩プリント、クリスタルプリントで展示する予定です」

塚崎「ぜひみなさんいらしてください。本日はありがとうございました」

トークショーの最後には菊地先生の写真集をかけたじゃんけん大会が行われ、盛況のうち幕を閉じました。

トークショーレポート一覧へ
returnTop