東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

2015年5月27日(水)~6月14日(日)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部 2015写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは多くの人気フォトグラファーをお招きして、写真を見ながらのトークショーが行われました。

5月29日(金)に行われたオリンパスのトークショーでは、天体写真家の飯島裕さんにご出演いただき、飯島さんがこれまでに撮られた星景写真を含む天体写真についてお話ししていただきました。

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

飯島さんは、少年時代にアポロ11号月面着陸の際に初めて天体望遠鏡を覗いたのをきっかけに、天文の面白さにはまったそうです。まもなく天体写真を撮り始め、以来40年以上に渡り星空を撮り続けている天体写真家です。

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

「最近、八ヶ岳あたりなど星の見える場所へ行くとたいてい誰かしらが星の写真を撮っているのを見かけます。ちょっと前までは考えられなかった光景ですが、ずいぶんと星人口が増えていい時代になったなあと思っています。そこで、星を撮る楽しさだけでなく、星を見る楽しさも感じていただけたらと思います。星を撮るのには何十分、何時間と時間がかかります。待っている間が退屈で仕方がないという声をよく聞くのですが、撮影の間、ぜひ生の目で星を見て楽しんでいただきたいと思います」

飯島さんは、星の写真を撮る理由は「目で見たものを記録すること」と「目では見えないものを写すこと」の二つがあると言います。

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

「4月4日に皆既月食がありました。皆既月食は地球の影の中に月が入る現象で、満月は光を失って赤くぼんやりした姿になります。半透明の月が星空をバックに浮かんだように見えるのですが、残念ながら写真では目で見た時と同じようには表現できません。けれども、その月食の様子を一定間隔で撮って並べていくと、地球の影が大きな黒い丸となって確認できます。月がスクリーンになって見事に地球の影が浮かび上がるのです。これが、写真で見ることができる宇宙の姿です。目で見てもおもしろいのだけど、写真にするとさらにおもしろいのです」

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

「これは国際宇宙ステーションが月の前を通過して行く瞬間を撮影してみたものです。宇宙にはこうしたおもしろい現象がたくさんあります」

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

「山口県のホルンフェルス断崖で、地層と月の暈を一緒に撮ったものです。目で見るとなかなかわからないのですが、写真に撮ると月の暈が7色の虹色に分かれていることがわかります」

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月の影の部分が地球に照らされてうっすら見える「地球照」という現象を写した写真です。 「明け方に月が昇ってくるところを望遠レンズで撮影しています。一番輝いているところが月の明るい部分で、その上に丸くぼんやり見えるところは月の欠けた部分です。これが雲越しに見えるととても感動的です。写真に撮るとはっきり見えますが、肉眼ではこんなにはっきりとは見えません。肉眼で見た上で写真に撮って見ると、感動が3倍4倍にもなります」

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

複数の画像から1枚の画像に合成する方法の一つ、「比較明合成」で富士山の頂上から昇っていく星を捉えた写真です。
「月の光に照らされて山の表面が光っています。比較明合成で撮影すると、夜空にはこれだけの星があり、こんなに賑やかな光景があるのだということがわかります。目では見えませんが、写真に撮ることで見えてきます」
飯島さんは、撮影の傍ら双眼鏡で山頂を眺め、雪煙が風で上がるところや山頂から星が姿を現す瞬間などの感動的な光景に出会ったそうです。
「双眼鏡を覗いていると空気の厚さもよくわかります。陽炎越しに星を見るような感じで色もゆらゆらと変わるのです」
写真には写らない美しい光景を目で眺めながら、カメラで「写真ならでは」の光景を写す。そんな撮影スタイルを飯島さんは勧めます。

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「これは日光の明智平から見た景色です。いろは坂を降りてくる車のライトが比較明合成によって光跡を描いています。それにしても、よくこんな坂を作りましたね(笑)」

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長野県野辺山にある野辺山宇宙電波観測所で、パラボラアンテナと一緒に星空を写したものです。「宇宙を観測している」というイメージを表現したそうです。
「比較明合成は明るく変化した部分のみを合成する方法なので、撮影場所に強い光があってもそれに負けることなく星をたくさん写してくれます」

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

月明かりに照らされた木立の中で星空を見上げるように写した写真です。月明かりだけでも木々の緑がしっかりと写っています。
「最近、星と地上の風景を一緒に写し込む星景写真を撮るアマチュアの方が増えていますね。とてもいいことだと思っています」

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

秋田県にある縄文時代の遺跡・大湯環状列石での撮影です。石の配置が天体の運動を意識した形になっているそうで、飯島さんは縄文時代の人たちの気持ちを想像しながら撮影したと言います。
「昔はこのようにぼやっと明るい空ではなく、星の光しかない夜空だったと思います」

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

「これは夕方に近所で撮った水星と金星が富士山の方へ沈むところです。一番明るい星が金星、二番目に明るいのが水星です。飛行機の光跡も写っています。関東平野にはたくさんの飛行機が飛んでいるのですね」

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星の撮影の際に必要なもの、撮影方法についても教えていただきました。
「これは、星座早見盤とスマートフォンです。スマホでは、今見えている星やこれから見える星を調べることができます。今はいろいろ便利なものがありますね」

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撮影時には、星がぶれないようにリモコンを使ってバルブでシャッターを切ります。三脚は必須です。

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暗がりの中で強い光を見ると目が刺激されて星が見にくくなってしまうので、手元を照らす時には赤い光を使います。また、夜露でレンズが曇るのを防ぐために、レンズを暖めるそうです。
「この写真ではバッテリー式のカイロを使っていますが、専用のヒーターなども売られています」

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星は日周運動で東から西へと動くため、普通に撮影すると星は光跡となって写ります。星を点に写すには、カメラに赤道儀を取り付け、星の動きを追尾する必要があります。
「カメラの下にあるのがポータブル赤道儀です。赤道儀を地球の自転軸と平行にセットして、地球の自転をキャンセルするような形で星を追尾します」

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赤道儀で追尾撮影をすると地上は動いて写りますが、星は点に写ります。
「地球の自転をそのまま写真にした感じですね。真ん中にあるのが北極星です。赤道儀を使わない場合は北極星を中心に星が回って写ります」

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

望遠レンズで追尾撮影すれば星雲もきれいに写るそうです。
「これは有名なアンドロメダ銀河というわれわれの銀河の隣にある銀河です。肉眼でも見えます」

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

「同じアンドロメダ銀河を双眼鏡で見るとこのように見えます。生の光を見るということは写真を撮る上でも大事なことだと思います。生の光を見てきれいだなと思ったものを、写真に撮るということです」

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

ふたご座流星群を魚眼レンズで撮影した写真です。
「合成してみると、空のある1点から放射状に流れているように見えます。写真でないとわからない光景ですね」

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

撮影場所の様子が写り込んだ写真です。一緒に写っている車は飯島さんの愛車です。すでに50万キロ走っているという告白に会場が沸きました。
「月まで38万4千キロほどありますから、月まで行って引き返すところです(笑)。地球は1周4万キロなので12周くらい走っていますね。こんなふうに赤い光のヘッドライトを使って写真を撮っています」

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

最後に、オリンパスのカメラに搭載された天体撮影に便利な機能について説明していただきました。まず、「ライブバルブ」という機能。バルブ撮影時にライブビュー画面に画像を表示する機能です。設定したインターバルごとにセンサーに取り込まれた画像を更新し、モニターに表示されます。
「これまでのバルブ撮影は、再生するまでどのように撮れているかわからなかったのですが、ライブバルブは写りの具合をモニターで見ながらシャッターを開けっ放しにして、ちょうどいいところでシャッターを閉じればいいのでとてもありがたいです。朝焼けや夕焼けのように明るさがどんどん変わってくるような時間帯でも、露出を失敗する心配がなくとても便利です」
タイム撮影時にも、モニターで仕上がりを確認して露出時間を決めることができる「ライブタイム」という同様の機能があります。

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続いて、「ライブコンポジット」機能。明るく動く部分のみを合成し、暗くて動かないものはそのままという比較明合成をカメラ内で行う機能です。
「光跡が伸びていく様子をモニターで確認できるので、とてもありがたいですね。ヒストグラムを見ることで画像の正確な明るさを知ることもできます」
飯島さんは、星の撮影ではヒストグラムを確認することが大事だと言います。
「夜中に画面を見た時には明るく見えていたのに、昼間に撮影画像を見てみると真っ暗だったということがあります。星の写真を撮りたい人は、正しい明るさを判断するために、ぜひヒストグラムを勉強してください」

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OM-D E-M5 MarkIIでは、暗い場面も液晶で明るく見せる機能「LVブースト」がさらに明るい「LVブースト2」になりました。
「これまでの星の撮影は、モニターが真っ暗で構図やピントの確認が難しかったのですが、OM-D E-M5 MarkIIならこれだけはっきりと星の存在を確認することができます」

東京カメラ部2015写真展オリンパストークショーイベント「星空を見上げる楽しさ、写真にする面白さ」飯島裕

便利なカメラが出てくることで、ますます星を楽しむ人が増えてくるだろうと飯島さんは言います。
「うれしいことに、オリンパスさんは星撮りの機能が満載のカメラをどんどん出してくださっています。これからも良いカメラを出してくださるようによろしくお願いします(笑)。ぜひ皆さんも星の撮影を楽しんでみてください。そして、目で見ることも忘れずに楽しんでくださるとうれしく思います」

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