東京カメラ部2015写真展シグマトークショーイベント「dp Quattro 4兄弟 どれを持つのが幸せになれるか?」塙真一

2015年5月27日(水)~6月14日(日)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部 2015写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは多くの人気フォトグラファーをお招きして、写真を見ながらのトークショーが行われました。

5月29日(金)に行われたシグマのトークショーでは、塙真一さんにご出演いただき、塙さんがdp Quattroシリーズ で撮影したハワイの写真を見せながらdp Quattroシリーズの4モデルについてお話ししていただきました。

東京カメラ部2015写真展シグマトークショーイベント「dp Quattro 4兄弟 どれを持つのが幸せになれるか?」塙真一

「dp Quattroシリーズはご存じの方も多いと思いますが、偏屈なカメラです。一筋縄にはいかないカメラですが、ほかのカメラにはない楽しさがあります。ただし、くれぐれもすべてのカメラを売ってdp Quattroだけにしようという考えは、やめてください(笑)。あくまでも他のカメラがあって、それに加えると楽しいのがこのカメラです。では、どうして数あるカメラの中からdp Quattroシリーズを選択するのか? なぜdp Quattroを使う人たちがdp Quattro、dp Quattroというのか。その理由は…」

東京カメラ部2015写真展シグマトークショーイベント「dp Quattro 4兄弟 どれを持つのが幸せになれるか?」塙真一

「dp Quattroシリーズでなければ撮れない写真があるからです」

東京カメラ部2015写真展シグマトークショーイベント「dp Quattro 4兄弟 どれを持つのが幸せになれるか?」塙真一

最初に見せていただいたのは、海辺のモノクロ写真です。
「dp Quattroシリーズの写真には、写真としての心地よさ、独特の空気感があります。昔フィルムを使っていた人ならわかると思いますが、デジタル画像ではない写真なのです。この秘密は、シグマ独自のフォビオンセンサーにあります」
フォビオンセンサーとは、1ピクセルがRGBすべての色情報を捉えることができる構造をしたCMOSセンサーです。一般的なデジタルカメラは、周辺のピクセルの情報を合わせて1ピクセルを作っています。
「フィルムの粒子一つが一つの色を持つのと同じで、シグマのカメラは1ピクセルごとに絵ができあがる。だから独特の写真画質が得られるのです」

東京カメラ部2015写真展シグマトークショーイベント「dp Quattro 4兄弟 どれを持つのが幸せになれるか?」塙真一

dp Quattroシリーズのもう一つの特徴として、塙さんは解像感を挙げます。
「dp3 Quattroで撮った写真です。dp3 Quattroは75mm相当の中望遠です。肉眼で眺めた時には野球場なのかなというのがなんとかわかるくらいだったのですが、この写真を拡大してみると…」

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奥の方にボールをキャッチしている人がいるのがわかります。
「こんなことができるのはdp Quattroだけです。200mmで撮って拡大すればわかるかもしれませんが、75mmで普通に撮ってこれだけ見えるのはdp Quattroだけです。この解像感は他のカメラではなかなか味わえません。独特な色合いと雰囲気、肉眼では見えないところまでがきっちりと記録される解像感。こういうカメラなんです」

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夕方、ショッピングモールで見つけたという消火栓の写真です。塙さんは消火栓が好きだそうです。
「独特の空気感があるというか、僕が心地良いと感じた光をそのまま再現してくれます。そこがdp Quattroの魅力です」

dp Quattro 4兄弟の画角の違い

塙さんは、dp0 Quattro、1、2、3の4モデルを使って同じ場所から撮影した4枚の風景写真を見せて画角の違いを説明してくれました。

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「これはdp0 Quattroで撮った町風景です。21mm相当、超広角ですね」

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「こちらはdp1 Quattro。28mm相当です。dp0 Quattroが出るまでは広角担当だったのですが、dp0 Quattroから比べるとずっと普通っぽく見えます。これが超広角と広角の違いです」

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「そしてdp2 Quattro、45mm相当です。50mmじゃなくて45mmというところが微妙なのですが、45mmと50mmの画角はかなり違います」

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「最後にdp3 Quattro、75mm相当です。これら中でどのカメラを使えば幸せかというと、4つの間でこれだけ写りが変わるのだから決められないですよね。じゃあ、どうしたらいいかと考えてみたら…」

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「オーソドックスに考えたら4台全部持つのが幸せなんです(笑)。だけど、これでは話が終わってしまうし、それに4台持ち歩くって結構な荷物なんです」
2台、3台までならストラップをつけたりバッグにしまったりすれば持ち歩ける。けれども、4台の持ち歩きとなると難しいと塙さん。
「僕わかったんです。3台と4台の違いが何かというと、ジャグリング。あれと同じ。3個はいけても、4個はプロじゃないと無理。僕には無理。お金が余っている人と税金対策の人はいいですよ(笑)。そういう人は4台×2セットくらい買えばいいと思いますけど、普通の人は金額的にも厳しいし荷物になるので、おすすめできません」

スナップカメラとしての汎用性を求めるなら dp1 Quattro

では、最初の1台を選ぶならどれがいいでしょうか。塙さんは、dp1 Quattroが入門者向けとして一番いいと勧めます。
「dp1 Quattroは28mm相当ですから幅広くいろんなものが撮れます」

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スターバックスでオーダーしたコーヒーの写真です。
「せっかくのハワイなので、コナコーヒーにしてみました。『KONA』と書いてあります。dp1 Quattroは28mm相当の広い画角なので、手元のものを撮っても背景にボケたヤシの木などを入れたりすることができます」

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超広角ほど誇張することなく、しかし広めに写せるのがdp1 Quattroだそうです。
「空の広さや道の広さもほどよく表現できます。スナップで一番汎用性の高いのがdp1 Quattroかなと思いました」

ダイナミックな風景、スナップを撮るなら dp0 Quattro

続いて、21mm相当のdp0 Quattroの写真です。

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ボディボードを持った男性とその向こうに広がる海を撮った写真です。
「このお兄さん、距離的にはかなり近いところで撮ったのですが、超広角なのでだいぶ離れたところにいるように見えます。『ぐいぐい迫ってもまだ広い』というのが21mm相当の画角です」

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「この看板、おそらく1mほどしか離れていなかったと思います。こんなに近いものを撮っても、背景に波が写り、青空も広く入っています」

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屋上のプールを見下ろして撮った写真です。
「21mm相当なのにこのカメラのすごいところは、直線的なものを撮ってもひずみが出ないこと。だから建物を撮ってもきっちり写る。それでいてプールを拡大してみると、水の底のタイルがこんなにも細かく写っているのです。『dp0 Quattro、ちょっとたまんないよ』という感じです」

被写体との距離感を楽しむなら dp2 Quattro

塙さんは、45mm相当のdp2 Quattroがシリーズの中で一番使いやすいと言います。
「4兄弟の中で一番使いやすい、馴染みやすいのがdp2 Quattroです。40mmと45mmと50mmは、じつはずいぶん違います。45mmと50mmの違いは、あと半歩引けるか引けないかという違い。45mmもおもしろいなと思います。肉眼でものを注視したときの画角がだいたいdp2 Quattroくらいですね」

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ハワイの小さな町、ノースショアでのスナップです。
「こうした看板だとか店先だとか、『ここ素敵だな』と思って見たところがそのまま写るのが、dp2 Quattroです。こういうのが好き、ああいうのが好きという『好き』をダイレクトに写せます」

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「好き」をダイレクトに写せるdp2 Quattroで、塙さんは大好きな消火栓を撮影しました。 「消火栓って国によっても違うし治安によっても違いがあるんです。治安のいいところは消火栓がきれいですが、治安の悪いところは消火栓が汚いです。コーヒーをこぼしたりガムをくっつけたり、落書きがあったり。この写真は消火栓の脇に黄色い棒が2本立っていますが、これは車が突っ込まないようにしているのです。日本ではあまり見ないですね。日本の方が突っ込むことは少ないということなんじゃないかと思います」消火栓の話は尽きないようです。

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横断歩道の写真です。どうも日本のものとはどこか違うと感じて写したそうです。
「何気ない景色なのですが、日本とは違う。ペイントの質感でしょうか。拡大してみると道路のヒビまでしっかり写っています。別にヒビを写そうとしたわけではないのだけど、日本とは違うと感じたものをそのまま写してくれています」

フレーミングにこだわって被写体を切り撮るなら dp3 Quattro

dp3 Quattroは75mm相当の中望遠です。「ここが素敵」と思ったものを自然に見たままに切り取るのがdp2 Quattroでしたが、その中からさらに「どこを切り取るか」を考えて切り取るのがdp3 Quattroだそうです。

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バス停でバスを待つおじさんたちを撮った写真です。
「看板の『AHEAD』の上の部分も入れて撮りたいと思ったのですが、そうすると引きになってしまう。ならば、むしろ全体を入れるよりもキャップをかぶった手前の人をちょっとボカして入れようと思いました。切り取る時に、ここを撮るためにもう少し距離を詰めなきゃなどと計算をするのが、dp3 Quattroの画角です」

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ガラスの飾りの写真です。
「真ん中の青いガラスがきれいだなと思ったのですが、その少し下のあたりにある銃弾の跡のようなもの、ここにアメリカらしさを感じたので一緒に入れて撮りました。こういう計算をして撮るのがこのカメラです」

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dp Quattroシリーズのアクセサリー、専用ビューファインダーの紹介をしていただきました。カメラの液晶モニターに装着して外光をカットし、視認性を高めてくれるほか、モニターを2.5倍に拡大して見ることができます。
「これをつけるとどの一眼レフカメラよりも広いファインダー像になります。逆光でも撮りやすくて便利なのですが、全部のカメラにつけるとものすごくかさばるので使い回しするといいと思います」

4台の中から2台の組み合わせで持ち歩く

dp Quattro 4兄弟のうち結局どれを持つのがいいかというと、塙さんのおすすめは「4台の中から2台の組み合わせで持ち歩く」です。一つは、超広角のdp0 Quattroとナチュラルな写りのdp2 Quattroという組み合わせ。
「超広角と標準の2台を持ち歩くと面白いかと思います。dp0 Quattroの超広角はぐっと力強い写真に、そしてdp2 Quattroは肩の力を抜いた優しい写真になるんですね」

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もう一つおすすめの組み合わせは、dp1 Quattroとdp3 Quattroだそうです。dp1 Quattroで撮ったガソリンスタンドの写真とdp3 Quattroで撮った猫の写真です。
「ガソリンスタンドの写真は夕方の光の感じが素敵だなと思って撮りました。猫の写真はdp3 Quattroを使っています。僕は猫を撮るのが非常に得意で、猫にカメラを向けると…だいたい目の前からいなくなる(笑)。だから猫を撮るのに望遠がいいんです。それに拡大してみると毛並みがとてもよく写っている。ほら、だから猫撮るのが得意って言ったでしょ(笑)」
ユーモアを交えた話に、会場が笑いに包まれました。

圧倒的な解像力と美しいトーンのQuattroモノクローム

塙さんは、どのdp Quattroを選んでも絶対に幸せになれる方法があると言います。それは「モノクローム」で撮ることです。

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「この看板、ちょっと日が当たってるのね。それにこの雲のトーン。こういうモノクロはちょっと素敵だと思います」

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「モノクロって単に白と黒ではないのですよね。『明るい』とか『白い』とかではなく、光を感じるんです。こういうトーンを出せるモノクロって、じつはとても少ない。モノクロフィルムで撮ったときのようなモノクロなんです。解像感はものすごくあるけれども、全体としてやわらかいボケ感がある。このモノクロはどのdp Quattroでも味わえますので、dp Quattroシリーズを使われる方がいたら、ぜひモノクロにも挑戦してみてください」

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「1台でも幸せですよ。そしてモノクロで撮ることでも幸せになれる。 でも、やっぱり…」

東京カメラ部2015写真展シグマトークショーイベント「dp Quattro 4兄弟 どれを持つのが幸せになれるか?」塙真一

「4台全部持つのが一番いいよねー、というのが最終的な結論です(笑)」

dp Quattroシリーズでしか味わえない独特の空気感、ぜひ試してみたいと思わせるお話でした。来場者の皆さんがしきりにうなずきながらお話に耳を傾けている様子も印象的でした。

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