トークショーレポート
Talk Show Report
2023年9月15日(金)~9月18日(月・祝)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2023写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。
9月16日(土)に行われたニコンイメージングジャパンのトークショーでは、東京カメラ部10選の別所隆弘氏と半田菜摘氏にご登壇いただき、「Zシリーズが切り拓くカメラの未来 ~Nikon Creatorsが描く究極の1枚~」というテーマでお話しいただきました。
塚崎「本日ご登壇いただくのは、東京カメラ部で人気のフォトグラファーであり、東京カメラ部10選の別所隆弘さん、そして半田菜摘さんのおふたりです。簡単に自己紹介の方お願いいたします」
別所「別所です、みなさんどうぞよろしくお願いします。今年の5月に発表されたニコンZ 8の公式プロモーションに出させていただきました。プロモーションでは、主に飛行機と花火の写真と動画を出していたんですけれども、基本的には僕は風景写真家です。滋賀県で中心に活動していて、関西大学の講師をしたり、ときどきテレビでコメンテーターをしたりしています」
半田「半田菜摘と申します。わたしは北海道在住で、北海道の野生動物を撮影しています。今回は8月末に発売されたNIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VRのプロモーションを担当させていただきました。今日は北海道の動物をいろいろ紹介していきたいなと思います。よろしくお願いいたします」
別所「一度ニコンから離れていましたが、以前にまだ僕がD850を使っているタイミングのときに、半田さんのデビュートークショーがあって、そのときの相手が僕やったんですよ」
半田「そう。生まれて初めてのトークショーのときと同じ相手というのはエモイなあって」
別所「そしてニコン復帰戦の相手がまた半田さんというのは熱いですよね」
塚崎「おふたりがふだんどのような写真をお撮りになっているかを伺っていきます。撮影ジャンルや、そのジャンルを取りながら撮りはじめたきっかけなどを教えていただきたいと思います」
別所「僕は風景を撮っています。ただ、僕は純風景をあまり撮りません。もう少し人や人工物などがある風景が好きなんです。最初に僕が世の中に知っていただくきっかけになったのも飛行機の写真なんですね。D800かD810のどちらかを使って撮った写真でしたね。ほぼ同じタイミングで花火の写真も見てもらえるようになり、こうやって人が作った飛行機であったり、人が打ち上げる花火であったりを、周りの風景と一緒に納めるというのが好きなんです。」
Z 8 + NIKKOR Z 24mm f/1.8
別所「これは千里川から撮っていますが、このような写真を撮るときに考えなければならないのは、ちゃんと風景写真であるということ。どう見ても飛行機写真であっても気分としては風景写真。ここでトレードオフがいつも発生していて、飛行機を大きく撮りすぎると飛行機写真になってしまい、風景をメインにしすぎてしまうと飛行機の存在感が小さくなりすぎると。そのバランスをどうするかとなったとき、いちばん安易な回答はやはり空をどう描くか、ですね。飛行機の写真では、空がキャンバスになることが多いので、背景の空は夕焼けが鮮やかであったり珍しい光景になっているタイミングを狙うと、飛行機を大きめに撮っても風景写真として機能する1枚になります」
Z 8 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
別所「こちらは僕の地元である滋賀県大津市のびわ湖大花火大会ですね。花火写真も飛行機写真と全く同じ発想で、花火が大きすぎるとただの花火のサンプル写真みたいになってしまうし、逆に引きすぎたらなんで花火をわざわざ入れて撮っているのか、みたいになってしまうので、そのバランスを考えて撮るようにしています」
塚崎「かなりの遠方から花火を撮るという写真のフロンティアが別所さんですよね」
別所「超望遠花火と言って、5kmや10km先から撮ったり、いちばん離れたときは42km先から撮ったことありますから。レンズも800mmにテレコンを付けて。どうなったと思います? 何も写ってませんでしたよ(笑)。42km先だと火の線しか写ってなくて、都市もへったくれもなかったという。そういう失敗をしながらベストの位置を探っています。この1枚はちょうどバランスの良いタイミングでシャッターを切っていて、ポイントは上の方に煙が入っていることですね。煙は嫌がられることも多いですが、僕は立体感が出るので大好きです。このような落ち着いた写真は好きですね」
Z 8 + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
別所「ニコンに戻りZ 8を使いはじめていちばん感動するのは風景。本当にキレイに撮れます。家から歩いて10 分くらいのところで、キレイな雲が出ているなとシャッター切ったらトークショーで使いたくなるような感じの絵が勝手に出てくる。これもJPEG撮って出しですが、キレイな写真になっていますよね」
塚崎「続いて半田さんお願いします」
半田「わたしは看護師の仕事もしているので、休みの日とか夜勤前後にこのように動物を探して撮っていて、大変でもあり醍醐味でもあります。そのときはニコンの双眼鏡を愛用していて、とても優秀ですね。テントに入って待つ時間も多いです」
Z 9 + NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S
半田「こちらは北海道の山に住むエゾナキウサギ。ネズミくらい小さいですが、いちおうはウサギになります。この日はギラギラの太陽で、高い木がないために日陰にもならずコントラストが高く厳しい撮影でしたが、やはりミラーレスのZシリーズになってEVFは本当にありがたいなと感じています。撮れる画が見えているから簡単に露出調整ができ、白飛びせずに撮れます」
Z 9 + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
半田「これはウトウという鳥であまり知られていません。魚をくわえています。北海道の日本海側に天売島という小さな島があって、渡り鳥が経由する繁殖地があります。ここには80万羽、40万つがいのウトウがいるんですよ。日中は魚を食べたりしているんですけど、夕方になると魚をくわえて巣穴にいる子供のために魚を運びはじめるんです。明るいうちは巣穴には戻ってきてくれなくて、必ず暗い時間に戻ってくる。なのに、この子は時速 60kmで飛ぶんですね。500ml のペットボトルの重さが 60kmのスピードで 80万羽ばっと来る。当たったら怪我をしますよね。撮るのはすごく難しくて、ミラーレスを使いはじめる前に2回くらい挑戦したのですが撮ることができなくて惨敗だったんです」
塚崎「実際にはもっと暗いということですね」
半田「現像で露出を調整して明るくしていて、もっと暗いです。Z 9は3Dトラッキングが優秀なのでこのように撮れました」
塚崎「他に撮影した方は撮れていなかったのでは?」
半田「よくぞ聞いてくれました(笑)。最後まで撮っていたのはわたしだけで、他の方々は途中で諦めていました。撮れなさすぎてiPhoneでいいわ、というくらい撮れなくて。撮ることができれば機材なんてなんでもいいじゃんという考え方もありますが、暗くて速く動くなど条件が悪いときに戦える時間を増やしたいならば、機材にこだわらなければいけないと思います」
塚崎「特に動物は、もう一回、ということができないですからね。次の作品に移ります」
Z 9 + NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S
半田「これはエゾリス。北海道ではポピュラーな動物で、公園などでも見ることができますが、だからこそふつうに撮ると飽きてしまうので、背景にこだわって撮りたいなと。このときは、玉ボケを偶然ではなく狙っています。北海道に多く生えているトドマツは落葉しないので、隙間が狭いために玉ボケが作りやすいんですよね。ですから、トドマツの前でエゾリスが来るのをジッと待って撮りました。背景を決めて待つことは多いですね」
Z 9 + AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR
Z 9 + AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR
半田「ヨタカという鳥です。ぶさカワイイですよね。個体数が減り準絶滅危惧種に指定されている珍しい鳥なのですが、なにせ地味で。ジッと動かないし鳴かないし、見つけるのが難しいのです。このときも卵を抱えている個体で、子供とのツーショットを絶対に撮りたいなと思って、2ヶ月間ずっと慎重にストレスを与えないように撮ろうと計画をして、やっと撮れた写真になります。最初は遠くから撮ったので1羽だけしか写っていないと思っていたら、親子で写っていて感動しました。このときもストレスを与えないように、スマホからシャッターを切れるようにしていて、わたしはカメラに背を向けて撮っています。動物を撮るうえで、ストレスを与えないということはいちばん大切にしていることですね」
塚崎「続いて、最近になってこれまで自分にはなかった新しい視点や撮影方法を採り入れることで、新たな表現ができたという作品を拝見したいと思います。こだわったポイント、Zシリーズだからこそ撮れたというエピソードなどをご紹介いただきたいです。まずは別所さんからお願いします」
別所「Z 9はニコンのフラッグシップ機ですが、Z 8はZ 9に並ぶモンスターカメラです。堅牢性はZ 9に譲るところがあり、北海道の自然で撮影されている半田さんであればZ 9ですが、僕のようにハードな地域でないならばZ 8も良い選択です。Z 8にしかできないことが『HEIF』での撮影が出来るということですね。たぶんあまりHEIFでの撮影をしたことがある人は少ないと思いますが、HEIFはものすごく可能性を秘めたファイル形式です。開発者によると、Z 8はHEIFを撮るためにもう1台別のカメラを中に入れました、というくらいのことをしているそうなんですよ。あとHEIFとともに8K60P N-RAWという動画形式の搭載。外部機器を必要としない中では最高画質での記録が可能です。ちなみに22分で1TBを使います。今日はこのふたつをお見せいたします」
Z 8 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
※都合上HEIFファイルの掲載が難しいため、
HEIF調に現像の上、掲載しております。
別所「いまHEIFのファイルはほとんどの環境で見ることができません。従来のディスプレイはSDR対応、HEIFを見るためにはHDR対応が必要になります。iPhoneでは実は見ることができるんですね。しかしディスプレイではHEIFじゃない状態でHEIF写真を表示していて、黒が潰れたりしているんです。今日はHEIF対応のディスプレイも用意しているので、HEIFのまま表示してみたいと思います。従来ディスプレイでは中央が少し白飛びしているように見えています。次にHDRディスプレイで見てみると白飛びしていませんよね? これはどういうことかというと、いままでのディスプレイでは白飛びしてしまうくらいの輝度情報をHEIFが含んでいるということ。この秋からHEIFが本格化してくるはずです。恐らくどのディスプレイもSDRからHDR対応となり、輝度がこれまでは100までだったものが輝度1000や2000となり、1枚の写真の中で表現できるようになるんです」
Z 8 + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
※都合上HEIFファイルの掲載が難しいため、
HEIF調に現像の上、掲載しております。
別所「これは長岡花火のクライマックスですね。その場だとものすごい輝度なんですけれど、これも屋台から花火までしっかりと表現されています。これを今までのディスプレイで表示するとどうなるかというと、花火が白飛びしていますよね。HEIFだと光も色も残るんです」
Z 8 + NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S
※都合上HEIFファイルの掲載が難しいため、
HEIF調に現像の上、掲載しております。
別所「こちらは背景に太陽があります。これをHEIFで撮っていると、太陽から飛行機の影まで全て情報が残ります。2023年の秋からHEIFによって変更するであろう写真表現を現在すでに撮ることができるのはZ 8だけ。他のカメラでも仕組み的には撮れるんですが、表示できない形式で撮っても意味がないという判断になっていて移行期です。ちなみにZ 8はHEIFだけでなくRAWでも同時に撮れて、それができるのはZ 8のみです。みなさん、本当にZ 8は良いカメラなので買ってください。新たなチャレンジをさせてくれるカメラで、実は僕、Z 8を手にするまでは写欲が落ちていて、何なら自分にやれることは全てやったくらいに思っていたんですね。でもZ 8を手に入れてからの僕の活動は、エグいですよ。今年も花火大会に行きまくりましたからね。それはHEIFで撮るということ、8K60PのN-RAWの動画を撮るというこのふたつがチャレンジングで、いろいろなところで僕の背中を押してくれるんです。それがあったから夏を走り抜けられましたね」
塚崎「まだ普及していないフォーマットなので、普及してから撮ろうという方もいらっしゃると思うんですね。ただ、これは過去にフルHDや4Kが普及しはじめた頃にも、見れないんだからいらないじゃないと言われていましたが、振り返ってみると、そのときに4Kで撮っていたらいまキレイな映像で見ることができたのに、ということになるんですよね」
別所「そういう時期から取り組むと、スタートダッシュに成功するんですよ。1〜2年、先行投資を自分にしているということになるので。それがいまのタイミングだとHEIF、動画だとRAW動画が撮れるかということで、そのふたつを出来るのがZ 8なんです」
塚崎「会場の大きなモニターはまだHEIFに対応していないということで、今回はこちら対応したモニターをASUSさんよりお借りしました。『ProArt Display PA32UCX-PK』というモデルになります」
別所「僕も同時にRAWでも撮っています。まだ現状はSDR環境の中にいますから、それに対応するためにRAWから作り上げることも必要になります。でも、HEIFでも撮っていて、HDR環境に合わせて現像することもできます。つまり、これが1台の中に2台のカメラがあるということです。現在のカメラと未来のカメラの2台がZ 8には入っていると思ってください」
※動画に音声はありません。
別所「これは8K60Pで撮った動画ですね。今回、ヒカリエに来て仲間の写真家からいちばん言われたのがこれなんですよね。別所さん、動画ばかり出しているけれど、めっちゃエグくないって。あの輝きと色合いは動画でどう作っているの? と言われたんですが、理由はただひとつ、Z 8で撮っているということだけです。これは4Kで出力しています。スチールの方は動画なんてと思うかもしれないですが、違います、僕はこれを動画だと思って撮っていないです。これは動く写真だと思っています。動画は『戦艦ポチョムキン』のときにモンタージュが発見され、別のカットを並べて意味を発生させる芸術になってしまいましたが、写真はそれが苦手で、組写真にしなければいけません。でも、これは引き伸ばされた1秒。写真から動画にアクセスするための近道がここ。RAW動画なんです。たった2秒や3秒の動画を見せるだけで一個の作品になります。ちょっと長めの写真という意識で、それができるのはZ 8です。これが今年の僕の新しいチャレンジでした」
塚崎「続いて半田さんお願いします」
Z 9 + AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR
半田「わたしも自分なりの作風にチャレンジしています。これはオシドリなんですが、北海道でも本州でもポピュラーだと思いますが、そういう鳥をいかに作風を変えて撮るのかということが課題だと感じています。このときはマンションが映り込んでいて、撮る位置を変えるとフォトジェニックな模様になることがわかったので、ひたすらオシドリが通るのを待って撮影しました」
Z 9 + NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S
半田「エゾフクロウです。ここは地元の人には有名な公園で、アクセスもしやすいです。そして行けばかなりの確率でエゾフクロウがいるので撮りやすい場所。だから、ここで撮ったエゾフクロウの写真はたくさんあるのですが、ここで差を出すにはどうしたらいいんだろう? と思って撮ったのがこちらです。日中に撮るのが基本ですが、エゾフクロウが活動する夜の雰囲気を出したいと思ってちょっと遅い時間に撮影することにしました。このときはZ 9とNIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sという大きなレンズを使っています。日没と同時に街灯が光るのと、工事の人々が帰る車のブレーキのテールランプが光るので、そのタイミングを待って撮っています。そういう見たことがないような写真を撮るのが自分の中の目標です」
Z 9 + NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S
半田「続いてはエゾフクロウの雛です。かわいいのでアップで撮りたいけれども、動物が暮らしている環境も写したものがネイチャーフォトの究極かなとわたしの中では思っていて、別所さんが言っていた、飛行機だけ、花火だけにならないようにするというのと似ているかもしれないですが、北海道という大自然の中で暮らしている動物を表現したくて、引きで撮るという写真を大切にしています」
Z 9 + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
半田「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sで広く撮ると、この森の新緑の美しさ、新緑が芽生える頃という季節感も出ます。新しく発売されたNIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VRならば、1本でこのどちらも切り取り方もできますよね」
別所「北海道では400mmが標準、200mmが広角だと言われてるみたいですが、180−600mmだと便利ズームみたいな位置づけで使えるんですね」
半田「1本持つと安心感のあるレンズだと思います」
塚崎「自然環境だとレンズ交換もしたくないですしね」
半田「桜が咲いている時期のエゾリスです。今までは普通に写真を撮っていましたが、Z 9は8Kも撮ることができるので、わたしも撮ってみようかなと思いました。PCの性能があるので8Kで撮る勇気はありませんでしたが、このような動画を撮ってみました。動物の動きが見られるとまた違いますよね。風が強くて桜吹雪もキレイだったので、これは動画で撮るしかないなって」
半田「キタキツネです。これも動画を撮ってみました。動画にすることで虫の動きもアクセントになります」
別所「撮ったやつを繋げるだけで作品になりますね。すごい!」
半田「動物の生態や動き、子供ならではのわちゃわちゃ感みたいなものも伝えられるかなと」
別所「お客さんの表情も変わりましたね。急にみなさんから邪気がなくなっていきました(笑)」
半田「お気づきでしょうか。ヨタカの上にバッタがいます。これは動画を撮りたくなりますよね。ボタン一個ですぐに動画が撮れるのでいいですよね。すごいバッタの動きが遅い。お尻のほうからバッタがもじもじと登ってきますが、この後どうなるんだろうって。本当にヨタカは動かないですよね。バッタが飛んでいきました。スローモーションにもしてみたのでご覧ください。動画ならではの楽しさの発見があって、自分の中で挑戦しはじめているところです」
別所「8K60Pで撮っていたら、8Kのうえにスローモーションにもできますよね。最高画質のネイチャースローモーションができます」
塚崎「それではここで、トークショーのタイトルにもあるように、ご自身が表現したいものが撮れた究極の一枚とそのエピソードをお伺いしたいと思います」
Z 8 + NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S
別所「これは猪名川花火大会という関西の花火大会なんですが、実は飛行機と一緒に撮ることができるんです。花火が左側で飛行機が右側にしていますが、ちょっと構図が窮屈なのと花火が小さいんですね」
D810
別所「ここではD810を使っているときに初めて撮ったんですが、完璧に成功と言えるのは8年間撮影してきてたった1枚しかありません。さきほどの写真がなぜ窮屈な構図なのかと言うと、実はZ 8で花火が上がっている前を飛行機が通る動画を撮ろうとしていたからなんですね。成功した1枚を今度は動画でもやってみようとポジションを取っていました」
※動画に音声はありません。
別所「Z 8なら8K60PとRAW動画が撮れるので、暗く落ちている飛行機を持ち上げながら、白飛びしそうな花火を押さえつけて動画と写真の中間のようなものを目指した動画がこれです。この大きな花火の前を通ってくれた飛行機は、この一機だけでした。ニコンに復帰したからにはどうしても撮りたかったです」
半田「飛行機、花火、夜景、好きなものの全てが詰まっていますね」
Z 8 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
別所「これはZ 8のカタログに掲載され、今年のヒカリエでの展示作品にもなっています。これを何で選んだかというと、先ほどちょっとお話しましたが、写欲がなくなっていた時期があって、もうやれることはやったし飛行機も撮り尽くして花火も撮り尽くしたと思っていたんですけど、Z 8を手に入れて再び動きはじめたんです。そのきっかけとなったのがこの1枚。爆焼けしている空の中に完璧に飛行機AFが機能して、薄暗い中でもバチバチにピントが合って撮れた瞬間、そこから自分の写欲が動き出しました」
塚崎「続いて半田さんお願いします」
Z 9 + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
半田「昨年もZ 9だからこそ撮れた1枚ということでご紹介させていただいたんですが、エゾオコジョというイタチ科の小さな動物ですばしっこくて撮るのが難しいんですね。でも撮れて嬉しかったです」
塚崎「オートキャプチャーなどがあれば撮りやすいのかもしれないですね」
半田「Zシリーズは、どんどんファームアップによって進化していき、使ってみたい機能が増えてきています。オートキャプチャーは動いている被写体を検知して撮る機能で、わたしはまだ使っていないのですが、今後導入していきたいと思っています。これからも楽しみです」
塚崎「おふたりの写真家としての今後の展望をお伺いしたいです」
別所「僕がいまやってることそのものですが、写真でできること、動画でできることの領域を拡張していきたいなという思いがあります。それは若い人たちが次にチャレンジする領域を増やすということ。僕は大学の教員もやっていますから。明日、ニコンのトークショーに出るカノンさんは、僕の関西大学のかつての教え子なんですよ。そのような子が後ろから来たときに活躍できる場所が増えるように、表現領域を広げていくというのが僕の展望です」
半田「私はいまのままコツコツと動物と向き合っていきたいですね。また、わたしはダブルワークをしていて、いまだに続けていてすごいと言ってもらえることもありますが、本業をやりつつ、カメラがある生活を楽しみ、活動をしていくということもできるということを、自分の活動を通じて伝えていきたいと思っています。コロナも少し落ち着いたので、イベントを組んだりして、SNSで応援してくださっている方と直接会ってお礼を伝えていくことも考えています。あと海外にも行きたいですね」
塚崎「写真集もまた楽しみにしています」
半田「一冊目の『ピリカ』の第5刷がつい先日決まったところなんですが、二冊目もがんばりたいなと思っています。これもSNSで応援してくださっている方がシェアなどをしてくださったおかげです」
塚崎「別所さんが愛用されているZ 8、半田さんが愛用されているZ 9は、いずれもニコンのミラーレスカメラZシリーズのフラッグシップ機となります。 Z シリーズはおふたりが愛用するモデル以外にも、高画素のフルサイズや持ち運びがしやすいAPS-Cのセンサーサイズのものもございます。ぜひホームページなどで情報をチェックしてみてください。以上をもちまして、トークショーを終了させていただきます。どうもありがとうございました」
登壇者プロフィール
Speaker Profile
別所隆弘
フォトグラファー、文学研究者、ライター。関西大学社会学部メディア専攻講師。写真と文学という2つの領域を横断しつつ、「その間」の表現を探究している。滋賀、京都を中心とした”Around The Lake”というテーマでの撮影がライフワーク。Nikon Z 8の公式プロモーションに出演。
半田菜摘
1986年北海道旭川市生まれ。友人の素晴らしい写真を見たのをキッカケにカメラを購入。2013年より写真を始める。看護師として病棟勤務する傍ら、夜勤明けや休日に、公園や森、山に入り北海道に暮らす野生動物を撮影。作品をSNSや写真展で発表するほか、フジテレビ系列のドキュメンタリー番組【セブンルール】に出演。また、雑誌、企業広告、カレンダーなど幅広く作品を提供。2021年写真集【Pirka】出版。動物たちの美しい毛並みや瞳、ありのままの仕草や表情、生命の営みが伝わる作品を目指して撮影に取り組んでいる。