2016年2月27日(土)、CP+ 2016のバンガードブースで、写真家の小澤忠恭先生をお招きし、バンガードのトラベル三脚VEOを愛用している東京カメラ部10選、八木千賀子さんと原朋士さんのトークショーが行われました。

小澤さん「今回は僕の話というより、トップアマチュアの方がどのようにして三脚を使って作品を撮っているかを知ってほしいと思っています。おふたりとも東京カメラ部の10選です。ヘタなプロカメラマンよりも撮影をしている方々です。僕らプロでも知らないことは多いので、とても楽しみにしてきました。まずは八木さんからお願いします」

八木千賀子さん

小澤さん「こういう写真を撮るときは、下調べをしてから出かけるんですか?」

八木さん「現地に着いてから見つけることが多いですね」

小澤さん「野生の勘というか長年の勘ですね」

八木さん「晩秋に差し掛かった紅葉の季節で、落ち葉が湖に浮かんでいました。湖であっても流れがあったので、少し流して撮ろうと思ったんです。だからNDフィルターも使っています」

小澤さん「もっとテクニックを使う人もいるだろうけど、この程度のところがいいよね。紙細工が流れているような、子供が作る絵のような。リアルな感じがいい」

八木さん「ありがとうございます」

小澤さん「NDフィルターを使ったということは三脚使用だと思うけれど、こういう水辺の写真とかはローアングルで撮りたくなるときがありますよね。VEOは脚が逆側にたためるシステム。それを利用すればローアングルにもでき、水面すれすれというような写真が撮れます」

小澤さん「次は夜桜。こういうのも撮るんだね。いろんな写真撮る人だなあと感じます。こういう状況に微妙な重量感を持たせるところがうまい。少女のようになっている写真もあれば、この夜桜の写真は大人の女性になっている。そういう幅の広さがおもしろいよね」

小澤さん「もうひとつの八木さんの特徴は、この淡い色でしょう。淡いのに男らしいというのがいいと思います。深い雪の中ですよね?」

八木さん「新緑の季節に差し掛かっていましたが、まだ雪は深く残っていましたね」

小澤さん「みなが撮りたいと思うような写真だけれども、撮りたい時間帯にそこにいるというのは本当に大事なこと。なんで手前は明るいんですか?」

八木さん「ストロボを焚いています」

小澤さん「これも三脚を立てたんですか」

八木さん「風景がメインなので、三脚を使用することは多いですね」

小澤さん「三脚のエピソードはありますか? なにを意識して選びます?」

八木さん「アイレベルの高さにしたときの使用感を意識して選んでいます。基本的に安定感が大切だと考えているので、重い方を選びますね。触れてしまうとぶれてしまうので」

小澤さん「VEOは、いわゆるトラベル三脚です。トラベル三脚というのは、飛行機内持ち込みオーケーの大きさのものを指しますが、やはり軽いので女性にも扱いやすいですよね」

八木さん「そうですね。車に2つとも積んでいって、撮影場所が車からすぐの場合は大きい方を使います。険しい道を歩いたり、スノーブーツを履いて歩かないといけない場合はVEOですね」

小澤さん「安定させるコツは?」

八木さん「脚はあまり伸ばさないようにしています。それでもぶれるときは、三脚をおさえながら撮影します。ぎゅっと抱きつくように」

小澤さん「足場が草だったり雪だったりすると困りますよね。そういうときは三脚を閉じてから雪に入れて、雪の中で広げると安定します。三脚が軽い場合は現場で重くすればいいわけですが、石をコンビニの袋に入れてかけると安定します。持ち運びは軽く、現場で石を拾って重くする。クマが出たらその石で戦うこともできるし(笑)」

原朋士さん

小澤さん「続いて原朋士さん。原さんは特に工場夜景で知られている方です。八木さんもですが、銀塩の頃から写真はお撮りになっていますね。でも原さんはデジタルでHDRに目覚めて、初期の頃は派手な作風でしたが、だいぶ変わってきましたね。新しい風を吹かそうとしている感じがする」

原さん「たしかに、少し昔の作風に戻ってきた感はありますね。俯瞰で撮る場合はHDRで煌びやかな工場夜景でも良いのですが、最近は工場のタンクや配管などの機能美や構造美を表現できるような仕上げになっています」

小澤さん「まずこの写真ですが、三脚はお使いになっていますか?」

原さん「この工場はかなり遠い山の上からではないと撮れないので、そういうときの三脚選びは苦労します。大きく重い望遠レンズを使用する時は頑丈な三脚を使いますが、この撮影場所は駐車場がかなり遠いいんです。そういうときは持ち運びのことを考えてトラベル三脚を使います。この写真に使っているのは500mm。レンズに三脚座があります。インナーフォーカスだったらいいんですが、AF時に鏡胴が伸び縮みするようなレンズだと、その画角でまず安定させるために重りをつけます。工場は海沿いにあるので頑丈なものじゃないと風で煽られるんです。その場その場で使う三脚を選びますね。だから、昼間のロケハンは必須なんです」

小澤さん「この写真は、無理矢理に人の心を動かそうとしてない感じが出ていますね」

原さん「普通に考えたらメインは左のビルですが、それをセンターにした写真はあまりおもしろくなかったんです。この写真の場合、セオリーは考えずに橋を重要視しました。彩度も控えめにし、落ち着いた雰囲気にしています」

小澤さん「コンテストで入賞を目指したり、Facebookでいいねを取ろうとすると、見る人を驚かすようなビジュアルインパクトを残そうとするじゃないですか。この写真からはそういう意識が感じられない。原さんには人情があるんでしょう」

小澤さん「これだって、もっと空を劇的にするのは簡単でしょ。でもそれをやらない、でも印象に残りますよね」

原さん「僕はここの土地がすごく好きなんです。工場夜景だけを撮るのとは違い、人が生活している場所ですから、三脚を立てて撮影するには、昼間に行って、生活している方と話をして、それから撮るということが必要だと思いました」

小澤さん「三脚はどうやって持っていくんですか?」

原さん「三脚は2つ、手で持っていきます。頑丈なのをひとつ、トラベルをひとつ。ブラケティングでワンシチュエーションで5枚撮影するので、カメラ2台体制でやらないと処理に時間がかかってしまうんです」

最後に、小澤さんから風景写真撮影のコツが伝授されました。

小澤さん「八木さんも原さんも、アマチュアとしては相当写真がうまいけれども、プロの写真には厚みがある。下見をするだけでも写真に厚みがでるし、行ってから長く風景を見ることは、取捨選択することに繋がります。そして、膨大な写真の中からこの一枚を選ぶことが必要になるわけですが、撮影者気分のまま写真を出してくる人もいるし、選ぶときは別の視点から選べる人もいる。デザイン系出身の人が強いのは、見る人の立場になれるからだし、プロたちは本当にいい写真を選んでくる。撮る目と選ぶ目を、ぜひ意識するようにしてください」

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