トークショーレポート
Talk Show Report
2024年9月20日(金)~9月23日(月・祝)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2024写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。
9月21日(土)、9月22日(日)に行われた別海町のトークショーでは、東京カメラ部10選 柄木孝志氏、別海町 総務部総合政策課 課長・松本博史氏にご登壇いただき、「カメラで始める地方創生~日本最東端の別世界・北海道別海町の挑戦~」というテーマでお話しいただきました。
柄木「みなさん、こんにちは。簡単に本日の趣旨をご案内させていただければなと思います。わたし自身は写真家でもあり、東京カメラ部の10選でもあるんですが、実は写真を通じて地方創生の仕事をメインにやっております。その中で別海町とは非常に長いお付き合いがあり、わたしは鳥取在住ですが、鳥取にいるよりもいまは別海町にいる時間の方が長いというくらい、深くさまざまな取り組みをさせていただいています。写真で地方創生というと、どうしてもプロモーションが先行しがちですが、別海町は少し違っていて、地域の中に入り込んでさまざまに地域をデザインしていく、形を作っていくという仕事をやらせていただいております。例えばツアーを作ったり、最近だと特産品を写真でブランディングするというようなことに真剣に取り組んでいます。わたしは毎月現場に出かけては、漁船に乗ったり、酪農の現場に行ったりして撮影をしており、それだけ写真の力というものを別海町は評価していて、写真家と連携をして取り組んでいるんです。このステージでは、別海町がチャレンジしていることをお伝えできればと思います。本日は別海町役場から松本さんもいらっしゃっていますので、町の紹介をお願いできますか?」
松本「お疲れさまでございます。北海道別海町役場の松本と申します。いち職員でございます。柄木さんとの付き合いは長く、15年前にお会いした後に、再び地域振興の現場に戻ってきていまご一緒させていただいています。別海町の場所は、ご覧の通り日本最東端に位置していますが、実際には北方四島がございまして、我々北海道の職員は必ず北海道地図には北方四島を入れることにしています。北方四島で2番目に大きな島である国後島からたったの16kmの距離に別海町はあり、そこからやってきております。牛の数は11万頭、人の約7倍で日本の生乳の約7%を絞っているのが別海町で、文字通り酪農日本一の町です。また、知床国立公園、阿寒摩周国立公園、釧路湿原国立公園と、3つの国立公園に囲まれています。水環境に恵まれておりますので、水産資源が非常に豊富であって、また野生動物の宝庫であり、被写体の宝庫でもあります。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、この春は選抜甲子園の21世紀枠で公立高校としては日本最東端の出場となりました。どうぞよろしくお願いいたします」
柄木「ありがとうございます。彼はいち職員と言っていますけども、全国さまざまな自治体とお仕事をさせていただいていますが、わたしが見てきた中でも彼がもっとも尖っていますし、本当にいろんなことを役場の中でやってきました。近年はふるさと納税で町の財政を救いました。それくらいのことを組み立てていった町の功労者。別海町のふるさと納税の取り組みについてもご説明いただいていいですか?」
松本「よく報道されている通り、国も地方自治体も共通してお金がありません。本町も非常に財政が厳しくて、町の貯金、財政調整基金というものが、あと2〜3年で枯渇してしまうという状況でした。ふるさと納税の制度のさまざまなものがありますが、本町ではどのように舵を切るべきかという議論が長く続いてしまっていたため、町長が決断をして専門の部署を作りまして、わたしが担当することになりました。それまでの年間の寄付額は1億4600万円でしたが、翌年には24億6000万円、さらに次の年に69億円へと成長し、昨年度は139億円ということで、たくさんの応援を全国からしていただいています。決して100億円や日本一を目指しているわけではなくて、ただただ一生懸命やっていただけなんですけども、いろんな施策の中で他の自治体にない特徴というと、カメラの力でどうやってこの無名の生産地である別海町に、こんな良い食があり、その背景にどのような人がいるかということを伝えるために、柄木さんに協力をいただいたということでございます。」
柄木「みなさまもご存知の通り、ふるさと納税は近年規模を拡大しており、市場も拡大しています。一見華やかに見えますが、現状は返礼品競争になりつつあるんです。実際、ふるさと納税の本質というのは、その地域のファンづくり、要はどうやって町を知ってもらって、町に投資をしていただけるかです。疲弊をしていく町をどう救っていくかということが原点にあります。しかし返礼品の競争になっていくと、自治体ばかりが負担を強いられることになってしまうので、そこを町としてどう考えればいいかということで取り組んだのが、写真で商品を伝えていくということ。表面的なものではなくて、本質をきちっと理解をしたうえで、中身にしっかり踏み込んでいくというのがわたしの個人的な見解であり、別海町のふるさと納税の施策かなと思っております。ここで改めてお互いの自己紹介をしたいと思います」
松本「出身は別海町のとなりの中標津町です。わたしの祖父は岡山県から北海道の開拓に父親と来まして、別海町に入植しています。また、祖父と結婚した祖母は、大分県から入植をしております。ご縁があって町役場に就職をしまして、福祉分野や水道などさまざまな部署にいました。商工観光課にいたときに観光庁の事業にエントリーし、別海町の『プレミアム女子旅』という企画が総合部門で1位をいただきました。そのときに何人かの目利きの方に別海町の磨き上げに協力いただいたんですが、その中のひとりが柄木さんだったということです。正直なことを言うと、観光というのは大変。観光課は役場の中でもっとも心身ともにすり減る職場なんです。わたしもだいぶ消耗しまして、6年ほど観光から離れて充電した後、町長からふるさと納税をやりなさいということで戻ってきました。そこで再び柄木さんに相談をさせていただいたと。2年間で伸ばして誰にでもやれるようにしなさい、というのが当時の僕への指示でしたが、約束通り2年間で部署は解散となり、いまは総合政策課で引き継いでいます。要は、寄付をいただくだけではなく、その財源をどう扱うか、どうやって寄付者のみなさまに応える町づくりをおこなっていくかという仕事を預かり、いま2年目となっております」
柄木「わたしの自己紹介もします。先ほども最初に申し上げました通り、東京カメラ部にはふたつの顔で参加しております。ひとつは東京カメラ部株式会社の地方創生担当の執行役員。その一方で、2013年の東京カメラ部10選でもあります。写真家としてはJR西日本、キヤノンのお仕事などもやらせていただいています。ライフワークとして、写真を使ってどのように地域をデザインしていくか、もしくは活性化していくかというようなことを20年間に亘って鳥取で暮らしながらやっております」
柄木「ここからは本日の本題になります。テーマは『たった一人を探しに』です。本来であればここで別海町で撮った写真をお見せして、ぜひ来てください、というトークショーが大半なんですが、別海町はちょっと切り口が違うんです」
松本「別海町は日本最大規模の生産地です。しかし世界で紛争が起きて飼料が高騰すると、その影響で酪農家が1年で30軒も畳んだりすることもありました。また、今年は秋鮭が採れなかったり、昨年は中国の禁輸でホタテの輸入が停止になる、というような世界の動きに翻弄されております。生産地をどう持続させていくかと考えると、やはり行政も町づくりも経営と同じだと思います。人も必要、お金も必要、物も必要。最近では情報やブランドも必要です。物は別海町にはあります。例えば優れた景色があり、さまざまな写真家の方が発信してくださっています。そしてブランド化にも力を入れていて、今日も渋谷にいらっしゃっていますが、クリエイティブチームにブランディングはお任せをしています。そして、いまは財源もあります。では何が足りないかというと、人が足りないんですよね。生産地として、観光地として、どんなに魅力的かを伝えるためには人が必要です。もちろん、たくさんいただいた財源で地域創生するのに、ひとつやふたつの事業だけではダメですし、それぞれの事業に対して必ずそこにディレクションをおこなう人材、プレイングマネージャーなど数が必要になってきます。我々がいま力を入れているのは地域おこし協力隊で、昨年度7人だったところを今は32人が着任していまして、今年も予算では61人の枠を取っていてたくさん募集をかけています。そのきっかけとして、写真で発信する。できればガイドなどもおこなっていただける、たったひとりを探しに来た、というのがここにいる目的になります」
柄木「要は町に住んで、町の魅力を写真で伝えていけるような人ということですか?」
松本「東京カメラ部さんにご協力いただき、昨年柄木さんが撮った写真を使い、どういうカメラの使い方をして、どんな時間帯、どの季節に撮るといいかという内容のWebサイトを作らせていただきましたし、キレイな写真を発信してくださる方はいるのですが、いちばん欲しいのは、現地にいて人をお迎えして、喜んでいただくというガイドをできる人です。まず別海町に住み、よく観察をしていただいて、別海町の良いところを把握したうえでガイドしていただく。難しいかもしれないですが、そのひとりを探しています」
柄木「どうしても地域というのは形として物を作り上げて発信していくことが非常に多いですが、松本さんがもしくは別海町が大事にしてるのは人材なんですよね。モチベーションが高くて、その町をどうやって好きになってもらえるか、もしくは知ってもらえるか。実際、わたしも鳥取での原点はそうでした。どうやって鳥取を知ってもらえるか。わたしは写真家になりたくて写真家になったわけではなくて、鳥取はどうやってPRできるのかという手段が写真だったんですよね。写真家になる過程は他の写真家の方とは全く違っているんです。芸術的思考ではなく、地域をどうやって伝えるかというメッセンジャー的な役割の中に写真があったと。別海町も、まさにそういう人の中で町を作っていくということを考えています。わたしが見る限り、別海町で働いている地域おこし協力隊の方はみんな生き生きしています。地域おこし協力隊がうまくいっていないという事例はよく耳にしますが、別海町では目的とビジョンを持って活動されているなという印象があります。本当に別海町役場はひとつの企業。お話をしていてもすごくフレンドリーで、お互いの意見を通わせながら良いものを作るためにどうやっていけばいいかという議論がおこなわれており、役場目線で固定された概念ではなく、民間の発想や目線を持ち合わせた自治体だという印象を強く持っています」
柄木「別海町とは写真を通じたさまざまな取り組みをおこなってきましたが、代表的な事例はこちらの『氷平線ウォーク』になります。これは松本さんが観光課にいた時代ですから、もう10年以上前ですね。僕が松本さんと最初に繋がった経緯は写真ではないんです。別海町にはジャンボホタテバーガーという日本一になったバーガーがあるんですが、そのバーガーの大会を運営していたのがわたしなんです。「とっとりバーガーフェスタ」というご当地バーガーの大会で、その初代と2代目のグランプリが別海町だったんです。だから松本さんは僕のことを最初は写真家だと思っていなかった。ハンバーガー屋さんだと思っていたはずです。でも、僕が写真家だということに気付いてくれて、別海町の課題というものを話してくれて、写真の力でどうにかしてくれないかと相談してくれたと。別海町の野付半島は構造的に希有な半島で、半島の中にある野付湾は冬場になると−20℃になるため、凍った海の上を歩くことができるんです。でも、町民の方には海を歩けるということに価値はない。わたしにとっては宝の山で、これをなんとかツアー化できないかと話し、別海町とともにツアーを企画しました」
柄木「ただ歩かせるだけじゃなく、延々と続く白い大地をただ歩くだけでなく、遠近感を取ることができない氷平線を活かしてトリックフォトを撮ることができるツアーを企画しました。みなさんに撮り方をレクチャーしながら、スマホでみなさんがそれぞれ撮ることができるという内容にしたところ、大ヒットし、ツアー化することでガイドの雇用も生まれます。凍っているのは2カ月ほどなんですが、いまではどのくらいお越しいただいているんでしたっけ?」
松本「最初はツアー参加者は17人でしたが、それがいまや3000人ほど。7000人という年もあったと思います」
柄木「半島を走っていると、両サイドがオホーツク海と野付湾で本当に何もないところなんですよ。そこに団体バスがどんどんどんどんやってくる。わたしも人がいないときを知っていますから、バスがやってきたときの驚きと感動はいまでははっきり覚えています。バスでやって来て、みんながトリックフォトを楽しそうにやるわけですよ。もちろんこれは有料のガイドツアーですからそこには収益が生まれます。そして人材も必要ですからガイドも育成されます。そうやって地域の中にビジネスモデルができることによって、特にガイドは若者が担いますから、若い人材も必然的に増えていく。このツアーは観光庁の事業の日本一になり、いまもこうやって安定的にお客さんがいらっしゃっています。でも、その一歩先もやろうということで作った新しいメニューがこちらですね」
柄木「こちらの夕景です。氷平線の奥に沈んでいく夕景はとても美しいんです。日本ではなかなか他に見ることができません。それを凍った海の上で見ることができるということが貴重だし、素晴らしい絶景です。これまではご自身に撮っていただいていましたが、プロのカメラマンが入って、みなさんが被写体として写っているものをデータとしてもらえるというのが新たな試みです。写真をもらえたらどうしますか? SNSにアップしますよね? いまは記憶に残る思い出ではなく記録に残す思い出じゃないと発展していかないんです。そう考えると、写真の果たす役割はいまの観光においては『絶景』などと同じくらいに欠かせないツールになってるんですよね。そこに別海町は早くから目を付けて、実際にこの夕景のツアーを昨年モニタリングで開催し、今年は本番を迎えようとしています。これは実際に我々が歩いて現場を見て提案した場所を、別海町なりに捉えてメニュー化しています。今年は1月末から2月のほぼ毎日、開催される予定。あちらのブースでそのツアーのご案内もさせていただいています。参加していただいたら、みなさん驚かれると思います。昨年のモニタリングでも顧客満足度が高く、我々もそこで手応えを感じ、開催回数を実は増やしました。星空のツアーも企画していまして、こちらは今年モニタリングという形になりますから、お安く提供させていただきます。星空も本当にキレイです」
柄木「続いて、ふるさと納税のブランディングというテーマに移ります。先ほどご説明しましたが、このようにホタテ漁の船などにわたしは乗ります。とても揺れますが、その中でもプロ写真家として撮らせていただいているので失敗はできない。良い写真を撮れるようにがんばっています。このように働く人たちの姿をかっこよく撮ることによって、知っていただく機会を、見ていただく機会をより多くし、返礼品の素材のバックヤードをしっかり見せていくことが別海町のいちばんの目的になっています」
松本「ふるさと納税をやったことある方はわかると思いますが、いわゆるECサイトなんですよね。最近は官製ECサイトと揶揄されることもありますけど、実際に仕組みはECサイトです。本当は美味しそうとか、シズル感のある写真を並べれば、ふるさと納税は人気になるように感じるんですけど、別海町ではそこを取らなかったんですよね。安いものがいいという方は例えばマーケットの7割いるとして、良いものがいい、町を応援したい、というその3割を、別海町は後発の戦い方として、そちらに刺さるブランディングやプロモーションをしていこうと。その手法として、生産現場や加工現場の写真を添えることで、あ、本物なんだな、と思っていただけることに力を入れています。他の自治体ではちょっとやらない角度かなと思います」
柄木「彼はさらっと言いますけど、これ実は自治体ではできないんですよ。わたしもさまざまな自治体とお付き合いがありますけど、やっぱりそういうことをやりたがらない。いろいろなハレーションが起こりますし、手間も増えます。彼は基本的にその手間を惜しまない。自治体でありながら、企業的な目線、民間的な目線で商品のブランディングやその先のファン作りまでを考えて取り組みをおこなっています。事実、別海町には非常にファンが多い。一度訪れると継続的に別海町を応援してくださる。ふるさと納税のSNSアカウントもありますが、フォロワー数はとても多いです」
松本「Instagramが6万8000人ほど、Xが5万2000人ほどですね。LINEは10個くらいアカウントがあり、メルマガと合わせると登録者は26万人ぐらいじゃないでしょうか。直接情報がリーチできる人数は、ここ3年間で30〜40万人ぐらいにまでなりました」
柄木「みなさん、どう思います? これを自治体がやってるんですよ。自治体がやってこの数字を出せるって他に聞いたことはないです。これを役場中心に組み立てて、しかも運営してる。こんなおもしろい町はなかなかないと思うんですよね。だから地域おこし協力隊で来た民間の方も、お付き合いのある民間の事業者も、みんな別海町のファンになっていくんですよね。そして、この町を何とかしたいと。自分自身がファンだから応援をするし、PRもする。そういう町を目指していかないといけない。だから、さっき松本さんが言った人材が全てということは、まさにそういう視点から生まれているだろうし、人が町を作っていくということを、彼がわかっているのだと思います」
柄木「これも漁船の上で撮っていますが、これも地域おこし協力体でいらっしゃった方ですが、いまは役場で働いているそうです」
柄木「こういう表情も含めて働いている現場の写真を我々が撮らせていただいて、彼が伝えたかったことを写真という形に変えるというのがわたしの役目です。ただ、わたし自身も町のことを知らないと、その人のことを知らないとこういう写真は撮れないので、必然的にコミュニケーションは生まれていきます。おそらく、わたしは町民の一部の方よりも別海町のことはよく知っていると思います。そのくらい魅力を秘めた町です」
柄木「実は別海町は東京カメラ部とも事業をやっております。近年、別海町もフォトツーリズムというものに力を入れています。そのうえで作ったのが別海町のフォトスポットサイト『カメラで魅つける別海町』というタイトルで、別海町の写真をわたしは10年間撮ってきていますが、その中で資源化できそうなスポットを写真家の目線で選び、それを1枚のマップにしたものになります」
松本「わたしも若い頃からフォトコンなどを手掛けてきましたが、何がもっとも大切かというと、観光地をしっかりと整備することだと。このサイトは柄木さんの撮った写真を使い、いつどう撮り、カメラをどのような設定にすればいいのかというアドバイスを掲載しています。ぜひ来てください、というサイトかというとそうではなくて、人が来ていただいた実数を持って、その場所をしっかりと整備することが目的なんですね。役所というのは縦割りで、なかなか急に新規事業をやろうとしてもスイッチが入らない。観光地もすべてを観光課が管理しているわけではなく、場所によっては部署が異なります。わたしがいまいる部署は事業をすべてヒアリングしていくことが仕事ですが、事業を立ち上げる部署に予算枠を割くときに、これだけ人が来ているという根拠が欲しいわけですね。そのためのサイトなんです。少し変わっていると思いますが、真の目的はそこ。いま人が来たら困る場所、揉めごとになりそうな場所は一切載せていません」
柄木「とても重要なことですね。要はほとんどの自治体さんはPRすること、人を呼べばいいというというところで終わっているんです。別海町は呼んだ後のことも考えていて、来たときにお客さんが安心安全に楽しめる、また住民の方も喜んでくださる。そしてきっちりお金が落ちる。逆算をして取り組みを進めているんです。サイトを作ってその場所が発展していくことを目的に作ると同時に、そこで得た数値やデータをもとに数値の高かった場所を整備していく。または氷平線のようにツアーを作ってお金が落ちるようにする。もしくは周囲の飲食店と繋いで、その地域で昔から商売される方にもちゃんと還元できるように考えている。作って終わりの事業ではなく、5年、10年先のビジョンを見据えた取り組みをおこなっているんです。これは民間企業であれば当たり前ですが、自治体ではできないんですよ。悪いのではなく当たり前なんです。だから役場内では稟議を通すだけでも大変だと思いますが、松本さんにも職員さんにもそれだけの信用がある。だからこれだけの事業ができるのだと思いますし、我々民間も本気で向き合っていけるんです」
柄木「ここからは別海町の風景をご覧いただければと思います。わたしが特にオススメしたいのは、冬の時期です。実は野付半島というのはオホーツク海にも面していますから、風向きによっては2月、3月に流氷がやってきます。流氷は羅臼、網走、斜里が有名ですが、別海町にもやって来ます。別海町がすごいのは、流氷と一緒に朝日や天の川が見られたり、撮れたりするんです。これはここだけのもの。他のエリアですと、街灯があったり、そもそもの位置関係で見られません」
柄木「撮影する条件としては別海町はとても優れています。これは桟橋ですからね、流氷の上を歩いているわけではありません」
柄木「流氷越しに知床連山が見えます」
柄木「近年、別海町が注目しているのは、この一本松がある場所です。冬の時期になると川が凍り、結氷したときに『寄せ氷』といって、圧力がかかり凍りの塊が押し寄せて、このようにきれいな風景を作ってくれるんです。これを別海町では『クリスタルアイズ』という名前を付けて、本格的に売りに出そうとしています。ぜひ写真家のみなさんは『クリスタルアイズ』として発信していただければなと思います」
柄木「そして、トドワラという場所の木道から、9月、10月くらいのタイミングだと、桟橋の向こうに縦に天の川が走ります。周囲に街灯もないですし、このようにキレイな星空と縦にかかる天の川と桟橋を一直線に撮ることができます」
柄木「風景は美瑛町などが有名ですが、別海町もこのような絵になる木もあります」
柄木「こちらはセイヨウタンポポですね。花畑は当たり前のように広がっていて、ひとっこひとりいません」
柄木「野生動物の宝庫でもあります。エゾシカやキタキツネ、オジロワシなど、動物を撮る方なら貴重な動物がありがたみがないくらいいます。動物写真を撮られる方は多いですね。僕は動物を風景の中に点景として入れるような撮り方をよくします」
柄木「このように凍った海の上を歩くエゾシカも見られます」
柄木「こちらは満月の下にいるエゾシカです。撮影環境も優れていますが、さらに町の取り組みとして魅力を伝えてくれるガイドを育てていきたいと考えており、これから松本さんと一緒にもっとツアーを作っていきます。そこで活躍をしてくれる人材をぜひこちらで見つけたいということで、別海町は今回トークショーを開いているということです。興味がある方は後ほどブースを覗いていただいて、役場の方としっかり話していただければなと思います。最後に、松本さんメッセージをお願いします」
松本「今日は東京カメラ部のみなさま、そしてスポンサーのみなさまのおかげで、こうしたPRができて感謝しております。観光という言葉の語源は江戸時代にあって、観光の文字を入れ替えると『国の光りを観る』ということが語源と言われています。何か光り輝くものがあって、わざわざ遠いところに行きたいと思うわけです。我々のような無名の生産地にどのように人を呼ぶのかというと、やはりコンテンツを作って、その光を磨き上げて輝かせる。そして、それがひとつでは、富良野や美瑛町のような自治体にはなかなか及びません。たくさんの観光資源を作って、そこをブラッシュアップする人材がいて、そこをバックアップする行政があって初めて観光地になるんだと思っています。ですから、このためにたったひとりでもいいので、今日出会いがあればいいなと思ってやってきました。この後も明日もあさってもブースにおりますので、よければお声かけいただければと思います。本日はありがとうございました」
柄木「いまから、みなさまのお目当ての牛乳パックをお配りいたします。三角パックの牛乳は、いまや作っているのは別海町だけです」
松本「スーパーでよく売られている牛乳は130度で2秒間という、超高温殺菌をしていますが、この別海町の牛乳は摩周湖の伏流水を飲んでいる牛の生乳を、比較的低い温度で殺菌してますので、濃いわりには非常にさっぱりとした飲み口になっています。12月5日から10日間、というイベントを有楽町駅前でやります。そこでもまた牛乳を用意して、職員も来ますので、お気に召したらよろしくお願いします」
柄木「コーヒー牛乳もありましたよね。もらわれた方はぜひあの写真に撮っていただいて。SNSで投稿いただければなと思います。タグは『べっかいの、べっぴん産』でお願いします。最後にお伝えしたいのは、別海町の取り組みというのは地域活性の中においてとても先進的です。ふるさと納税もそうですけども、この町の活動や行動にもご注目いただきたいです。この冬はツアーもありますし、12月には有楽町でイベントもやりますので、ぜひ足を運んでいただき、さまざまない商品に触れ、別海町の人たちとも交流していただきたいです。本日はご清聴いただきましてありがとうございました」