昨年5月、新宿にリニューアルオープンした「オリンパスプラザ東京」。その1周年記念イベントにて、「『OLYMPUS PEN-F×東京カメラ部』トークショー」を開催。また「オリンパスプラザ東京 クリエイティブウォール」にて「『OLYMPUS PEN-F×東京カメラ部』 10人展」も同時開催されました。
はじめに、司会者よりトークイベントの概要の説明、登壇する千田智康さん、鈴木貴志さん、宇賀地尚子さんの紹介がありました。そして、各フォトグラファーによる作品解説へと進みます。
おひとり目は「東京カメラ部10選 2012」の千田智康さんです。まず「『OLYMPUS PEN-F×東京カメラ部』10人展」に出展している2枚の作品についての解説からスタートです。スライドで作品を上映しながらの解説に入ります。
千田「どちらも手持ちで撮影しています。左側は最近人気になっている銀座のビルの屋上から撮りました。人と車の軌跡を残したかったので、手持ちでシャッタースピード2秒という長時間露光をしましたが、PEN-Fには強力な手ぶれ補正が搭載されているので、ブレることなく撮ることができました。右側はコインランドリーです。我が家の洗濯機が壊れてコインランドリー通いが3日続いたんですが、こういう写真も撮れるだろうと思い喜んでコインランドリーに行きました(笑)。使用したレンズは『M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0』。生活感が出ずアーティスティックな雰囲気になるように模索しました。こちらも1/13秒と遅めのシャッタースピード。手ぶれ補正があることで、夜景を狙うとき以外は三脚を持ち歩かなくて済むようになり、とてもありがたいですね」
司会者「続いての作品は『ライブコンポジット』を使用しての撮影ですか?」
千田「どちらも使っています。左側の写真は、15秒の露光を10分近く重ねています。明るい部分を合成していくので、写真全体が明るくなるのではなく、光の部分のみがとても美しく描写されました。右側の写真は、岩手県の実家に帰省したときに撮影しました。一面、菜の花畑だったのですが、菜の花で埋め尽くした写真にするのではなく、ショベルカーを意図的に大きく写しました。露光時間は 25 秒、カメラ内で比較明合成してくれるライブコンポジットを使っています。夜景撮影時にはほとんど使っている重宝する機能ですね」
千田「左側は大好きな螺旋階段です。奥の光の部分を中心に持ってくるだけではありきたりだと思い、シャッターが開いている間にズームをする『露光間ズーム』を使い、動きを作りました。右側の写真は大好物満載です。格子状の模様に特徴のある手すりが対角線上に伸びていて、そこに新聞紙が挟まっていました。これは撮らないと、と思いましたね。格子に歪みが出てはいけないので、壁に正対することを心掛けました。レンズは『M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0』でしたが、歪曲にしにくいレンズで、ほぼ編集で補正をかけることなく仕上げられました」
司会者「最後の作品は、お子さまを撮られた写真です。すごく自然な笑顔を捉えていて素敵ですね」
千田「家族写真は、ただ記録するだけになってしまうとつまらないので、ひと工夫をして、コンセプチュアルな家族写真にすることを心がけています」
司会者「ちょっとした着眼点で作品に変えられるということを、千田さんの作品を見て感じました。最後にPEN-Fの使用感をお願いします」
千田「起動も速くて小さいですよね。画素数が増えたのはうれしい点です。パッと撮った瞬間の写真の場合、余計なものまで写っていることが多いんです。そういったものをトリミングできる画素数になっていると思います。ノイズも少ないですね」
おふたり目は「東京カメラ部10選 2013」の鈴木貴志さんです。
司会者「てんとう虫の写真ですが、飛ぶ瞬間を捉えるのは大変だったと思います」
鈴木「炎天下の中、3時間くらい粘って、てんとう虫が飛ぶのを待ち続けました。手持ちで撮影しているのですが、手ぶれ補正が効きました。シャッタースピードは1/2000と高速ですが、手ぶれ補正をオンにしていると、液晶モニターがゆっくりと動いてくれるので、てんとう虫を狙いやすくなるんです。使用したレンズはマクロレンズではなく、最短撮影距離が短い『M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO』。このような生物を撮るときには連続撮影枚数が重要ですが、1秒間に10枚連写、連続撮影枚数はRAWで39枚ということで、ストレスなく撮影できました」
司会者「続いてはネモフィラの写真です。たくさんのネモフィラの写真を見てきましたが、背景が暗いとこんなに印象が変わるのですね」
鈴木「花の撮影は背景選びがとても重要だと思います。ネモフィラのような小さい花はローアングルになりますが、PEN-Fのようなバリアングル液晶はとても重宝します。この写真は、同じ写真を反転して繋げています。その方が、広がりが出るかと思いまして。ちょっとした遊び心です」
司会者「左の写真は展示されていますね」
鈴木「これも『M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO』で、『M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter』を使い、チューリップの側面を撮影したものです。マクロレンズ並みの撮影が可能ですし、右側の写真のように、前ボケと後ボケを同時に表現するような撮影もできます。ボケ味も美しく、この組み合わせで幅広い撮影ができるので楽しかったです」
鈴木「高速道路に架かる橋の上に三脚を立てて撮りました。『ライブコンポジット』を使っており、液晶モニターで光の線がどれだけ増えたかを確認しながら撮影できるのは便利です。あまり露光しすぎると光が太い束になってうるさい感じになってしまいます。それを見計らって露光を止めています」
司会者「『ライブコンポジット』はおもしろいですね。普段目に見えないものを見ながら撮影できるという画期的な機能だと思います。それでは最後に、PEN-Fを使用しての感想をお願いします」
鈴木「2ヶ月ほど使いましたが本当におもしろいカメラでした。見た目は銀塩カメラを彷彿とさせるようなフォルムなのに、中身は『ライブコンポジット』はもちろん、『カラープロファイルコントロール』で色味を、画面を見ながら選べるなど超ハイスペック。電源入れて、画面が出て、ファインダーを覗き込んだときの切り替わりの速さも文句なしですし、連写や連続撮影枚数も素晴らしく、野鳥の撮影にもってこいだと感じました」
三人目は「東京カメラ部10選 2014」の宇賀地尚子さんです。このトークショーのために、ストーリー性のある新作を撮ってきてくださいました。
司会者「今回の作品は、すべて対になっています。どのようなテーマなのでしょうか」
宇賀地「テーマはパラレルワールド。平行世界です。別々の世界にいる男女が、それぞれの世界が少しだけ重なった瞬間に出会い、別れるというテーマで撮影しました。撮影途中にパラレルワールドにしようと決めたので、各モデルさんは別の日に撮影をしていて、ふたりは一度も会ったことがありません。場面ごとにイラストを描き、事前に撮影イメージは決めて臨みましたね。まず1枚目は、別々の世界にいるけれど、なんとなくお互いの存在を感じて、隣に誰かいるのかなと感じているようなイメージです」
宇賀地「2枚目もふたりが出会っていく過程です。ケーキは特に意味がないのですが、ビジュアル的にイチゴがのったケーキを持ってもらいたいと思っていて、撮影に使いました。バラは次の写真にも写ってきますが、このバラが出会ったときに重要な意味を持ってくるんです」
宇賀地「このカットではお互いがもう見えているという設定です。切ないイメージが出るように現像しました。モデルさんのポーズはイメージ通りでしたね」
宇賀地「そして別々の世界に住むふたりが出会って、別々の世界の花を渡すんです。この作品の一番の盛り上がるところだとわたしは思っています」
宇賀地「最後の1枚。女性はバラを受け取って嬉しい、というような表情をしています。しかし、なぜかバラは男性の方にも残っています。それはなぜでしょう。そんな余韻を残す結末にしてみました」
司会者「このようなストーリーのある作品は何を参考にして作ったのでしょう」
宇賀地「ストーリー性のある作品は今回が初めてでしたが、アニメが好きなので、普段撮る写真もさまざまなアニメからインスピレーションをいただいてます。パラレルワールドについては、ある小説にそういう世界観が登場するものがあって、それが頭の隅にあったので表現してみたいと思いました」
司会者「オリンパスを愛用していらっしゃるそうですが、オリンパスのカメラの好きなところを教えてください」
宇賀地「最初に選んだ理由はデザインのかわいらしさ。ごつくないし、ファッションの一部としてかわいいなと思って。わたしはファインダーを覗かないのですが、液晶タッチパネルがとても使いやすいですね。今回もタッチパネルは多用しています。シャッターの反応がとてもよく、撮りたいと思った瞬間を切り取ってくれるカメラだと感じました。ホワイトバランスも調整しやすいですし、『カラーコントロール』を画面を見ながら変えられるのはとても便利です」
3人の10選の作品紹介が終了。最後に、「写真を本格的に撮りはじめたことで変わったこと、そして写真の楽しさは」という質問がありました。
千田「きっかけはスポーツ写真だったんですが、東京カメラ部10選に選ばれてからは生活がガラリと変わり、興味を持つものにも変化が現れました。自分の感性を表現できるのは写真の素晴らしいところ。今までは見えていなかったものが、カメラを持つことで見えてくるのがおもしろいです」
鈴木「カメラをはじめてから季節を感じるようになりました。野鳥や花が好きなので、季節ごとに被写体が変わります。冬鳥が飛んできたなとか、春の花が咲いたなとか、四季の移ろいをとても楽しむことができるようになりましたね。そして、自分が好きなものを自分の手で残せる写真は、楽しいに決まっているじゃないですか!」
宇賀地「常に構図を考えるようになりました。出かけると、すぐにロケハンがはじまってしまって、ここでモデルさんを使って撮りたいなとか、そんなことをいつも考えています。自分の中に沸き上がってくる表現したいものが、カメラという道具によって表にはき出されるのは楽しいです」